魔導姫戦記

森乃守人

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本編 第一部

ep.8 魔導師の塔

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アカデミーにミシェルが姿を現さなかった事に、ラグナは嫌な予感しかしなかった。
ふと、ランの言葉を思い出す。

『あんたの国にも、この子を探してる奴が居るみたいね。』



教師に尋ねてみた。
「ミシェル君なら、生き別れたご両親が見つかったそうで、故郷に帰ったよ。」

嘘だ。
ミシェルが帝国の皇女・ルーシェと別人である事は判明したが、それでもミシェルの出自が普通の人とは違うであろう事は、ラグナも薄々気付いていた。
教師が騙されているのか、嘘をつかされているのかはわからないが、大きな権力が働いていると感じた。

(父さんはこの国の議長…
まさかとは思うけど、何か知ってるんじゃ…?)



翌日、ラグナはアカデミーに行かず、父・オーディンを尾行してみる事にした。

朝、官邸に出勤するオーディン。
何の変哲も無い行動だ。
官邸に忍び込んで探索してみるが、怪しい所は何も無い。
隠れて議長室を見張っていると、衛兵を伴って何処かへ行く様だ。



再び尾行すると、郊外の深い森の奥にある塔に辿り着く。
薄暗い森の中でその塔は、ヒノモト国で見た様な七色の光を放っていた。
その警備は官邸以上に厳重で、とても忍び込めそうもない。
…だが、しばらくすると、衛兵達が慌ただしく塔内に入って行った。
内部で何か問題が発生したのだろうか?
外の警備が手薄になり、その機を逃さず忍び込む。
どうやら塔内のどこかで異形化奇病メタモルフが暴れているらしい。
しかし、あれだけ厳重な警備の中、一体どこからどうやって侵入したのだろう?
さておき、混乱に乗じて塔内を探索する。

塔内には騎士達の他に、魔法を使う人間 …『魔導師』が居た。
革命戦後、火力・電力・治水などが、魔法の力によって多くの人々に普及したが、それは、ここで魔導師達によって供給されているのだ。

それにしても、この魔導師達…
騎士達との関係性から察するに、皆、身分の高くない出身の様な印象を受ける。
なかなかに酷い扱われようだ。
そして、廃人の如く覇気がない。
その様は、何処かで見た事がある様な気がする。



最上階の部屋に入ると、白衣の男と、ガラス張りの小部屋に閉じ込められたミシェルとカーバンクルが居た。
男は背を向けたまま振り返りもせず言った。
「オーディン君、いかに君とてノックぐらいはしたまえ。
異形化奇病メタモルフ化した者の廃棄処分は済んだかね?
…ッ⁉︎」

咄嗟に背後から、手にした槍の石突で後頭部を殴り、気絶させる。

ラグナ「ミシェルさん、大丈夫ですか⁉︎」
ミシェル「えぇ、私は大丈夫!」
「下がってて!」
ラグナはそう言ってガラスを叩き割ると、自らによって気絶させられ床に倒れた男の顔を見て気付く。
「この人は…アリハマ博士?」

そう、グレゴリウス王家だけのものとされた魔法の力を、革命後の世界に普及させた研究者である。

ラグナ「とにかくここを出よう!」
ミシェル「えぇ!」



各フロアには牢の様な部屋がある。
塔を登る時には閉ざされていたのだが、異形化奇病メタモルフが破壊したのだろうか?
全て開けられていた。
そして塔内は、おびただしい数の異形化奇病メタモルフで溢れていた。
牢に閉じ込められていたのか?

大混戦の中、2人は脱出する。



ラグナ「…ごめん、ミシェルさん。
博士は、父さんの名前を言ってた…
父さんも関わってたんだ…」
ミシェル「…ラグナ君が謝ることないよ。
助けてくれてありがとう。」
ラグナ「…もう、ヴァルホル邸には帰らない!
アースガルドにも居られない…」
ミシェル「…じゃあ…ランさん達の所に行ってみる?」
ラグナ「えっ⁉︎
…テ、テロリスト達の所に?」
ミシェル「あの2人は良い人よ。
ラグナ君も気付いてるんじゃない?」
ラグナ「いや…まぁ…確かに、そんなに悪い人では…」
ミシェル「ね?行きましょう?」

かくして、2人の逃避行が始まる。





続く…
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