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第28話 天使の抵抗と、騎士の正義
王の、冷酷な審判が下された後。
謁見の間は、怒号と、悲嘆と、混乱が、渦を巻いていた。
グィネヴィアは、侍女たちに抱えられるようにして、城の塔へと、連行されていく。ランスロットもまた、騎士たちに取り押さえられ、牢獄へと、その身を投じられた。
美月は、その、あまりにも、残酷な光景を、ただ、呆然と、見つめていた。
(……嘘よ。こんなことが、許されて、いいはずがない)
彼女は、すぐさま、愛する騎士の元へと、駆け寄った。彼の顔には、もう、涙はない。ただ、鋼のように、冷たく、硬い、怒りだけが、浮かんでいた。
「ガウェインさん! これ、何かの、間違いですよね!? 王様が、本気で、王妃様を、処刑するなんて……!」
彼女の、悲痛な、訴え。
だが、返ってきたのは、彼女が、今まで、一度も、聞いたことのない、氷のように、冷たい声だった。
「……間違いではない。それが、この国の、法だ」
「法!? 人が、人を愛したことが、死罪になるなんて、そんなの間違ってます! 正義じゃない!」
その言葉に、ガウェインが、初めて、彼女を見た。
その青い瞳には、いつもの、甘い光はなく、ただ、彼女には、理解できない、騎士としての、厳しい光が、宿っていた。
「正義だ、ミツキ。……王を裏切り、国を辱めた罪は、死をもって、償うべきだ。それが、我ら、騎士が、命を懸けて、守ってきた、誇りと、秩序なのだ」
初めて、見せる、彼の、拒絶。
彼の、単純で、揺るぎない、騎士としての、正義。
それは、美月の、現代的な、倫理観とは、決して、相容れることのない、分厚い、分厚い、壁だった。
美月の心は、彼の、冷たい言葉に、深く、傷ついた。
だが、彼女は、ここで、諦めるわけには、いかなかった。
親友の、命が、かかっているのだ。
ガウェインが、ダメなら。
彼女は、意を決して、城の、最奥。王の、私室へと、向かった。
衛兵の、制止を、振り切り、彼女は、重い扉を、押し開ける。
部屋の、奥。大きな、暖炉の前で、アーサー王は、一人、立ち尽くしていた。
その背中は、あまりにも、小さく、弱々しく、見えた。もはや、そこに、絶対的な、王の威厳はない。ただ、愛する妻と、親友に裏切られた、一人の、傷ついた男が、いるだけだった。
「……王妃様の、助命嘆願に来たのなら、無駄だ。下がれ」
彼は、振り返りもせず、言った。
だが、美月は、怯まなかった。
彼女は、感情ではなく、彼女が、唯一、持つ、武器。論理で、この、傷心の王に、挑んだ。
「王よ。私は、愛を語りに来たのではありません。……キャメロットの、未来を、語りに来たのです」
その言葉に、王の肩が、ぴくりと、動いた。
「王妃様を、処刑して、何が、得られますか? ランスロット卿は、絶望し、キャメロットの、最大の、敵となるでしょう。円卓の騎士たちは、分裂し、国は、内から、崩壊します。……それは、王が、望む、未来ですか?」
彼女は、一歩、王に、近づいた。
「偉大な王とは、時に、己の感情を殺し、国益という、大局のために、判断を下す者だと、私は、信じています。……この悲劇を、さらなる、悲劇で、塗りつ重ねることが、本当に、キャメロットのためになると、お思いですか?」
それは、王の、最も、痛い部分を、えぐる、言葉だった。
アーサーは、ゆっくりと、振り返った。
その瞳には、深い、深い、苦悩の色が、浮かんでいる。
彼は、何も、言わない。ただ、じっと、この、恐れを知らぬ、異世界の女を、見つめていた。
やがて、彼は、疲れたように、息を吐いた。
「……ミツキ。お前は、どこまでも、面白い、女よな」
そして、彼は、暖炉の炎へと、視線を戻した。
「……もう、下がれ。一人に、してくれ」
それは、拒絶の言葉。
だが、その声には、先ほどまでの、冷たさは、なかった。
美月は、静かに、一礼すると、部屋を、後にした。
成功したのか、失敗したのか、分からない。
一人、薄暗い廊下で、彼女は、冷たい石壁に、背中を預けた。
全身から、力が、抜けていく。
愛する人には、拒絶され、王の心も、分からない。
生まれて、初めて、感じる、完全な、孤立無援。
