社畜OL、異世界で「天使」になる ~私を拾ってくれた太陽の騎士様が、過保護で嫉妬深くて、めちゃくちゃ愛してきます~

藤森瑠璃香

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第21話 騎士様の返事と、天使の帰還

 キャメロットに残された、太陽の騎士は、その光を、失っていた。
 美月が旅立ってから、ガウェインは、抜け殻のようだった。
 朝の練兵場に、彼の、快活な声が響くことはなく、ただ、虚ろな瞳で、黙々と、剣を振るうだけ。その動きには、いつものような、太陽の力強さも、輝きも、宿ってはいなかった。
 手首に結ばれた、深緑のリボン。それが、かろうじて、彼と、彼の太陽を繋ぐ、唯一の、光だった。

「……あの、朴念仁が。すっかり、腑抜けてしもうて」
 城壁の上から、その様子を見ていたアーサー王が、呆れたように、呟く。
 隣に立つランスロットは、静かに、首を横に振った。
「いえ、王よ。彼は、耐えているのです。彼女との、約束を、信じて」

 その時だった。
 一羽の、伝令の鳥が、空から、舞い降りてきた。
 衛兵が、その足に結ばれた、小さな、羊皮紙の巻物を、ガウェインの元へと、届ける。
 彼は、ぼんやりとした瞳で、それを受け取った。だが、そこに書かれていた、見慣れない、しかし、どこか、彼女らしい、整った文字を見た瞬間、その青い瞳が、大きく、見開かれた。

 震える指で、巻物を、開く。
 そこに綴られていたのは、彼の、心を、再び、照らす、光の言葉だった。

『――私の、たった一人の、騎士様へ』

 その、呼びかけだけで、彼の胸が、熱くなる。
 読み進めるうちに、彼の、虚ろだった瞳に、みるみるうちに、力が、戻っていく。
 そして、最後の一文。

『だから、どうか、私の太陽でいてください。私が、あなたの光を目指して、帰れるように――』

 彼は、その言葉を、掠れた声で、何度も、何度も、繰り返した。
「……俺が、ミツキの、太陽……」
 彼は、その手紙を、まるで、宝物のように、強く、胸に抱きしめた。

「うおおおおおおおおっ!」
 次の瞬間、彼は、天を衝くような、雄叫びを上げた。
 そして、今までが、嘘だったかのように、その剣に、まばゆいばかりの、太陽の力が、宿り始める。
「ミツキが、俺を目指して、帰ってくるんだ! ならば、俺は、世界で一番、輝く太陽にならねば、ならん!」
 彼は、呆気にとられるランスロットを尻目に、凄まじい気迫で、訓練を、再開した。
 キャメロットの太陽は、今、再び、その輝きを、取り戻したのだ。

 数日後。
 美月とエルリックを乗せた馬車は、キャメロットへの、帰路についていた。
 災いを鎮め、民の、心からの感謝を受けた彼女の表情は、旅立つ前よりも、ずっと、自信に満ちて、輝いて見えた。

 やがて、見慣れた、城壁が見えてくる。
 だが、その光景は、いつもと、まるで、違っていた。
 城門は、大きく開かれ、その道には、兵士や、侍女、そして、城下の民衆までが、ずらりと、並んでいたのだ。
 彼らは、馬車が近づくと、一斉に、割れんばかりの、歓声を上げた。
「天使様が、お帰りだ!」
「我らの、キャメ-ロットの天使様、万歳!」

 それは、王の側近でも、異国の姫君でもない。
 国を救った、一人の英雄に対する、心からの、歓迎だった。

 そして、その、歓迎の輪の中心。
 城門の、一番前で、仁王立ちになって、彼女を待っている、一人の騎士。
 彼は、まるで、全身から、光を発しているかのように、キラキラと、輝いていた。

 馬車が、止まる。
 美月が、扉から、降りようとするよりも、速く。
 彼が、その扉を、自らの手で、開いた。

 言葉は、なかった。
 彼は、ただ、その、たくましい腕で、美月を、馬車から、軽々と抱き上げると、そのまま、空高く、掲げるように、くるくると、回った。
 民衆の、歓声が、最高潮に、達する。

 やがて、彼は、彼女を、そっと、地上に降ろすと、その両肩を、掴み、まるで、そこにいるのが、現実かどうか、確かめるように、じっと、彼女の瞳を、見つめた。
「……ただいま、帰りました。私の、騎士様」
 美月が、涙で、ぐしゃぐしゃの笑顔で、言う。
 彼は、今まで見たこともないくらい、最高の笑顔で、答えた。

「――おかえり。俺の、太陽」

 彼は、周りの目も、何もかも、気にすることなく、彼女の手を、ぎゅっと、握った。
「さあ、帰ろう。お前の部屋まで、『護衛』してやる。疲れただろう?」

 嵐は、過ぎ去った。
 彼女は、もう、魔女ではない。キャメロットの、誰からも、愛される、英雄だ。
 そして、その隣には、世界で一番、頼もしくて、愛おしい、太陽の騎士が、いる。
 彼女の、孤独な戦いは、最高の形で、終わりを告げたのだった。
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