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第34話 結婚前夜と、ふたりの計画
婚礼を、明日に控えた、その日。
キャメロット城は、朝から、祝福の、熱気に満ちた、喧騒に包まれていた。
料理人たちの、威勢のいい声。侍女たちの、楽しげな、ささやき。そして、城下から聞こえてくる、祭り囃子の、練習の音。
誰もが、太陽の騎士と、キャメロットの天使の、門出を、心待ちにしていた。
だが、その、祝福の中心にいるはずの、未来の花嫁は、少しだけ、うんざりしていた。
次から次へと、挨拶に訪れる、貴族たち。婚礼の、進行スケジュールの、最終確認。慣れない、儀式の、リハーサル。
(……プロジェクトの、ローンチ直前より、忙しいかもしれないわ)
美月は、控え室で、ぐったりと、椅子に、深く、もたれかかった。
その時だった。
部屋の扉が、勢いよく、開かれた。
「ミツキ! こんなところにいたか!」
現れたのは、もちろん、彼女の、未来の夫。
彼は、疲れ果てた、美月の顔を見るなり、にっと、悪戯っぽく、笑った。
「俺の姫君は、姫君でいることに、疲れたようだな。……よし、逃げるぞ!」
「え?」
美月が、聞き返すよりも、速く。
彼は、ひょいと、その、たくましい腕で、彼女の体を、米俵のように、担ぎ上げた。
「きゃっ! ガウェインさん、何を……!」
「しーっ。城を、抜け出すんだ。二人だけの、秘密の、時間だ」
美月の、恥ずかしそうな、抗議の声も、全く、耳に入っていないらしい。
彼は、そのまま、大股で、城の、裏口から、外へと、駆け出していった。
彼が、彼女を、連れてきてくれたのは、キャメロットの城壁が、一望できる、小高い丘の上だった。
色とりどりの、野の花が、咲き乱れる、静かで、美しい場所。
彼は、美月を、そっと、地面に降ろすと、自分も、その隣に、寝転んだ。
「どうだ、ミツキ。ここなら、誰も、邪魔しない」
「……本当に、あなたは、むちゃくちゃですね」
美月は、呆れながらも、彼の、隣に、そっと、横になる。
空は、どこまでも、青く、澄み渡っていた。頬を撫でる、風が、心地よい。
「なあ、ミツキ」と、彼が、彼女の手を、握った。
「この、馬鹿騒ぎが終わったら、こんな風に、毎日、穏やかに、暮らそうな」
彼は、まるで、夢を語る、子供のように、目を、輝かせた。
「俺が、お前に、馬の乗り方を、教えてやる。そしたら、二人で、どこまでも、行けるぞ。それから、犬を飼おう! 大きくて、賢い、猟犬だ!」
その、あまりにも、具体的で、幸せな、未来予想図。
美月は、くすくすと、笑った。
「いいですね。私は、あの館の庭に、カモミールの、畑を作りたいです。それから、村の子供たちに、文字を教える、小さな、学校も、開きたいな。私の、プロジェクト管理能力も、戦争以外で、役に立てたいですから」
「おお! それは、いいな! 俺も、手伝うぞ!」
ただ、寄り添って、他愛のない、未来の話をする。
その、何でもない、一瞬が、美月の胸を、どうしようもないほどの、幸福感で、満たしていった。
彼女は、そっと、自分の、左手を見つめた。
薬指には、星の光を、閉じ込めたような、美しい、婚約指輪が、輝いている。
彼女は、それを、一度、外すと、代わりに、懐から、小さな、革紐を、取り出した。そして、あの、初めて、彼が、彼女の指にはめてくれた、大きすぎる、騎士の印章指輪を、その革紐に、通した。
「……これは、私たちの、物語の、始まりの証ですから」
彼女は、それを、大切に、自分の首にかけた。
その、あまりにも、愛おしい、彼女の仕草に、ガウェインは、たまらない、というように、彼女の体を、引き寄せた。
そして、その唇に、優しく、口づける。
「俺たちの物語は、まだ、始まったばかりだぜ、ミツキ」
明日、この国の、全ての民に、祝福されて、二人は、夫婦になる。
全ての、試練は、終わった。
ここから、始まるのは、ただ、ひたすらに、甘くて、穏やかで、幸せな、未来だけ。
美月は、愛する人の腕の中で、その、輝かしい、未来の、訪れを、静かに、待っていた。
