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本編 第一部
ep.9 奇病の正体
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ヨトゥンヘイムの街はずれ…
シャールヴィの妹・ロスクヴァが、メタモルフ発症者と思しき一角肉食兎の群に襲われていた。
そこへ現れた1人の魔導師が、魔法で一角肉食兎を焼き払う。
ロスクヴァ「…すご~い!
おじちゃん、ありがとう!」
魔導師「どういたしまして。
お嬢ちゃん、パパとママは?」
ロスクヴァ「あたしが小さい時、天国に行っちゃったの…」
そう、実はこの兄妹の両親も他界しているのである。
ちなみに、ソールは実の祖父ではない。
魔導師は、一瞬ニヤリとした表情を隠し、言った。
「それは、すまない事を聞いたね。
ところでお嬢ちゃん、魔法使いになりたくないかい?」
ロスクヴァ「なれるの?」
「簡単さ。
おじちゃんについておいで。」
魔導師はそう言うとロスクヴァを連れ、何処かへ向かう。
一方、ラン・リンのアジトを目指すラグナとミシェル。
旅路の途中、ヨトゥンヘイムに立ち寄ると、シャールヴィが慌てた様子で走り回っていた。
ラグナ「シャールヴィ、どした?」
シャールヴィ「あ、ラグ兄・ミシェル姐!
ロスクