社畜OL、異世界で「天使」になる ~私を拾ってくれた太陽の騎士様が、過保護で嫉妬深くて、めちゃくちゃ愛してきます~

藤森瑠璃香

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第36話 私の夫と、初めての朝

 柔らかな、朝の光が、瞼を透かして、意識を、優しく揺り起こす。
 美月は、ゆっくりと、目を開けた。
 見慣れない、豪華な天蓋。肌触りの良い、シルクのシーツ。そして、自分の体を、すっぽりと、包み込んでいる、たくましい腕の、重みと、温もり。

(……夢、じゃ、ないんだ)

 彼女は、そっと、自分の左手を見た。
 薬指には、星の光を宿した、銀の指輪が、朝日を浴びて、静かに、輝いている。
 隣で、眠っている、愛しい人の、穏やかな寝顔。無防備に、開かれた唇。子供のように、規則正しい、寝息。
 その、あまりにも、平和で、幸せな光景に、美月の胸は、じんと、熱くなった。

 彼女が、そっと、指先で、彼の、金色の髪に、触れた、その時。
 彼の、長い睫毛が、微かに、震え、その、青い瞳が、ゆっくりと、開かれた。
 まだ、夢の、名残を宿した、その瞳が、彼女の姿を、捉える。
 そして、次の瞬間、その瞳に、とろけるように、甘い、愛情の色が、広がった。

「……ん……。おはよう、ミツキ」
 彼の、眠りに、掠れた、低い声が、鼓膜を、優しく、震わせる。
「……俺の、奥さん」

 奥さん。
 その、新しい響きに、美月の頬が、カッと、熱くなる。
「……おはようございます。私の、旦那様」
 彼女が、そう、囁き返すと、彼は、今までで、一番、幸せそうな顔で、笑った。
 そして、その腕に、さらに、力を込めて、彼女を、自分の方へと、引き寄せる。

「……結婚って、最高だな」
 彼は、彼女の額に、自分の額を、こつんと、合わせた。
「毎朝、目が覚めたら、腕の中に、お前がいるんだからな」
 その、あまりにも、ストレートで、甘い言葉。
 美月は、もう、彼の胸に、顔をうずめて、その、羞恥を、隠すことしか、できなかった。

 その日の、キャメロット城は、どこもかしこも、二人の、幸せな、オーラで、満たされていた。
 ガウェインは、侍女が、運んできた、朝食の盆を、自ら、受け取ると、「俺の妻の、世話は、俺がする!」と、宣言し、かいがいしく、美月の、世話を焼きたがった。
 彼が、出会う、騎士、一人一人に、「紹介する! 俺の、美しくて、賢い、妻の、ミツキだ!」と、大声で、自慢して回るので、美月は、一日中、顔を、赤らめっぱなしだった。

 そこへ、いつものように、嵐のように、ガヘリスとガレスが、やってきた。
「おはようございます、兄上! ……そして、お義姉様! 昨夜は、よく、眠れましたかな?」
 ガレスが、にやにやと、意味ありげに、笑う。
「こら、ガレス! 新婚の、邪魔をするな!」
 ガヘリスが、真面目な顔で、窘めるが、その口元も、笑っていた。
「き、貴様ら! 不敬だぞ!」
 ガウェインが、顔を真っ赤にして、弟たちを、追い払おうとする。
 その、あまりにも、賑やかで、温かい、新しい家族の風景。美月は、心の底から、笑った。

 午後になり、アーサー王が、二人を、祝福に訪れた。
「はっはっは! 幸せそうではないか、二人とも! ガウェイン、貴様、今まで以上に、腑抜けた、恋する阿呆の顔になっておるぞ!」
 王の、豪快な、からかい。
 そして、彼は、美月へと向き直ると、少しだけ、その表情を、和らげた。
「ミツキ。お前は、もはや、ただの、我が顧問ではない。本日付で、お前を、正式に、この地域の、領主夫人、レディ・ミツキと、認める。ガウェインの、館も、土地も、全て、お前のものだ」

 それは、彼女が、この国で、確固たる、地位と、名誉を得た、という、王からの、正式な、布告だった。
 美月は、深く、深く、頭を下げた。

 その夜。
 二人は、新しい部屋の、バルコニーで、キャメロットの、美しい夜景を、見下ろしていた。
「レディ・ミツキ……。なんだか、まだ、実感が、湧きませんね」
 彼女が、そう、呟くと、後ろから、ガウェインが、その体を、優しく、抱きしめた。
 彼の、たくましい胸板と、温もり。

「現実だぞ、ミツキ。お前と、俺。俺たちの、家。そして、これから、始まる、未来。……全部、本物だ」
 彼は、彼女の、うなじに、そっと、顔をうずめる。
「……なあ、ミツキ。結婚して、一番、いいこと、なんだか、分かるか?」
「……なんでしょう?」
 彼の、吐息が、耳を、くすぐる。

「こうやって、お前を、一晩中、『護衛』できることだ」

 その、どこまでも、彼らしい、不器用で、甘い、囁き。
 美月は、幸せな、笑い声を、上げた。
 おとぎ話は、もう、終わったのだ。
 ここから、始まるのは、二人が、紡いでいく、甘くて、温かい、永遠の、日常なのだから。
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