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番外編:とある騎士弟の、観察日誌
語り手:ガヘリス
キャメロットの練兵場に響く、剣戟の音と、騎士たちの雄叫び。
それが、俺、ガヘリス・オブ・オルクニーの、日常だ。
俺は、兄である、あの太陽の騎士ガウェイン卿の背中を追い、日々、剣の修行に明け暮れている。
その兄上が、最近、変わった。
いや、正確に言えば、あの方――レディ・ミツキが、キャメロットに来てから、ずっと、変わり続けている。
以前の兄上は、まさに、荒ぶる太陽そのものだった。
その力は、圧倒的で、誰よりも、強く、輝かしい。だが、その輝きは、時として、あまりにも、激しすぎて、周りを、焼き尽くさんばかりの、危うさも、孕んでいた。
特に、あの、ランスロット卿への、剥き出しの対抗心は、見ていて、ハラハラすることも、少なくなかった。
だが、今の兄上は、違う。
強さは、そのままに。いや、むしろ、以前よりも、増しているかもしれない。
その輝きに、穏やかで、温かい、角が取れたような、優しさが、加わったのだ。
「――兄上! また、やってますよ」
隣で、弟のガレスが、呆れたように、噴き出した。
その視線の先。
練兵場の、隅で、今日の、新人騎士の、視察に来ているはずの、我が兄、ガウェイン卿が、その、本来の任務を、完全に、放棄していた。
「なあ、ミツキ。この、新しい剣の、紋様だが、どう思う? お前の、瞳の色に、似ていないか?」
「まあ、素敵ですね。でも、ガウェインさん。新人さんたちが、あなたを、待っていますよ?」
「む……。あんな、ひよっこ共より、俺の妻と、話している方が、百倍、有意義だ」
兄上は、自分の妻である、レディ・ミツキの手を、両手で、固く握りしめ、その場から、一歩も、動こうとしない。
レディ・ミツキは、困ったように、でも、どこか、嬉しそうに、微笑んでいる。
新人騎士たちは、どうしていいか、分からず、ただ、棒立ちになっている。
……兄上。お願いですから、公私の区別というものを、覚えてください。
ふと、レディ・ミツキが、手を伸ばし、兄上の頬についた、砂埃を、持っていた、ハンカチで、そっと、拭ってさしあげた。
それは、本当に、何でもない、夫婦の、仕草だった。
だが、その瞬間。
兄上の顔が、今まで、見たこともないくらい、だらしなく、幸せそうに、とろけたのを、俺は、見逃さなかった。
彼は、次の瞬間、たまらない、というように、彼女の、華奢な体を、ぎゅうっと、抱きしめた。
「ミツキ! やはり、お前は、世界一の、妻だ!」
「きゃっ! ちょ、ガウェインさん! 皆、見てますから!」
ああ、もう、ダメだ。
ガレスは、腹を抱えて、笑い転げている。新人たちは、唖然としている。
俺は、深く、深く、天を仰いで、ため息をついた。
だが。
その、あまりにも、公然と、繰り広げられる、痴話喧嘩(というよりは、一方的な溺愛)を、見ていると、不思議と、俺の心も、温かくなってくるのだ。
あの、嵐のように、激しかった兄上を、あれほど、穏やかで、幸せな顔に、できるのは、世界で、ただ一人、レディ・ミツキだけなのだから。
俺は、仕方ない、というように、二人の元へと、歩み寄った。
「兄上。そろそろ、新人たちが、凍えております」
「おお、ガヘリスか! そうだったな!」
兄上は、ようやく、妻を解放すると、新人たちの方へと向き直り、咳払いをした。
「いいか、貴様ら! 最強の騎士になるための、極意を、教えてやる! まず、我が妻のような、太陽を見つけることだ! そして……」
「あなた。彼らが、聞きたいのは、剣の、構え方だと思いますよ」
レディ・ミツキの、優しい、ツッコミ。
兄上が、「むぐっ」と、言葉に詰まる。
その光景を見て、俺は、もう、笑うしかなかった。
我が、太陽の騎士。
そして、その太陽を、見事に、手懐ける、異世界の賢女。
この、キャメロットの未来は、きっと、どこまでも、明るいのだろう。
俺は、そんな、二人の背中を見つめながら、心からの、感謝と、敬意を、捧げるのだった。