キャメロット城は、朝から、祝福の、熱気に満ちた、喧騒に包まれていた。
料理人たちの、威勢のいい声。侍女たちの、楽しげな、ささやき。そして、城下から聞こえてくる、祭り囃子の、練習の音。
誰もが、太陽の騎士と、キャメロットの天使の、門出を、心待ちにしていた。
だが、その、祝福の中心にいるはずの、未来の花嫁は、少しだけ、うんざりしていた。
次から次へと、挨拶に訪れる、貴族たち。婚礼の、進行スケジュールの、最終確認。慣れない、儀式の、リハーサル。
(……プロジェクトの、ローンチ直前より、忙しいかもしれないわ)
美月は、控え室で、ぐったりと、椅子に、深く、もたれかかった。
その時だった。
部屋の扉が、勢いよく、開かれた。
「ミツキ! こんなところにいたか!」
現れたのは、もちろん、彼女の、未来の夫。
彼は、疲れ果てた、美月の顔を見るなり、にっと、悪戯っぽく、笑った。
「俺の姫君は、姫君でいることに、疲れたようだな。……よし、逃げるぞ!」
「え?」
美月が、聞き返すよりも、速く。
彼は、ひょいと、その、たくましい腕で、彼女の体を、米俵のように、担ぎ上げた。
「きゃっ! ガウェインさん、何を……!」
「しーっ。城を、抜け出すんだ。二人だけの、秘密の、時間だ」
美月の、恥ずかしそうな、抗議の声も、全く、耳に入っていないらしい。
彼は、そのまま、大股で、城の、裏口から、外へと、駆け出していった。
彼が、彼女を、連れてきてくれたのは、キャメロットの城壁が、一望できる、小高い丘の上だった。
色とりどりの、野の花が、咲き乱れる、静かで、美しい場所。
彼は、美月を、そっと、地面に降ろすと、自分も、その隣に、寝転んだ。
「どうだ、ミツキ。ここなら、誰も、邪魔しない」
「……本当に、あなたは、むちゃくちゃですね」
美月は、呆れながらも、彼の、隣に、そっと、横になる。
空は、どこまでも、青く、澄み渡っていた。頬を撫でる、風が、心地よい。
「なあ、ミツキ」と、彼が、彼女の手を、握った。
「この、馬鹿騒ぎが終わったら、こんな風に、毎日、穏やかに、暮らそうな」
彼は、まるで、夢を語る、子供のように、目を、輝かせた。
「俺が、お前に、馬の乗り方を、教えてやる。そしたら、二人で、どこまでも、行けるぞ。それから、犬を飼おう! 大きくて、賢い、猟犬だ!」
その、あまりにも、具体的で、幸せな、未来予想図。
美月は、くすくすと、笑った。
「いいですね。私は、あの館の庭に、カモミールの、畑を作りたいです。それから、村の子供たちに、文字を教える、小さな、学校も、開きたいな。私の、プロジェクト管理能力も、戦争以外で、役に立てたいですから」
「おお! それは、いいな! 俺も、手伝うぞ!」
ただ、寄り添って、他愛のない、未来の話をする。
その、何でもない、一瞬が、美月の胸を、どうしようもないほどの、幸福感で、満たしていった。
彼女は、そっと、自分の、左手を見つめた。
薬指には、星の光を、閉じ込めたような、美しい、婚約指輪が、輝いている。
彼女は、それを、一度、外すと、代わりに、懐から、小さな、革紐を、取り出した。そして、あの、初めて、彼が、彼女の指にはめてくれた、大きすぎる、騎士の印章指輪を、その革紐に、通した。
「……これは、私たちの、物語の、始まりの証ですから」
彼女は、それを、大切に、自分の首にかけた。
その、あまりにも、愛おしい、彼女の仕草に、ガウェインは、たまらない、というように、彼女の体を、引き寄せた。
そして、その唇に、優しく、口づける。
「俺たちの物語は、まだ、始まったばかりだぜ、ミツキ」
明日、この国の、全ての民に、祝福されて、二人は、夫婦になる。
全ての、試練は、終わった。
ここから、始まるのは、ただ、ひたすらに、甘くて、穏やかで、幸せな、未来だけ。
美月は、愛する人の腕の中で、その、輝かしい、未来の、訪れを、静かに、待っていた。
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