彼女の、震える手の中で、ガウェインにもらった、大きすぎる指輪だけが、ひんやりとした、重みを、放っていた。
謁見の間は、怒号と、悲嘆と、混乱が、渦を巻いていた。
グィネヴィアは、侍女たちに抱えられるようにして、城の塔へと、連行されていく。ランスロットもまた、騎士たちに取り押さえられ、牢獄へと、その身を投じられた。
美月は、その、あまりにも、残酷な光景を、ただ、呆然と、見つめていた。
(……嘘よ。こんなことが、許されて、いいはずがない)
彼女は、すぐさま、愛する騎士の元へと、駆け寄った。彼の顔には、もう、涙はない。ただ、鋼のように、冷たく、硬い、怒りだけが、浮かんでいた。
「ガウェインさん! これ、何かの、間違いですよね!? 王様が、本気で、王妃様を、処刑するなんて……!」
彼女の、悲痛な、訴え。
だが、返ってきたのは、彼女が、今まで、一度も、聞いたことのない、氷のように、冷たい声だった。
「……間違いではない。それが、この国の、法だ」
「法!? 人が、人を愛したことが、死罪になるなんて、そんなの間違ってます! 正義じゃない!」
その言葉に、ガウェインが、初めて、彼女を見た。
その青い瞳には、いつもの、甘い光はなく、ただ、彼女には、理解できない、騎士としての、厳しい光が、宿っていた。
「正義だ、ミツキ。……王を裏切り、国を辱めた罪は、死をもって、償うべきだ。それが、我ら、騎士が、命を懸けて、守ってきた、誇りと、秩序なのだ」
初めて、見せる、彼の、拒絶。
彼の、単純で、揺るぎない、騎士としての、正義。
それは、美月の、現代的な、倫理観とは、決して、相容れることのない、分厚い、分厚い、壁だった。
美月の心は、彼の、冷たい言葉に、深く、傷ついた。
だが、彼女は、ここで、諦めるわけには、いかなかった。
親友の、命が、かかっているのだ。
ガウェインが、ダメなら。
彼女は、意を決して、城の、最奥。王の、私室へと、向かった。
衛兵の、制止を、振り切り、彼女は、重い扉を、押し開ける。
部屋の、奥。大きな、暖炉の前で、アーサー王は、一人、立ち尽くしていた。
その背中は、あまりにも、小さく、弱々しく、見えた。もはや、そこに、絶対的な、王の威厳はない。ただ、愛する妻と、親友に裏切られた、一人の、傷ついた男が、いるだけだった。
「……王妃様の、助命嘆願に来たのなら、無駄だ。下がれ」
彼は、振り返りもせず、言った。
だが、美月は、怯まなかった。
彼女は、感情ではなく、彼女が、唯一、持つ、武器。論理で、この、傷心の王に、挑んだ。
「王よ。私は、愛を語りに来たのではありません。……キャメロットの、未来を、語りに来たのです」
その言葉に、王の肩が、ぴくりと、動いた。
「王妃様を、処刑して、何が、得られますか? ランスロット卿は、絶望し、キャメロットの、最大の、敵となるでしょう。円卓の騎士たちは、分裂し、国は、内から、崩壊します。……それは、王が、望む、未来ですか?」
彼女は、一歩、王に、近づいた。
「偉大な王とは、時に、己の感情を殺し、国益という、大局のために、判断を下す者だと、私は、信じています。……この悲劇を、さらなる、悲劇で、塗りつ重ねることが、本当に、キャメロットのためになると、お思いですか?」
それは、王の、最も、痛い部分を、えぐる、言葉だった。
アーサーは、ゆっくりと、振り返った。
その瞳には、深い、深い、苦悩の色が、浮かんでいる。
彼は、何も、言わない。ただ、じっと、この、恐れを知らぬ、異世界の女を、見つめていた。
やがて、彼は、疲れたように、息を吐いた。
「……ミツキ。お前は、どこまでも、面白い、女よな」
そして、彼は、暖炉の炎へと、視線を戻した。
「……もう、下がれ。一人に、してくれ」
それは、拒絶の言葉。
だが、その声には、先ほどまでの、冷たさは、なかった。
美月は、静かに、一礼すると、部屋を、後にした。
成功したのか、失敗したのか、分からない。
一人、薄暗い廊下で、彼女は、冷たい石壁に、背中を預けた。
全身から、力が、抜けていく。
愛する人には、拒絶され、王の心も、分からない。
生まれて、初めて、感じる、完全な、孤立無援。
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