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Hello2
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何故か外に置かれていたママチャリに乗った公平は、ホーリーの言うままに舗装のされていないデコボコ道を走っていた。後ろにはホーリーが横向きに腰掛けていた。
「空飛べるんだからわざわざ荷台に乗ることもないだろうに」
「いーの。それに、こうしていると青春って感じがしない? 微妙な距離間の幼馴染とかお互いの事を好きに思ってるのに告白に踏み切れない青い男女がじゃれる、そんな感じ」
ホーリーはそう言って公平に軽く抱きついて彼の脇腹をくすぐった。
「おま、ちょ! やめろって! 危ないだろ」
「うりうり~」
公平は倒れそうになる自転車を気合で持ち直した。そして、今だにくすぐる手を止めないホーリーに、再三やめるよう懇願した。それでも一向にやめる気配がないのを感じ取った公平は、ハンドルをしっかりと握った後、わざと大きめの石の上を通った。
そうして生じた衝撃がもろに荷台に座るホーリーを襲った。ホーリーは金属製の荷台にしたたかに尻をぶつけた。
「痛! なんて事すんのよ。可愛いホーリーちゃんのプリチーなお尻にあざが出来ちゃったらどうすんのよ」
「うっせ。やめろって言ってるのにいつまでもくすぐってるからだろ」
「そんな事言って、ちょっと楽しんでたくせに」
からかうように言うホーリーに、公平は少し納得してしまった。彼女の言う通り、公平は楽しんでいたのだ。それもそのはず、どれだけ願っても訪れなかったシチュエーションを今まさに体験していたのだから。先程までの二人は、傍目から見ればホーリーの言う通り、学生が放課後夕日を背に街を走っている、まさにそんな表現がピタリと当てはまっていた。二人の服装が学生服ではない事と、ホーリーの背中に羽が見える事を除いて、だが。
公平はそんな心情を悟られないように、早々に話題を切り替える事にした。
「そういや、さっき、ヒロインがどーたらとかチートアイテムがどーたらとか言ってたけど、あれなんだ? それに、世界を救えって言われても俺パンピーだし」
「ああ、あれね。そのまんまよ。この世界はいわゆるファンタジーRPGなの。公平の世界で言うと、中世ヨーロッパが一番近いかしら。宗教を中心に人々は生活してるわ。当然、魔女狩りも行われているし、国の大半は王国よ。それに加えて魔物とよばれるモンスターも生息してるわ。過去に何度かトリフォール遠征軍による魔物と人間の大規模戦争も行われているわ。もっとも、人間側の大敗で戦争は終わって、人間は土地を大幅に失ったけど」
「待て。そんな急に色々言われても混乱する。一つずつゆっくりと説明してくれ。まずそのトリフォール遠征軍ってのはなんだ?」
「この世界で大きな力を持っている宗派の一つよ。彼らはトリフォールという天使を宗主として崇めてるの。貧しい民を救うために国に立ち向かい、施しをしていると言えば聞こえはいいけれど、やってる事は国との癒着。国から横流ししてもらった食料を信徒に分け与える事によって勢力を強める。国は信徒から巻き上げた金を得る。最低よ」
ホーリーは吐き捨てるように言った。
事実、トリフォール会はそうして着々と信徒を増やし続けてきた。そうして、多くの国々と関わりを持つ内に、トリフォール会はその勢力を伸ばし、大半の国が逆らえないようになってしまっていた。しかし、それも先の大戦以前の話だが。
魔物との大規模戦争に敗退したトリフォール会は、それを契機に影響力を大きく失っていた。しかし、そうした事があって未だ、一大宗教の一角を担っていた。
「天使? ってことはあれだろ。トリフォールって奴はお前の仲間なんじゃないのか? ずいぶんと嫌ってるみたいだけど」
