社畜OL、異世界で「天使」になる ~私を拾ってくれた太陽の騎士様が、過保護で嫉妬深くて、めちゃくちゃ愛してきます~

藤森瑠璃香

文字の大きさ
31 / 42

第31話 嵐の後の、愛しい日常

 キャメロットを揺るがした、あの、悲劇的な嵐が過ぎ去ってから、数週間が経った。
 ランスロットは去り、グィネヴィアは、静かに、修道院へと旅立った。城には、まだ、どこか、物悲しい、静けさが漂ってはいたが、それでも、時間は、確かに、前に進み始めていた。

 そして、美月とガウェインの関係もまた、新しい、ステージへと、入っていた。
 彼は、相変わらず、朝は、美月を部屋まで迎えに来て、一日中、彼女の「護衛」を、自認して、やまない。
 だが、その愛情表現は、以前のような、子供っぽい、独占欲とは、少し、違っていた。
 それは、もっと、穏やかで、深く、そして、揺るぎない、信頼に満ちたものへと、変わっていた。

 王の、会議の席。
 美月が、城下の、衛生改善計画について、発言していると、保守的な、廷臣の一人が、難色を示した。
「しかし、ミツキ様。そのような、前例のないことを……」
 その時、すっと、立ち上がったのは、ガウェインだった。
「静まれ。……まず、彼女の、話を聞くのが、先決だろう」
 その、静かで、威厳に満ちた声。
「彼女の、その『前例のない』知恵が、我らを、何度、救ってきたか、忘れたわけではあるまい」
 彼は、もはや、ただ、「俺のミツキは、賢い!」と、叫ぶだけの、恋する騎士ではない。彼女の、知性と、能力を、誰よりも、深く、理解し、その、最大の、支持者となっていたのだ。

 その夜。
 二人は、いつものように、あの、星空が美しい、屋上の庭園にいた。
 その日、話の口火を切ったのは、美月の方だった。
「……ガウェインさん。あなたに、きちんと、話しておかなければ、ならないことが、あります」
 彼女の、真剣な、眼差しに、ガウェインも、静かに、頷いた。

 美月は、静かに、語り始めた。
 マーリンに、告げられた、現代へと帰るための、たった一度きりの、儀式のこと。
 そして、あの、王妃の、審判が下された夜。その、儀式の、最後の機会が、過ぎ去ってしまったことを。

「……帰る、という、選択肢も、私には、ありました。でも……」
 彼女は、彼の、大きな手を、ぎゅっと、握った。
「私は、選びました。この、キャメロットで、あなたの、隣で、生きていく、未来を」

 ガウェインは、何も、言わなかった。
 ただ、その、たくましい腕で、彼女の体を、優しく、抱きしめる。
「……知っていた」
 彼の、くぐもった声が、彼女の耳元で、囁いた。
「あの夜、お前が、何か、大きな、決断を、迫られていることくらい、分かっていた。……怖かった。お前が、いなくなってしまうのではないかと、気が狂いそうだった」
 その、初めて聞く、彼の、弱音。美月は、彼の背中に、さらに、強く、腕を回した。

「もう、どこへも、行きません。私の、帰る場所は、あなたの、隣だけですから」

 彼は、ゆっくりと、体を離すと、美月の、左手を、取った。
 その、薬指にはめられた、彼の、大きすぎる、印章指輪。
「……これは、お前には、似合わん」
 彼は、そっと、指輪に、触れた。
「これは、戦う、騎士の指輪だ。……お前には、もっと、相応しいものを、贈らねばな」

 彼は、その、真っ直ぐな、青い瞳で、彼女を、見つめた。
「明日、城で、一番の、細工師に、頼もう。……星の光を、溶かしたような、銀の指輪を。俺の、太陽に、相応しい、たった一つの、指輪を」

 それは、二度目の、プロポーズ。
 今度は、誰にも、邪魔されない、二人だけの、静かで、でも、何よりも、熱い、愛の誓いだった。
 美月の瞳から、幸せな、涙が、こぼれ落ちる。

 彼女の、過去の人生は、もう、終わった。
 帰るべき、現代も、追いかけるべき、キャリアも、もう、ない。
 だが、彼女は、全てを、失ったのではない。

 新しい、名前を。
 新しい、居場所を。
 そして、太陽よりも、眩しい、愛を、手に入れたのだ。
(私の、新しいプロジェクト。……私たちの、人生)

 美月は、愛する人の腕の中で、その、輝かしい、プロジェクトの、始まりを、確かに、感じていた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女じゃなかったので、カフェで働きます

風音悠鈴
恋愛
光魔法が使えず「聖女失格」と追放された大学生・藍里。 聖女じゃないと城を追い出されたけど、実は闇属性+女神の加護持ちのチートだった⁉︎ 望みはカフェでのスローライフだけ。 乙女ゲーム世界の歪みから大切な日常を守ります! 全30話予定

【第2章完結】無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いてほしい!!

カントリー
恋愛
★第2章完結★ 懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。 でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。 大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きなぽっちゃりした女子高校生。 今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。 異世界先は獣人の世界ークモード王国。住民の殆どが美男美女で、おデブは都子だけ。 ダーク 「…美味そうだな…」ジュル… 都子「あっ…ありがとうございます!」 (えっ…作った料理の事だよね…) 元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが… これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。 ★いいね・応援いただけると嬉しいです。創作の励みになります。

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

巻き込まれて死亡?!神様、責任とってくださいね?

紅子
恋愛
新作のゲームの為に創った魔法陣に魅入られた神様の眷族のせいで、死んじゃった私。別の世界で残りの生を消化しないと、永遠を流離うって、酷くありませんか?剣と魔法の世界で生き残るなんて出来る気がしません。私、一見、平和そのものなあの世界の住人ですよ?原因を作った眷族をつけてくれる?それなら、なんとか・・・・?はぁ、永遠を流離うくらいなら、眷族と一緒になんとか生き残れるように頑張ります! 毎日00:00に更新します。 完結済み R15は、念のため。 自己満足の世界につき、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について

あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。

乙女ゲームのモブに転生していると断罪イベント当日に自覚した者ですが、ようやく再会できた初恋の男の子が悪役令嬢に攻略され済みなんてあんまりだ

弥生 真由
恋愛
『貴女との婚約は今夜を持って破棄させて貰おう!』  学園卒業祝いの夜会の場に、凛と響いた王太子殿下の一声。  その瞬間、私は全てを思い出した。  私が前世ではただの手芸とゲームが好きなインドア派女子大生だったこと。そして、ゲーム世界に転生して尚も趣味は変わらず、ライバルキャラですらないモブになってしまっていたことを。  幼い頃に一度出会ったきりの初恋の彼と学園で再会出来たらなぁ、なんて淡い期待を抱いて通っていたのに、道理で卒業式までなんにも起きなかったわけだ。  ーーなんて、ひとり納得していたら。  何故だが私が悪役令嬢の断罪イベントの目撃者として名指しされ、一気に渦中の人物に!?  更に、王太子以外の男性陣は皆様悪役令嬢に骨抜き。なので自然と私には、彼女の潔白に繋がる証言が求められる。  しかしながら、私は肝心の事件の日の記憶が訳あって曖昧だったので、致し方なく記憶を呼び覚ます治療を受けさせられる羽目に。  タイムリミットは1年間。  その1年間の私への護衛につけられたのは、悪役令嬢に心奪われた初恋の彼でした。

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。