21 / 42
第21話 騎士様の返事と、天使の帰還
キャメロットに残された、太陽の騎士は、その光を、失っていた。
美月が旅立ってから、ガウェインは、抜け殻のようだった。
朝の練兵場に、彼の、快活な声が響くことはなく、ただ、虚ろな瞳で、黙々と、剣を振るうだけ。その動きには、いつものような、太陽の力強さも、輝きも、宿ってはいなかった。
手首に結ばれた、深緑のリボン。それが、かろうじて、彼と、彼の太陽を繋ぐ、唯一の、光だった。
「……あの、朴念仁が。すっかり、腑抜けてしもうて」
城壁の上から、その様子を見ていたアーサー王が、呆れたように、呟く。
隣に立つランスロットは、静かに、首を横に振った。
「いえ、王よ。彼は、耐えているのです。彼女との、約束を、信じて」
その時だった。
一羽の、伝令の鳥が、空から、舞い降りてきた。
衛兵が、その足に結ばれた、小さな、羊皮紙の巻物を、ガウェインの元へと、届ける。
彼は、ぼんやりとした瞳で、それを受け取った。だが、そこに書かれていた、見慣れない、しかし、どこか、彼女らしい、整った文字を見た瞬間、その青い瞳が、大きく、見開かれた。
震える指で、巻物を、開く。
そこに綴られていたのは、彼の、心を、再び、照らす、光の言葉だった。
『――私の、たった一人の、騎士様へ』
その、呼びかけだけで、彼の胸が、熱くなる。
読み進めるうちに、彼の、虚ろだった瞳に、みるみるうちに、力が、戻っていく。
そして、最後の一文。
『だから、どうか、私の太陽でいてください。私が、あなたの光を目指して、帰れるように――』
彼は、その言葉を、掠れた声で、何度も、何度も、繰り返した。
「……俺が、ミツキの、太陽……」
彼は、その手紙を、まるで、宝物のように、強く、胸に抱きしめた。
「うおおおおおおおおっ!」
次の瞬間、彼は、天を衝くような、雄叫びを上げた。
そして、今までが、嘘だったかのように、その剣に、まばゆいばかりの、太陽の力が、宿り始める。
「ミツキが、俺を目指して、帰ってくるんだ! ならば、俺は、世界で一番、輝く太陽にならねば、ならん!」
彼は、呆気にとられるランスロットを尻目に、凄まじい気迫で、訓練を、再開した。
キャメロットの太陽は、今、再び、その輝きを、取り戻したのだ。
数日後。
美月とエルリックを乗せた馬車は、キャメロットへの、帰路についていた。
災いを鎮め、民の、心からの感謝を受けた彼女の表情は、旅立つ前よりも、ずっと、自信に満ちて、輝いて見えた。
やがて、見慣れた、城壁が見えてくる。
だが、その光景は、いつもと、まるで、違っていた。
城門は、大きく開かれ、その道には、兵士や、侍女、そして、城下の民衆までが、ずらりと、並んでいたのだ。
彼らは、馬車が近づくと、一斉に、割れんばかりの、歓声を上げた。
「天使様が、お帰りだ!」
「我らの、キャメ-ロットの天使様、万歳!」
それは、王の側近でも、異国の姫君でもない。
国を救った、一人の英雄に対する、心からの、歓迎だった。
そして、その、歓迎の輪の中心。
城門の、一番前で、仁王立ちになって、彼女を待っている、一人の騎士。
彼は、まるで、全身から、光を発しているかのように、キラキラと、輝いていた。
馬車が、止まる。
美月が、扉から、降りようとするよりも、速く。
彼が、その扉を、自らの手で、開いた。
言葉は、なかった。
彼は、ただ、その、たくましい腕で、美月を、馬車から、軽々と抱き上げると、そのまま、空高く、掲げるように、くるくると、回った。
民衆の、歓声が、最高潮に、達する。
やがて、彼は、彼女を、そっと、地上に降ろすと、その両肩を、掴み、まるで、そこにいるのが、現実かどうか、確かめるように、じっと、彼女の瞳を、見つめた。
「……ただいま、帰りました。私の、騎士様」
美月が、涙で、ぐしゃぐしゃの笑顔で、言う。
彼は、今まで見たこともないくらい、最高の笑顔で、答えた。
「――おかえり。俺の、太陽」
彼は、周りの目も、何もかも、気にすることなく、彼女の手を、ぎゅっと、握った。
「さあ、帰ろう。お前の部屋まで、『護衛』してやる。疲れただろう?」
嵐は、過ぎ去った。
彼女は、もう、魔女ではない。キャメロットの、誰からも、愛される、英雄だ。
