嫁を育てて世界を救え!~異世界転移物語~

妖怪せんべえ

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3話 初めてのお嫁さん2

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「あの……すみません。これはどうやって食べるのですか? 私、無知なもので……」

 ああ、そうか。ペットボトルやコンビニおにぎりはこの世界に存在しないもんな。ちょっと配慮に欠けていたか。

「ここを引っ張って、横にずらすと……ほら、おにぎりが出てきた」

「プレハブ王国の食べ物ってすごいんですね。いただきます」

 プレハブ王国という単語に思わず吹き出しそうになった。今更ながらふざけた名前をつけたものだ。誰もツッコんこないという事は、多分この世界にはプレハブって単語も存在しないんだろうな。

「おいしいです。まともな食事を取ったのは半年ぶりです」

 美味しそうにおにぎりを食べるアンジェを見て、ふと思った。飲んだことのない人に炭酸飲料を飲ませたらどうなるのか。一度湧き出た疑問は解決するまで消えない。俺はライフガードを手に取った。

「アンジェ、元気の出る飲み物だ。飲んでみてくれ」

「ありがとうございます。……んく……ゴホっ! ゴホっ!」

 やっぱりむせるんだな。飲んだことのない人に炭酸飲料を飲ませたらどうなるのか。その疑問に今答えが出た。

「な、なんですか! これ! シュワーってしましたよ!?」

「ああ、うん。それは炭酸飲料っていって飲んでみた通りシュワーってする飲み物。慣れたらおいしいよ。毒とかじゃないから安心して」

「そうなんですか。このようなものは初めて飲みました」

「だろうね」

 だってこっちの世界には無いものだもん。というか今気付いたけど、ぷっくりとしたピンク色の唇からライフガードが垂れていてすっげえエロい。

 ん? ぷっくりとした唇? おかしい。おかしいぞ。さっきまで明らかに栄養失調で肉なんてついてなかったのに、唇が艷やかになっている。頬の血色も良くなって見える。栄養失調の人間ってこんなにすぐ肉付くもんなの?

「ありがとうございました。とっても美味しかったです」

「あのさ、鎧脱いでくれない?」

「ええ!」

 さっきはあんなにも顔色が悪かったのに、今は頬が赤い。どう考えてこれは普通じゃない。いくらなんでも回復が早過ぎる。食べてまだ10分も経ってないんだぞ。

「あ、あの。せめて湯浴みをしてから……」

「いいから早く」

「は、はい……」

 アンジェはガシャガシャと音を立ててヒビの入った鎧を脱いでいった。鎧の下には所々破れた黒い布製のインナーアーマーを着ていた。

「触るよ」

 そう言って軽く二の腕とあばら、太ももを触った。やっぱりだ。これは栄養失調の人の体なんかではない。言ってしまえば極限までダイエットした女の人の体のような感じだ。けして骨と皮だけの体じゃない。

「あ、あの……」

 アンジェはもじもじとして恥ずかしそうに顏を赤くしていた。いきなり女の子の体を触るのはマナー違反だったな。

「ああ、ごめん。あのさ、聞いていい? なんかさっきと比べて随分元気になったように感じられるんだけど気のせい?」

「いえ、公平様にご飯を頂きましたから。そのおかげかと」

「いくらなんでも回復が早過ぎるように感じるんだけど、この国の人は皆そうなの?」

「ご存知かもしれないですが、私達戦乙女、つまりヴァルキリーは神族に分類されるんです。私達は人よりも体が強いので、栄養の吸収なんかも早いんです。だから今頂いた分でも体をある程度回復するには十分なんです」

 忘れてた。ここは剣と魔法の世界だった。魔法があれば神族の1人や2人は当然いるよな。きっとエルフとかドワーフもいるんだろうなあ。まあ、今はとりあえず神族に関する情報をアンジェから聞くか。嫁さんの事何も知りませんじゃ話しにならない。

