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第27話:君と戦う、最初のコート
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新人戦の当日。
土曜日の体育館は、各校の応援団や父兄で埋め尽くされ、独特の熱気と興奮に包まれていた。
私は、首から新聞部のカメラを下げ、親友の美咲と一緒に、観客席の前から二列目という絶好のポジションを確保した。
コートでは、星陵高校バスケ部の選手たちが、ウォーミングアップを始めている。
その中でも、背番号7をつけた怜くんの姿は、ひときわ目を引いた。ユニフォーム姿の彼は、いつも以上に手足が長く見え、まるでプロの選手みたいに、洗練されて見えた。
ふと、彼がこちらを向く。何十人、何百人といる観客の中から、彼は、私だけを、正確に見つけ出した。
彼は、何も言わずに、ただ、こくりと一つ、頷いてみせた。
(――見てるから)
私も、声には出さずに、そう、彼にだけ伝わるように、小さく頷き返す。
それだけで、十分だった。
試合開始のブザーが鳴り響く。
初戦の相手は、去年の優勝校。序盤から、一進一退の、息の詰まるような攻防が続いた。
怜くんは、エースとして、冷静にゲームを組み立て、時には、自ら果敢にゴールへと切り込んでいく。その、しなやかで、力強いプレイの一つ一つを、私は、ファインダー越しに、夢中で追いかけた。
でも、試合が白熱するにつれて、相手校のディフェンスも、荒くなっていく。
第三クォーターの終盤。怜くんが、ドリブルで相手を抜き去ろうとした瞬間、相手選手の激しいチャージを受け、大きな音を立ててコートに倒れ込んだ。
「――怜くん!」
思わず、声が出た。
体育館が、一瞬、静まり返る。
彼は、すぐに立ち上がったけれど、その表情は、苦痛に歪んでいた。 physicalな痛みだけじゃない。予期せぬアクシデントが、彼の心の、一番脆い部分を、刺激してしまったのだ。
彼の瞳に、あの日の、不安の色が、一瞬だけ、よぎったのを、私は見逃さなかった。
フリースロー。
体育館中の視線が、彼一人に、突き刺さるように集まる。
彼が、ゆっくりと、ボールを手に取る。その肩が、ほんの少しだけ、硬直しているのが、私にはわかった。
(怜くん……!)
私は、祈るように、ぎゅっと、手を握りしめた。
彼は、一度、深く息をつくと、観客席にいる、私を探した。
目が、合った。
私は、叫ばない。手を、振らない。
ただ、彼に向かって、精一杯の、優しい笑顔を向けた。そして、唇だけで、ゆっくりと、伝える。
『だ、い、じょ、う、ぶ。わ、た、し、だ、け』
大丈夫。見ているのは、私だけ。
私たちの、秘密の、おまじない。
私のメッセージを、彼は、確かに、受け取ってくれた。
彼の瞳から、すうっと、迷いの色が消える。肩の力が、ふっと、抜けていく。
そして、彼が、静かに放ったボールは。
シュパッ、という、世界で一番、心地よい音を立てて、ゴールネットを揺らした。
二本目も、同じように、完璧な放物線を描いて、ゴールに吸い込まれていく。
その瞬間、体育館に、大きな、大きな歓声が響き渡った。
試合は、あのフリースローをきっかけに流れを掴んだ、星陵高校の勝利で幕を閉じた。
仲間たちと、ハイタッチを交わす怜くん。
彼は、その輪の中心で、もう一度、私の方を見た。
その瞳には、笑顔でも、ガッツポーズでもない。ただ、深い、深い、感謝と、信頼の色だけが、宿っていた。
私は、カメラをそっと下ろし、まだドキドキと鳴りやまない胸を押さえた。
ただ、応援していただけじゃない。
私は、今日、確かに、彼と一緒に、コートに立って、戦っていたのだ。
彼の、一番の、お守りとして。
私たちの絆は、どんな過去のトラウマよりも、ずっと、ずっと、強い。