そして、その隣には、世界で一番、頼もしくて、愛おしい、太陽の騎士が、いる。
彼女の、孤独な戦いは、最高の形で、終わりを告げたのだった。
美月が旅立ってから、ガウェインは、抜け殻のようだった。
朝の練兵場に、彼の、快活な声が響くことはなく、ただ、虚ろな瞳で、黙々と、剣を振るうだけ。その動きには、いつものような、太陽の力強さも、輝きも、宿ってはいなかった。
手首に結ばれた、深緑のリボン。それが、かろうじて、彼と、彼の太陽を繋ぐ、唯一の、光だった。
「……あの、朴念仁が。すっかり、腑抜けてしもうて」
城壁の上から、その様子を見ていたアーサー王が、呆れたように、呟く。
隣に立つランスロットは、静かに、首を横に振った。
「いえ、王よ。彼は、耐えているのです。彼女との、約束を、信じて」
その時だった。
一羽の、伝令の鳥が、空から、舞い降りてきた。
衛兵が、その足に結ばれた、小さな、羊皮紙の巻物を、ガウェインの元へと、届ける。
彼は、ぼんやりとした瞳で、それを受け取った。だが、そこに書かれていた、見慣れない、しかし、どこか、彼女らしい、整った文字を見た瞬間、その青い瞳が、大きく、見開かれた。
震える指で、巻物を、開く。
そこに綴られていたのは、彼の、心を、再び、照らす、光の言葉だった。
『――私の、たった一人の、騎士様へ』
その、呼びかけだけで、彼の胸が、熱くなる。
読み進めるうちに、彼の、虚ろだった瞳に、みるみるうちに、力が、戻っていく。
そして、最後の一文。
『だから、どうか、私の太陽でいてください。私が、あなたの光を目指して、帰れるように――』
彼は、その言葉を、掠れた声で、何度も、何度も、繰り返した。
「……俺が、ミツキの、太陽……」
彼は、その手紙を、まるで、宝物のように、強く、胸に抱きしめた。
「うおおおおおおおおっ!」
次の瞬間、彼は、天を衝くような、雄叫びを上げた。
そして、今までが、嘘だったかのように、その剣に、まばゆいばかりの、太陽の力が、宿り始める。
「ミツキが、俺を目指して、帰ってくるんだ! ならば、俺は、世界で一番、輝く太陽にならねば、ならん!」
彼は、呆気にとられるランスロットを尻目に、凄まじい気迫で、訓練を、再開した。
キャメロットの太陽は、今、再び、その輝きを、取り戻したのだ。
数日後。
美月とエルリックを乗せた馬車は、キャメロットへの、帰路についていた。
災いを鎮め、民の、心からの感謝を受けた彼女の表情は、旅立つ前よりも、ずっと、自信に満ちて、輝いて見えた。
やがて、見慣れた、城壁が見えてくる。
だが、その光景は、いつもと、まるで、違っていた。
城門は、大きく開かれ、その道には、兵士や、侍女、そして、城下の民衆までが、ずらりと、並んでいたのだ。
彼らは、馬車が近づくと、一斉に、割れんばかりの、歓声を上げた。
「天使様が、お帰りだ!」
「我らの、キャメ-ロットの天使様、万歳!」
それは、王の側近でも、異国の姫君でもない。
国を救った、一人の英雄に対する、心からの、歓迎だった。
そして、その、歓迎の輪の中心。
城門の、一番前で、仁王立ちになって、彼女を待っている、一人の騎士。
彼は、まるで、全身から、光を発しているかのように、キラキラと、輝いていた。
馬車が、止まる。
美月が、扉から、降りようとするよりも、速く。
彼が、その扉を、自らの手で、開いた。
言葉は、なかった。
彼は、ただ、その、たくましい腕で、美月を、馬車から、軽々と抱き上げると、そのまま、空高く、掲げるように、くるくると、回った。
民衆の、歓声が、最高潮に、達する。
やがて、彼は、彼女を、そっと、地上に降ろすと、その両肩を、掴み、まるで、そこにいるのが、現実かどうか、確かめるように、じっと、彼女の瞳を、見つめた。
「……ただいま、帰りました。私の、騎士様」
美月が、涙で、ぐしゃぐしゃの笑顔で、言う。
彼は、今まで見たこともないくらい、最高の笑顔で、答えた。
「――おかえり。俺の、太陽」
彼は、周りの目も、何もかも、気にすることなく、彼女の手を、ぎゅっと、握った。
「さあ、帰ろう。お前の部屋まで、『護衛』してやる。疲れただろう?」
嵐は、過ぎ去った。
彼女は、もう、魔女ではない。キャメロットの、誰からも、愛される、英雄だ。
そして、その隣には、世界で一番、頼もしくて、愛おしい、太陽の騎士が、いる。
