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第37話 私たちの家と、ささやかな未来
太陽の騎士と、キャメロットの天使の、華燭の典から、数週間が過ぎた。
城での、甘く、賑やかな新婚生活を終え、二人は、いよいよ、彼らの、新しい「家」へと、移り住む準備を、始めていた。
その、引っ越しの日は、例によって、賑やかで、少しだけ、混沌としていた。
「ミツキ! そのような、重い長椅子は、俺に任せろ! 俺は、キャメロット最強の騎士であり、お前の、夫なのだぞ!」
ガウェインは、そう宣言すると、一人で、三人掛けの、巨大な長椅子を、軽々と、持ち上げてみせる。
その隣で、美月は、侍女たちに、「その、衣装箪笥は、寝室の、奥へ。こちらの、食器類は、馬車が揺れても、割れないように、干し草を、詰めてください」と、プロジェクトマネージャーさながらの、的確な指示を、飛ばしていた。
腕力担当の、夫と、頭脳担当の、妻。
その、見事な連携に、手伝いの者たちは、微笑ましそうに、笑うのだった。
馬車に揺られて、たどり着いたのは、あの、丘の上にある、小さな館。
以前、訪れた時よりも、綺麗に、整えられ、主の帰りを、今か今かと、待っていたかのように、静かに、佇んでいた。
「……ここが」
「ああ。俺たちの、家だ」
その日から、美月の、新しい、そして、最も、幸せな「プロジェクト」が、始まった。
彼女の、優れた、管理能力は、新居の、片付けにおいても、遺憾無く、発揮された。荷物は、瞬く間に、然るべき場所へと、収められ、殺風景だった館は、みるみるうちに、温かい、「家」の顔つきへと、変わっていった。
そして、彼女が、何よりも、情熱を注いだのは、あの、少し、荒れ放題だった、裏庭だった。
「……ここに、カモミールの、畑を作るんです」
貴婦人としての、立場も忘れ、裾を泥だらけにしながら、彼女は、来る日も、来る日も、土を耕し、雑草を抜いた。
そこへ、訓練を終えたガウェインが、やってくる。
彼は、妻の、泥だらけの姿を見ても、眉をひそめたりはしない。
ただ、にっと笑うと、当然のように、その隣に、屈み込み、その、大きな、節くれだった手で、彼女と、一緒に、雑草を抜き始めた。
「これも、『護衛』の任務ですか? 私の騎士様」
美月が、からかうように、言う。
「当たり前だ。俺の妻の、大切な、『かも・みーる』を、悪しき、雑草どもから、守ってやらねばな!」
その、真剣な、物言い。
二人は、顔を見合わせ、そして、幸せな、笑い声を、上げた。
ただ、寄り添って、土に触れる。その、何でもない、一瞬が、何よりも、愛おしかった。
そんな、ある日の午後。
その、ささやかな、新しい家に、高貴な、客人が、訪れた。
アーサー王と、そして、グィネヴィア王妃だった。
「はっはっは! 太陽の騎士も、すっかり、土いじりが、板についたではないか! 面白い!」
王は、豪快に、笑った。
その隣で、グィネヴィアが、美月の手に、小さな、布袋を、握らせた。中には、異国の、珍しい、花の種が、入っている。
「……幸せに、なるのよ、ミツキちゃん」
その、エメラルドグリーンの瞳には、親友の、幸せを、心から、喜ぶ、温かい光と、そして、自らの、運命を受け入れた、穏やかな、光が、宿っていた。
それは、彼女が、修道院へと旅立つ、前の日のことだった。
その夜。
館の、暖炉には、ぱちぱちと、温かい、炎が、揺れていた。
美月とガウェインは、寄り添って、その、炎を、見つめていた。
「……家」
美月が、ぽつりと、呟いた。
「私、生まれて初めて、心から、そう思える場所に、巡り会えた気がします」
その、愛おしい、告白。
ガウェインは、言葉の代わりに、その、小さな肩を、強く、抱き寄せた。そして、彼女の、髪に、顔をうずめる。
「俺にとっては、お前がいる場所が、いつだって、俺の、家だ。ミツキ」
おとぎ話の、ヒーローと、ヒロインではない。
ただの、男と、女として。夫と、妻として。
