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第7話:二人だけの秘密協定
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あの日の部室での対峙以来、私と霧島怜くんの関係は、奇妙な均衡状態にあった。
彼は、教室で私と目が合うと、以前のように敵意を剥き出しにすることはなくなった。代わりに、何か言いたげな、それでいて諦めたような、複雑な視線を向けてくるようになった。
(私の言葉、ちゃんと届いたんだ)
その手応えに、私は、次の一手を打つことを決意した。
放課後の教室。ほとんどの生徒が帰り、夕日が差し込む中、私は一人、帰る準備をしている怜くんの元へと向かった。
「霧島くん」
私が声をかけると、彼はビクッと肩を揺らし、面倒くさそうに振り返った。
「……なんだよ」
「ちょっと、提案があるんだけど」
私は、いたずらっぽく笑いながら、一枚の企画書(もちろん、今、私が頭の中で考えただけのものだ)を、彼に突きつけた。
「題して、『氷の王子様・徹底解剖企画』! 新聞部のトップシークレット取材にご協力いただきたく!」
「……は?」
彼は、心底、意味がわからないという顔で私を見た。
「お前、本気で言ってるのか…?」
「もちろん、本気だよ」
私は、真剣な顔で頷いた。
「でも、安心して。これは、記事にするためのものじゃない。私だけが知っておくための、特別取材。その代わり、霧島くんの最大の秘密は、私が責任をもって、墓場まで持っていく」
「……人質、ってことか」
「人聞きが悪いなあ。これは、お互いにとって有益な、ギブアンドテイクの『協定』だよ」
私は、にっと笑ってみせる。彼の秘密を守る代わりに、私は、彼の素顔をもっと知る権利を得る。完璧な計画だ。
怜くんは、しばらく黙って、腕を組みながら私を見ていた。彼の頭の中で、様々な考えが巡っているのがわかる。
ここで断れば、この変な女が、いつ、どこで、自分の過去をバラすか分からない。でも、こんな馬鹿げた提案に乗るのも癪だ。そんな葛藤が、彼の美しい眉間に、深い皺を刻んでいた。
「……分かった」
長い沈黙の末、彼は、観念したように、大きなため息をついた。
「ただし、条件がある」
「お、いいね! なになに?」
「一つ、変な質問はするな。二つ、取材中は、あまり騒ぐな。三つ、絶対に、誰にも言うな。悠斗にもだ」
「オッケー! 契約成立だね、王子様!」
私が大喜びでそう言うと、彼は、顔を真っ赤にして叫んだ。
「だから、王子様って言うな!」
その反応に、私はまた、胸の奥がきゅん、となるのを感じた。
彼の心を覆っていた分厚い氷の壁が、少しずつ、でも確実に、溶け始めている。その変化が、たまらなく嬉しかった。
「じゃあ、協定成立を記念して、早速、取材第一弾といきますか!」
「……は?」
「今度の日曜日、空いてる?」
「……はぁ!? 調子に乗るな!」
私の、あまりにも大胆な「取材」の申し込みは、怜くんの「馬鹿か、お前は!」という、盛大なツッコミによって、あっけなく却下された。
でも、いいのだ。
秘密を共有し、奇妙な契約で結ばれた、私と彼。
私たちの、コミカルで、スリリングで、そして、きっと、甘酸っぱい物語は、今、始まったばかりなのだから。
彼は、教室で私と目が合うと、以前のように敵意を剥き出しにすることはなくなった。代わりに、何か言いたげな、それでいて諦めたような、複雑な視線を向けてくるようになった。
(私の言葉、ちゃんと届いたんだ)
その手応えに、私は、次の一手を打つことを決意した。
放課後の教室。ほとんどの生徒が帰り、夕日が差し込む中、私は一人、帰る準備をしている怜くんの元へと向かった。
「霧島くん」
私が声をかけると、彼はビクッと肩を揺らし、面倒くさそうに振り返った。
「……なんだよ」
「ちょっと、提案があるんだけど」
私は、いたずらっぽく笑いながら、一枚の企画書(もちろん、今、私が頭の中で考えただけのものだ)を、彼に突きつけた。
「題して、『氷の王子様・徹底解剖企画』! 新聞部のトップシークレット取材にご協力いただきたく!」
「……は?」
彼は、心底、意味がわからないという顔で私を見た。
「お前、本気で言ってるのか…?」
「もちろん、本気だよ」
私は、真剣な顔で頷いた。
「でも、安心して。これは、記事にするためのものじゃない。私だけが知っておくための、特別取材。その代わり、霧島くんの最大の秘密は、私が責任をもって、墓場まで持っていく」
「……人質、ってことか」
「人聞きが悪いなあ。これは、お互いにとって有益な、ギブアンドテイクの『協定』だよ」
私は、にっと笑ってみせる。彼の秘密を守る代わりに、私は、彼の素顔をもっと知る権利を得る。完璧な計画だ。
怜くんは、しばらく黙って、腕を組みながら私を見ていた。彼の頭の中で、様々な考えが巡っているのがわかる。
ここで断れば、この変な女が、いつ、どこで、自分の過去をバラすか分からない。でも、こんな馬鹿げた提案に乗るのも癪だ。そんな葛藤が、彼の美しい眉間に、深い皺を刻んでいた。
「……分かった」
長い沈黙の末、彼は、観念したように、大きなため息をついた。
「ただし、条件がある」
「お、いいね! なになに?」
「一つ、変な質問はするな。二つ、取材中は、あまり騒ぐな。三つ、絶対に、誰にも言うな。悠斗にもだ」
「オッケー! 契約成立だね、王子様!」
私が大喜びでそう言うと、彼は、顔を真っ赤にして叫んだ。
「だから、王子様って言うな!」
その反応に、私はまた、胸の奥がきゅん、となるのを感じた。
彼の心を覆っていた分厚い氷の壁が、少しずつ、でも確実に、溶け始めている。その変化が、たまらなく嬉しかった。
「じゃあ、協定成立を記念して、早速、取材第一弾といきますか!」
「……は?」
「今度の日曜日、空いてる?」
「……はぁ!? 調子に乗るな!」
私の、あまりにも大胆な「取材」の申し込みは、怜くんの「馬鹿か、お前は!」という、盛大なツッコミによって、あっけなく却下された。
でも、いいのだ。
秘密を共有し、奇妙な契約で結ばれた、私と彼。
私たちの、コミカルで、スリリングで、そして、きっと、甘酸っぱい物語は、今、始まったばかりなのだから。
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