彼女の、孤独な戦いは、最高の形で、終わりを告げたのだった。
あなたにおすすめの小説
聖女じゃなかったので、カフェで働きます
風音悠鈴
恋愛
光魔法が使えず「聖女失格」と追放された大学生・藍里。
聖女じゃないと城を追い出されたけど、実は闇属性+女神の加護持ちのチートだった⁉︎
望みはカフェでのスローライフだけ。
乙女ゲーム世界の歪みから大切な日常を守ります!
全30話予定
【第2章完結】無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いてほしい!!
カントリー
恋愛
★第2章完結★
懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。
でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。
大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きなぽっちゃりした女子高校生。
今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。
異世界先は獣人の世界ークモード王国。住民の殆どが美男美女で、おデブは都子だけ。
ダーク
「…美味そうだな…」ジュル…
都子「あっ…ありがとうございます!」
(えっ…作った料理の事だよね…)
元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが…
これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。
★いいね・応援いただけると嬉しいです。創作の励みになります。
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
巻き込まれて死亡?!神様、責任とってくださいね?
紅子
恋愛
新作のゲームの為に創った魔法陣に魅入られた神様の眷族のせいで、死んじゃった私。別の世界で残りの生を消化しないと、永遠を流離うって、酷くありませんか?剣と魔法の世界で生き残るなんて出来る気がしません。私、一見、平和そのものなあの世界の住人ですよ?原因を作った眷族をつけてくれる?それなら、なんとか・・・・?はぁ、永遠を流離うくらいなら、眷族と一緒になんとか生き残れるように頑張ります!
毎日00:00に更新します。
完結済み
R15は、念のため。
自己満足の世界につき、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について
あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。
乙女ゲームのモブに転生していると断罪イベント当日に自覚した者ですが、ようやく再会できた初恋の男の子が悪役令嬢に攻略され済みなんてあんまりだ
弥生 真由
恋愛
『貴女との婚約は今夜を持って破棄させて貰おう!』
学園卒業祝いの夜会の場に、凛と響いた王太子殿下の一声。
その瞬間、私は全てを思い出した。
私が前世ではただの手芸とゲームが好きなインドア派女子大生だったこと。そして、ゲーム世界に転生して尚も趣味は変わらず、ライバルキャラですらないモブになってしまっていたことを。
幼い頃に一度出会ったきりの初恋の彼と学園で再会出来たらなぁ、なんて淡い期待を抱いて通っていたのに、道理で卒業式までなんにも起きなかったわけだ。
ーーなんて、ひとり納得していたら。
何故だが私が悪役令嬢の断罪イベントの目撃者として名指しされ、一気に渦中の人物に!?
更に、王太子以外の男性陣は皆様悪役令嬢に骨抜き。なので自然と私には、彼女の潔白に繋がる証言が求められる。
しかしながら、私は肝心の事件の日の記憶が訳あって曖昧だったので、致し方なく記憶を呼び覚ます治療を受けさせられる羽目に。
タイムリミットは1年間。
その1年間の私への護衛につけられたのは、悪役令嬢に心奪われた初恋の彼でした。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。