「当たり前よ。あんなごうつくばりで自分の事しか考えてない強引な奴。あいつはあまりの悪行の末、アークエンジェルへと身をやつしたわ。まったく、なんでそんな奴が人間に崇めらてるんだか。崇める相手なんて他にも沢山いるでしょうに」
「なんか……天使にも色々あるんだな」
「わかってくれて嬉しいわ。なんにせよ、一々説明してたらキリがないからこれをプレゼントするわ。ハウトゥーファンタジー。喜びなさい、チートアイテムよ」
ホーリーは右の手のひらに光を出したかと思えば、次の瞬間には一冊の分厚い本を持っていた。そして、そのままの流れで本を公平に見えるように顔の横に差し出した。
後ろから差し出された本をちらりと一瞥した公平は、本に対する疑問を口にした。すると、スラスラとホーリーはハウトゥーファンタジーに対する説明を始めた。
この世界の知識、技術、常識などが書いてある事。この世界の地図代わりにもなる事。そして、何よりも公平が驚いたのは、この本はある程度未来の事が書いてあるという事だった。
「すごいじゃん。未来がわかるとかやりたい放題じゃん」
「そう考えるのは早計よ。あくまでもある程度だから、あんたがとる行動や不確定な要素が絡んでくると、途端に別の事が起こる。参考程度に考えるのが一番ね。後、あんたの成長に伴ってこの本は様々な恩恵をあんたに与えてくれる。ただし、使い方を誤れば火傷する程度じゃ済まないから、気をつけなさい」
なんていう会話をしていると、ホーリーが止まるよう言った。二人の少し先に見える粗末な城壁に囲まれた国が、目指す目的地のようだ。
「自転車はそこの藪の中に隠しておきなさい。この世界ではまだ開発されていないものだから、見つかると面倒よ」
ならなんでチャリを使わせたんだ、という言葉を飲み込んで、公平は言われるままに藪の中にチャリを隠した。
「始まりの国、スフィーダよ。まずは、あそこの国を救ってもらうわ」
何もかもが急で強引だったが、少しずつ環境の変化に適応してきた公平は、特段不平不満を言わなかった。むしろ、少しのワクワクを伴ってホーリーと共にスフィーダに向かって歩き始めた。
「空飛べるんだからわざわざ荷台に乗ることもないだろうに」
「いーの。それに、こうしていると青春って感じがしない? 微妙な距離間の幼馴染とかお互いの事を好きに思ってるのに告白に踏み切れない青い男女がじゃれる、そんな感じ」
ホーリーはそう言って公平に軽く抱きついて彼の脇腹をくすぐった。
「おま、ちょ! やめろって! 危ないだろ」
「うりうり~」
公平は倒れそうになる自転車を気合で持ち直した。そして、今だにくすぐる手を止めないホーリーに、再三やめるよう懇願した。それでも一向にやめる気配がないのを感じ取った公平は、ハンドルをしっかりと握った後、わざと大きめの石の上を通った。
そうして生じた衝撃がもろに荷台に座るホーリーを襲った。ホーリーは金属製の荷台にしたたかに尻をぶつけた。
「痛! なんて事すんのよ。可愛いホーリーちゃんのプリチーなお尻にあざが出来ちゃったらどうすんのよ」
「うっせ。やめろって言ってるのにいつまでもくすぐってるからだろ」
「そんな事言って、ちょっと楽しんでたくせに」
からかうように言うホーリーに、公平は少し納得してしまった。彼女の言う通り、公平は楽しんでいたのだ。それもそのはず、どれだけ願っても訪れなかったシチュエーションを今まさに体験していたのだから。先程までの二人は、傍目から見ればホーリーの言う通り、学生が放課後夕日を背に街を走っている、まさにそんな表現がピタリと当てはまっていた。二人の服装が学生服ではない事と、ホーリーの背中に羽が見える事を除いて、だが。
公平はそんな心情を悟られないように、早々に話題を切り替える事にした。
「そういや、さっき、ヒロインがどーたらとかチートアイテムがどーたらとか言ってたけど、あれなんだ? それに、世界を救えって言われても俺パンピーだし」