二人の、温かくて、穏やかな、本当の人生が、今、この、ささやかな館から、始まろうとしていた。
城での、甘く、賑やかな新婚生活を終え、二人は、いよいよ、彼らの、新しい「家」へと、移り住む準備を、始めていた。
その、引っ越しの日は、例によって、賑やかで、少しだけ、混沌としていた。
「ミツキ! そのような、重い長椅子は、俺に任せろ! 俺は、キャメロット最強の騎士であり、お前の、夫なのだぞ!」
ガウェインは、そう宣言すると、一人で、三人掛けの、巨大な長椅子を、軽々と、持ち上げてみせる。
その隣で、美月は、侍女たちに、「その、衣装箪笥は、寝室の、奥へ。こちらの、食器類は、馬車が揺れても、割れないように、干し草を、詰めてください」と、プロジェクトマネージャーさながらの、的確な指示を、飛ばしていた。
腕力担当の、夫と、頭脳担当の、妻。
その、見事な連携に、手伝いの者たちは、微笑ましそうに、笑うのだった。
馬車に揺られて、たどり着いたのは、あの、丘の上にある、小さな館。
以前、訪れた時よりも、綺麗に、整えられ、主の帰りを、今か今かと、待っていたかのように、静かに、佇んでいた。
「……ここが」
「ああ。俺たちの、家だ」
その日から、美月の、新しい、そして、最も、幸せな「プロジェクト」が、始まった。
彼女の、優れた、管理能力は、新居の、片付けにおいても、遺憾無く、発揮された。荷物は、瞬く間に、然るべき場所へと、収められ、殺風景だった館は、みるみるうちに、温かい、「家」の顔つきへと、変わっていった。
そして、彼女が、何よりも、情熱を注いだのは、あの、少し、荒れ放題だった、裏庭だった。
「……ここに、カモミールの、畑を作るんです」
貴婦人としての、立場も忘れ、裾を泥だらけにしながら、彼女は、来る日も、来る日も、土を耕し、雑草を抜いた。
そこへ、訓練を終えたガウェインが、やってくる。
彼は、妻の、泥だらけの姿を見ても、眉をひそめたりはしない。
ただ、にっと笑うと、当然のように、その隣に、屈み込み、その、大きな、節くれだった手で、彼女と、一緒に、雑草を抜き始めた。
「これも、『護衛』の任務ですか? 私の騎士様」
美月が、からかうように、言う。
「当たり前だ。俺の妻の、大切な、『かも・みーる』を、悪しき、雑草どもから、守ってやらねばな!」
その、真剣な、物言い。
二人は、顔を見合わせ、そして、幸せな、笑い声を、上げた。
ただ、寄り添って、土に触れる。その、何でもない、一瞬が、何よりも、愛おしかった。
そんな、ある日の午後。
その、ささやかな、新しい家に、高貴な、客人が、訪れた。
アーサー王と、そして、グィネヴィア王妃だった。
「はっはっは! 太陽の騎士も、すっかり、土いじりが、板についたではないか! 面白い!」
王は、豪快に、笑った。
その隣で、グィネヴィアが、美月の手に、小さな、布袋を、握らせた。中には、異国の、珍しい、花の種が、入っている。
「……幸せに、なるのよ、ミツキちゃん」
その、エメラルドグリーンの瞳には、親友の、幸せを、心から、喜ぶ、温かい光と、そして、自らの、運命を受け入れた、穏やかな、光が、宿っていた。
それは、彼女が、修道院へと旅立つ、前の日のことだった。
その夜。
館の、暖炉には、ぱちぱちと、温かい、炎が、揺れていた。
美月とガウェインは、寄り添って、その、炎を、見つめていた。
「……家」
美月が、ぽつりと、呟いた。
「私、生まれて初めて、心から、そう思える場所に、巡り会えた気がします」
その、愛おしい、告白。
ガウェインは、言葉の代わりに、その、小さな肩を、強く、抱き寄せた。そして、彼女の、髪に、顔をうずめる。
「俺にとっては、お前がいる場所が、いつだって、俺の、家だ。ミツキ」
おとぎ話の、ヒーローと、ヒロインではない。
ただの、男と、女として。夫と、妻として。
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