社畜OL、異世界で「天使」になる ~私を拾ってくれた太陽の騎士様が、過保護で嫉妬深くて、めちゃくちゃ愛してきます~

藤森瑠璃香

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第33話 花嫁のドレスと、友への誓い

 キャメロット城は、今、かつてないほどの、祝祭の、喜びに満ち溢れていた。
 太陽の騎士と、キャメロットの天使。
 二人の英雄の、婚礼の準備は、国を挙げての、一大行事となっていた。

 だが、その、一大プロジェクトの、中心にいるはずの、花嫁は、少しだけ、頭を抱えていた。
「……ガウェインさん。祝宴で出す、お肉料理は、猪にしますか? それとも、鹿にしますか?」
 美月が、プロジェクト管理表さながらの、詳細な、準備リストを広げて、尋ねる。
 すると、彼女の婚約者は、背後から、彼女を、ぎゅっと抱きしめ、その首筋に、顔をうずめた。
「む……。ミツキの隣で、ミツキが作ったものなら、なんだって、美味い」
「……料理をするのは、私ではなく、料理長です」
「ならば、ミツキの、可愛い顔が見えれば、草でも、美味い!」
「……全く、話になりません」

 美月は、ため息をついたが、その口元は、幸せに、緩んでいた。
 彼の、この、子供っぽくて、どうしようもなく、甘ったれな、愛情表現が、彼女の、何よりの、原動力なのだから。

 婚礼の、準備は、着々と、進んでいった。
 そして、その、大部分を、取り仕切ってくれたのは、意外にも、王妃グィネヴィアだった。
 彼女は、自らが、修道院へと旅立つ、その日までの、残された時間を、全て、親友である美月の、幸せのために、捧げてくれていた。

「ミツキちゃん、こちらへ。あなたの、ウェディングドレスが、仕上がったわ」
 その日、美月は、王妃の私室へと、招かれた。
 部屋の中央には、息を呑むほど、美しい、純白のドレスが、飾られている。
 星の光を、そのまま、布に織り込んだかのような、繊細な、銀の刺繍。シンプルでありながら、どこまでも、気品に満ちた、デザイン。

 美月が、そのドレスに、袖を通すと、グィネヴィアは、まるで、自分のことのように、幸せそうに、微笑んだ。
「……綺麗よ、ミツキちゃん。本当に。あなたは、キャメロットで、一番、美しい花嫁になるわ」
 その、エメラルドグリーンの瞳には、親友への、祝福の光と、そして、ほんの、わずかな、個人的な、悲しみの色が、浮かんでいた。

 その時、侍女が、一枚の、羊皮紙を、王妃の元へと、運んできた。
 修道院からの、正式な、書簡。だが、その下に、もう一枚、差出人の名がない、小さな、封蝋された、手紙が、添えられていた。
 それを見た瞬間、グィネヴィアの、指先が、微かに、震えるのを、美月は、見逃さなかった。

「……ミツキちゃん。どうか、もう少しだけ、ここに、いてくれないかしら」
 彼女は、親友として、この、最後の瞬間に、立ち会ってほしいのだ。
 美月は、黙って、頷いた。

 グィネヴィアは、震える手で、その、小さな手紙を、開いた。
 そこに、書かれた言葉は、美月には、見えない。
 だが、王妃の、白い頬を、一筋、また、一筋と、涙が、伝っていく。
 しかし、その唇には、悲しみだけではない、どこか、吹っ切れたような、穏やかな、微笑みが、浮かんでいた。
 それは、きっと、永遠の、愛と、そして、永遠の、別れの言葉なのだろう。

 やがて、彼女は、静かに、立ち上がると、その、大切な手紙を、部屋の、燭台の炎へと、かざした。
 燃え上がる、炎。
 手紙は、あっという間に、灰となり、過去へと、還っていく。
 彼女は、自らの手で、その、許されぬ恋に、終止符を、打ったのだ。

「……ミツキちゃん」
 炎を見つめながら、グィネヴィアが、静かに、言った。
「あなたと、ガウェイン卿の愛は、太陽のように、明るくて、一点の曇りもない、本物よ。……どうか、決して、その光に、影を、落とさせないで。大切に、大切に、育んでいくのよ」
 それは、悲しい恋の結末を迎えた、姉から、最高の幸せを手に入れた、妹への、心からの、祝福の言葉だった。

 王妃の部屋を、後にした美月の胸は、切なさと、そして、感謝の気持ちで、いっぱいだった。
 廊下で、彼女を、心配そうに、待っていたガウェインの姿を見つけると、彼女は、たまらず、その胸へと、飛び込んだ。
「おわっ!? ミツキ、どうしたんだ!?」
 驚く彼に、彼女は、その胸に、顔をうずめたまま、囁いた。

「……なんでも、ありません。ただ、帰りましょう、ガウェインさん。私たちの、家に」

 彼は、何も、聞かなかった。
 ただ、その、大きな腕で、彼女を、優しく、抱きしめ返す。
 嵐の後の、キャメロット。
 一つの、悲しい恋が、終わりを告げ、そして、一つの、輝かしい愛が、今、まさに、花開こうとしていた。
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