その確信が、私の心を、温かい誇りで満たしていた。
土曜日の体育館は、各校の応援団や父兄で埋め尽くされ、独特の熱気と興奮に包まれていた。
私は、首から新聞部のカメラを下げ、親友の美咲と一緒に、観客席の前から二列目という絶好のポジションを確保した。
コートでは、星陵高校バスケ部の選手たちが、ウォーミングアップを始めている。
その中でも、背番号7をつけた怜くんの姿は、ひときわ目を引いた。ユニフォーム姿の彼は、いつも以上に手足が長く見え、まるでプロの選手みたいに、洗練されて見えた。
ふと、彼がこちらを向く。何十人、何百人といる観客の中から、彼は、私だけを、正確に見つけ出した。
彼は、何も言わずに、ただ、こくりと一つ、頷いてみせた。
(――見てるから)
私も、声には出さずに、そう、彼にだけ伝わるように、小さく頷き返す。
それだけで、十分だった。
試合開始のブザーが鳴り響く。
初戦の相手は、去年の優勝校。序盤から、一進一退の、息の詰まるような攻防が続いた。
怜くんは、エースとして、冷静にゲームを組み立て、時には、自ら果敢にゴールへと切り込んでいく。その、しなやかで、力強いプレイの一つ一つを、私は、ファインダー越しに、夢中で追いかけた。
でも、試合が白熱するにつれて、相手校のディフェンスも、荒くなっていく。
第三クォーターの終盤。怜くんが、ドリブルで相手を抜き去ろうとした瞬間、相手選手の激しいチャージを受け、大きな音を立ててコートに倒れ込んだ。
「――怜くん!」
思わず、声が出た。
体育館が、一瞬、静まり返る。
彼は、すぐに立ち上がったけれど、その表情は、苦痛に歪んでいた。 physicalな痛みだけじゃない。予期せぬアクシデントが、彼の心の、一番脆い部分を、刺激してしまったのだ。
彼の瞳に、あの日の、不安の色が、一瞬だけ、よぎったのを、私は見逃さなかった。
フリースロー。
体育館中の視線が、彼一人に、突き刺さるように集まる。
彼が、ゆっくりと、ボールを手に取る。その肩が、ほんの少しだけ、硬直しているのが、私にはわかった。
(怜くん……!)
私は、祈るように、ぎゅっと、手を握りしめた。
彼は、一度、深く息をつくと、観客席にいる、私を探した。
目が、合った。
私は、叫ばない。手を、振らない。
ただ、彼に向かって、精一杯の、優しい笑顔を向けた。そして、唇だけで、ゆっくりと、伝える。
『だ、い、じょ、う、ぶ。わ、た、し、だ、け』
大丈夫。見ているのは、私だけ。
私たちの、秘密の、おまじない。
私のメッセージを、彼は、確かに、受け取ってくれた。
彼の瞳から、すうっと、迷いの色が消える。肩の力が、ふっと、抜けていく。
そして、彼が、静かに放ったボールは。
シュパッ、という、世界で一番、心地よい音を立てて、ゴールネットを揺らした。
二本目も、同じように、完璧な放物線を描いて、ゴールに吸い込まれていく。
その瞬間、体育館に、大きな、大きな歓声が響き渡った。
試合は、あのフリースローをきっかけに流れを掴んだ、星陵高校の勝利で幕を閉じた。
仲間たちと、ハイタッチを交わす怜くん。
彼は、その輪の中心で、もう一度、私の方を見た。
その瞳には、笑顔でも、ガッツポーズでもない。ただ、深い、深い、感謝と、信頼の色だけが、宿っていた。
私は、カメラをそっと下ろし、まだドキドキと鳴りやまない胸を押さえた。
ただ、応援していただけじゃない。
私は、今日、確かに、彼と一緒に、コートに立って、戦っていたのだ。
彼の、一番の、お守りとして。
私たちの絆は、どんな過去のトラウマよりも、ずっと、ずっと、強い。
その確信が、私の心を、温かい誇りで満たしていた。
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