「ああ、あれね。そのまんまよ。この世界はいわゆるファンタジーRPGなの。公平の世界で言うと、中世ヨーロッパが一番近いかしら。宗教を中心に人々は生活してるわ。当然、魔女狩りも行われているし、国の大半は王国よ。それに加えて魔物とよばれるモンスターも生息してるわ。過去に何度かトリフォール遠征軍による魔物と人間の大規模戦争も行われているわ。もっとも、人間側の大敗で戦争は終わって、人間は土地を大幅に失ったけど」
「待て。そんな急に色々言われても混乱する。一つずつゆっくりと説明してくれ。まずそのトリフォール遠征軍ってのはなんだ?」
「この世界で大きな力を持っている宗派の一つよ。彼らはトリフォールという天使を宗主として崇めてるの。貧しい民を救うために国に立ち向かい、施しをしていると言えば聞こえはいいけれど、やってる事は国との癒着。国から横流ししてもらった食料を信徒に分け与える事によって勢力を強める。国は信徒から巻き上げた金を得る。最低よ」
ホーリーは吐き捨てるように言った。
事実、トリフォール会はそうして着々と信徒を増やし続けてきた。そうして、多くの国々と関わりを持つ内に、トリフォール会はその勢力を伸ばし、大半の国が逆らえないようになってしまっていた。しかし、それも先の大戦以前の話だが。
魔物との大規模戦争に敗退したトリフォール会は、それを契機に影響力を大きく失っていた。しかし、そうした事があって未だ、一大宗教の一角を担っていた。
「天使? ってことはあれだろ。トリフォールって奴はお前の仲間なんじゃないのか? ずいぶんと嫌ってるみたいだけど」
「当たり前よ。あんなごうつくばりで自分の事しか考えてない強引な奴。あいつはあまりの悪行の末、アークエンジェルへと身をやつしたわ。まったく、なんでそんな奴が人間に崇めらてるんだか。崇める相手なんて他にも沢山いるでしょうに」
「なんか……天使にも色々あるんだな」
「わかってくれて嬉しいわ。なんにせよ、一々説明してたらキリがないからこれをプレゼントするわ。ハウトゥーファンタジー。喜びなさい、チートアイテムよ」
ホーリーは右の手のひらに光を出したかと思えば、次の瞬間には一冊の分厚い本を持っていた。そして、そのままの流れで本を公平に見えるように顔の横に差し出した。
後ろから差し出された本をちらりと一瞥した公平は、本に対する疑問を口にした。すると、スラスラとホーリーはハウトゥーファンタジーに対する説明を始めた。
この世界の知識、技術、常識などが書いてある事。この世界の地図代わりにもなる事。そして、何よりも公平が驚いたのは、この本はある程度未来の事が書いてあるという事だった。
「すごいじゃん。未来がわかるとかやりたい放題じゃん」
「そう考えるのは早計よ。あくまでもある程度だから、あんたがとる行動や不確定な要素が絡んでくると、途端に別の事が起こる。参考程度に考えるのが一番ね。後、あんたの成長に伴ってこの本は様々な恩恵をあんたに与えてくれる。ただし、使い方を誤れば火傷する程度じゃ済まないから、気をつけなさい」
なんていう会話をしていると、ホーリーが止まるよう言った。二人の少し先に見える粗末な城壁に囲まれた国が、目指す目的地のようだ。
「自転車はそこの藪の中に隠しておきなさい。この世界ではまだ開発されていないものだから、見つかると面倒よ」
ならなんでチャリを使わせたんだ、という言葉を飲み込んで、公平は言われるままに藪の中にチャリを隠した。
「始まりの国、スフィーダよ。まずは、あそこの国を救ってもらうわ」
何もかもが急で強引だったが、少しずつ環境の変化に適応してきた公平は、特段不平不満を言わなかった。むしろ、少しのワクワクを伴ってホーリーと共にスフィーダに向かって歩き始めた。
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