社畜OL、異世界で「天使」になる ~私を拾ってくれた太陽の騎士様が、過保護で嫉妬深くて、めちゃくちゃ愛してきます~

藤森瑠璃香

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第35話 太陽の騎士と、天使の婚礼

 その日、キャメロット城は、鐘の音と、人々の、歓声で、目覚めた。
 雲一つない、真っ青な空。まるで、世界中が、この日を、祝福しているかのようだった。

 美月は、部屋の、大きな鏡の前に、立っていた。
 グィネヴィアが、心を込めて、誂えてくれた、純白のドレス。星屑を、そのまま、布に織り込んだかのように、繊細な、銀の刺繍が、朝の光を浴びて、きらきらと、輝いている。
 侍女たちが、彼女の、腰まで伸びた、美しい黒髪を、丁寧に、結い上げていく。
 鏡に映るのは、もう、疲れ果てた、東京の、キャリアウーマンではない。
 幸せに、頬を染め、柔らかな、光を、その身に纏う、一人の、美しい、花嫁の姿だった。
 彼女は、そっと、ドレスの下に隠した、騎士の印章指輪のネックレスに、触れた。
(……ありがとう。私を、ここまで、連れてきてくれて)

 同じ頃、ガウェインは、弟たちに、囲まれて、そわそわと、落ち着きなく、部屋の中を、歩き回っていた。
「兄上、落ち着いてください。まるで、初めて、戦場に出る、新兵のようですぞ」
 兄、ガヘリスが、呆れたように、言う。
「そうだぜ、兄貴! 相手は、竜じゃないんだから! あんなに、可愛くて、ちっちゃな、お嫁さんなのに!」
 弟、ガレスが、楽しそうに、からかう。
「う、うるさい! 俺は、別に、緊張など、しておらん!」
 強がる彼の、額には、大粒の汗が、浮かんでいた。彼は、そっと、自分の手首を見た。そこには、もう、約束の、深緑のリボンはない。昨夜、彼は、それを、彼女の元へと、返したのだ。
(……もう、約束は、いらない。これからは、ずっと、そばに、いられるのだから)
 その、確信が、彼の、震える心を、強く、奮い立たせた。

 やがて、時刻が、訪れる。
 キャメロット大聖堂の、重厚な、扉が、ゆっくりと、開かれた。
 その先に続く、純白の、バージンロード。ステンドグラスから、色とりどりの、光の粒が、降り注いでいる。
 その道を、美月は、アーサー王に、エスコートされながら、静かに、歩みを進めていた。
 それは、彼女を、娘のように、愛してくれた、王からの、最高の、贈り物だった。

 彼女の視線の先には、祭壇の前で、固唾を飲んで、彼女を待つ、ガウェインの姿があった。
 彼女の、花嫁姿を、目にした瞬間、彼の、青い瞳が、驚きと、そして、どうしようもないほどの、愛おしさで、大きく、見開かれる。
 まるで、初めて、太陽を、目にしたかのような、その、無垢な、表情。

 二人は、祭壇の前で、向き合った。
 ガウェインが、まず、口を開く。その声は、少し、震えていたが、大聖堂の隅々まで、力強く、響き渡った。
「私、ガウェインは、汝、ミツキを、妻とし。……かつて、太陽が、私に、力を与えるのだと、信じていた。だが、違った。お前こそが、私の、光だった。我が剣に、我が誇りに、そして、我が魂に懸けて、誓う。この日より、生涯、お前の、盾となり、故郷となることを。……愛している」

 次に、美月が、答える。その声は、優しく、しかし、芯の通った、美しい響きを持っていた。
「私、ミツキは、汝、ガウェインを、夫とし。……私は、道に迷い、この世界に、たどり着きました。帰る場所も、生きる意味も、見失っていた私に、全てを、与えてくれたのは、あなたです。私の、パートナーとして、顧問として、そして、あなたの、太陽として、誓います。この命、尽きるまで、あなたの、そばにいることを。……愛しています」

 二人は、星の光を宿した、銀の指輪を、交換する。
「――汝ら、夫婦となれり。花嫁に、誓いのキスを」
 その言葉が終わるか、終わらないかのうちに。
 ガウェインは、たまらない、というように、彼女を、その腕の中に、かき抱くと、深く、情熱的に、その唇を、奪った。

 わあああああっ!
 大聖堂は、割れんばかりの、歓声と、祝福の、拍手に、包まれた。
 色とりどりの、花びらが、雨のように、二人へと、降り注ぐ。
 アーサー王が、涙を流しながら、誰よりも、大きな声で、笑っている。グィネヴィアが、そっと、目元を、拭っている。ガヘリスとガレスが、指笛を鳴らして、はしゃいでいる。

 唇を、離したガウェインが、美月の耳元で、囁いた。
 その声は、いつもの、子供っぽい、独占欲に、満ちていた。
「――これで、お前は、名実ともに、俺のものだ。永遠に、な」

 美月は、もう、笑うしかなかった。
 その胸は、はちきれんばかりの、幸福感で、満たされていた。
 時を、超え、世界を、超え、結ばれた、二人の、愛。
 その、永遠の物語は、今、まさに、その、輝かしい、第一ページを、開いたのだった。
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