「それはつまりもっと沢山食べれば強くなるって事?」

「そうですね。私が今現在持っているポテンシャルを引き出すことが出来るはずです」

「そのポテンシャルってのは――」

 と、そこまで言って服の袖を小さな手に引かれた。振り返るとメアリーがハウトゥーファンタジーを指さしていた。

「どうしたん?」

「ここを見て」

『戦乙女アンジェ 好感度120 レベル3 育成度20』

「こーへーがアンジェにご飯をあげたら、好感度って所と育成度ってとこが増えたの」

 え、これご飯あげるだけでも育てた事になるの? 条件緩すぎじゃね? 作物大量生産してあげればいいだけじゃん。

「こーへーについても書かれてるわよ」

『里中公平 育成能力10 経験値100』

「お、こっちは比較的わかりやすいな。アンジェの方の育成度とかってのはなんなんだ?」

「えーと、待ってね……あった! ここに書いてるわ」

『嫁について』

『好感度はそのまま公平に対する好感度です。一定の値に達するか、条件を満たすと好感度は愛情度へと変わります。愛情を持つに至った嫁は後述の育成度と合わせてあなたの強力な助けとなってくれるはずです』

『レベルの上限はありません。しかし、安心してください。敵とのレベルに大きな差があるからといって勝てない訳ではありません。大事なのはあなたへの想いと育成度です。あなたへの想いが強ければ嫁は本来持っているポテンシャルを十分に発揮出来ます。そうすればあなたの嫁はレベルの差など軽々と乗り越えてくれます』

『育成度は文字通りその嫁の育成度合いです。これは嫁のポテンシャルに関わってきます。嫁のポテンシャルに上限はありません。育成度が高ければ高い程嫁の能力上限は上がります。ですが、上がるだけです。繰り返しますが、大事なのはあなたへの想いです。想いさえ強ければメイクドラマが生まれるかもしれません』

 長い上に地味にわかりづれえ。これ絶対マスクデータみたいなのあるパターンだろ。とりあえずは大事なのは好感度。これだけは覚えておこう。

「次は……ここね。こーへーの事が書いてあるわよ」

『里中公平について』

『育成能力はあなたにとってのレベルです。これが上がれば、あなたは固有スキルを獲得出来るなど、この世界を生きる上で有利になります。また、育成能力が高ければ、嫁と仲良くなりやすい他、希少価値の高い嫁との出会いの場が増えます』

『経験値はあなたにとってのお金であり、嫁への貢物みつぎものでもあります。育成能力向上によって獲得した固有スキルの使用には、全て経験値を使います。また、嫁に経験値を貢ぐ事によって、嫁のレベルと育成度が上がります』

『他にもあなたの成長に伴って、様々な項目が登場していきます』

 いいね。段々とらしくなってきた。当面はアンジェの好感度向上と俺の育成能力向上に重点を置こう。それと平行してスフィーダ王国を籠絡ろうらくする。

「あの、もしかして私は邪魔でしょうか?」

 アンジェが俺の肩に手を触れながらおずおずと聞いてきた。

「あ、ごめん。全然邪魔じゃないよ。色々とワケありでさ。もう少し落ち着いたらアンジェにもしっかり話すから、許して」

「あ、いえ。すみません。配慮が足りませんでした」

 今全部を話してもいい気がしないでもないけど、この世界の事をもう少し理解してからの方がいいだろう。今までの常識は捨てる必要がある。

「ところで、そちらの妖精に名前はあるんですか?」

「メアリーって言うんだ。俺の相棒。仲良くしてあげて」

「メアリーよ。アンジェ、頑張ってこーへーに尽くすのよ?」

「はい。言われずともそのつもりです。それにしても、公平様はとても身分の高い方なんですね」

「ん? どういう事?」

「公平様には苗字もありますし、妖精も連れていますから」

 どういう事だ? この世界には独自の身分制度があるって事か? 

 こういう時こそハウトゥーファンタジーの出番だ。そう思ってメアリーに頼もうと思ったら既にメアリーはハウトゥーファンタジーを開いていた。

「なんかわかった?」

「苗字を持てるのは一部の王族と貴族だけ、妖精を連れられるのは選ばれた人のみ」

 なるほど、つまり俺はこの世界でかなりの身分にいるという事か。これは……場合によっては不利な状況を招くぞ。まずいな。対策を考えるか。

「まあいいや。とりあえずはそうしておこう。アンジェ、君は今日付けで俺のものになったから。俺の側を離れないで、俺の事を守ってくれ」

「はい。喜んで」

 そう言って微笑んだアンジェはやはり、俺の見立て通りかなりの美人だった。もっと美味しいものを食べさせていい格好をさせてあげなきゃな。頑張らねば!

「そしたら……とりあえずアンジェはお風呂に入ってきな」

「え……! やっぱり……わ、わかりました」

 まさかとは思うが今の反応は……。いや、深くは考えないでおこう。

「一難去ってまた一難ねー。メアリーまだ子供つくるには早いと思うな」

「いや、今はまだしないからね?」

 そう、今は。
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