キャメロットの練兵場に響く、剣戟の音と、騎士たちの雄叫び。
それが、俺、ガヘリス・オブ・オルクニーの、日常だ。
俺は、兄である、あの太陽の騎士ガウェイン卿の背中を追い、日々、剣の修行に明け暮れている。
その兄上が、最近、変わった。
いや、正確に言えば、あの方――レディ・ミツキが、キャメロットに来てから、ずっと、変わり続けている。
以前の兄上は、まさに、荒ぶる太陽そのものだった。
その力は、圧倒的で、誰よりも、強く、輝かしい。だが、その輝きは、時として、あまりにも、激しすぎて、周りを、焼き尽くさんばかりの、危うさも、孕んでいた。
特に、あの、ランスロット卿への、剥き出しの対抗心は、見ていて、ハラハラすることも、少なくなかった。
だが、今の兄上は、違う。
強さは、そのままに。いや、むしろ、以前よりも、増しているかもしれない。
その輝きに、穏やかで、温かい、角が取れたような、優しさが、加わったのだ。
「――兄上! また、やってますよ」
隣で、弟のガレスが、呆れたように、噴き出した。
その視線の先。
練兵場の、隅で、今日の、新人騎士の、視察に来ているはずの、我が兄、ガウェイン卿が、その、本来の任務を、完全に、放棄していた。
「なあ、ミツキ。この、新しい剣の、紋様だが、どう思う? お前の、瞳の色に、似ていないか?」
「まあ、素敵ですね。でも、ガウェインさん。新人さんたちが、あなたを、待っていますよ?」
「む……。あんな、ひよっこ共より、俺の妻と、話している方が、百倍、有意義だ」
兄上は、自分の妻である、レディ・ミツキの手を、両手で、固く握りしめ、その場から、一歩も、動こうとしない。
レディ・ミツキは、困ったように、でも、どこか、嬉しそうに、微笑んでいる。
新人騎士たちは、どうしていいか、分からず、ただ、棒立ちになっている。
……兄上。お願いですから、公私の区別というものを、覚えてください。
ふと、レディ・ミツキが、手を伸ばし、兄上の頬についた、砂埃を、持っていた、ハンカチで、そっと、拭ってさしあげた。
それは、本当に、何でもない、夫婦の、仕草だった。
だが、その瞬間。
兄上の顔が、今まで、見たこともないくらい、だらしなく、幸せそうに、とろけたのを、俺は、見逃さなかった。
彼は、次の瞬間、たまらない、というように、彼女の、華奢な体を、ぎゅうっと、抱きしめた。
「ミツキ! やはり、お前は、世界一の、妻だ!」
「きゃっ! ちょ、ガウェインさん! 皆、見てますから!」
ああ、もう、ダメだ。
ガレスは、腹を抱えて、笑い転げている。新人たちは、唖然としている。
俺は、深く、深く、天を仰いで、ため息をついた。
だが。
その、あまりにも、公然と、繰り広げられる、痴話喧嘩(というよりは、一方的な溺愛)を、見ていると、不思議と、俺の心も、温かくなってくるのだ。
あの、嵐のように、激しかった兄上を、あれほど、穏やかで、幸せな顔に、できるのは、世界で、ただ一人、レディ・ミツキだけなのだから。
俺は、仕方ない、というように、二人の元へと、歩み寄った。
「兄上。そろそろ、新人たちが、凍えております」
「おお、ガヘリスか! そうだったな!」
兄上は、ようやく、妻を解放すると、新人たちの方へと向き直り、咳払いをした。
「いいか、貴様ら! 最強の騎士になるための、極意を、教えてやる! まず、我が妻のような、太陽を見つけることだ! そして……」
「あなた。彼らが、聞きたいのは、剣の、構え方だと思いますよ」
レディ・ミツキの、優しい、ツッコミ。
兄上が、「むぐっ」と、言葉に詰まる。
その光景を見て、俺は、もう、笑うしかなかった。
我が、太陽の騎士。
そして、その太陽を、見事に、手懐ける、異世界の賢女。
この、キャメロットの未来は、きっと、どこまでも、明るいのだろう。
俺は、そんな、二人の背中を見つめながら、心からの、感謝と、敬意を、捧げるのだった。
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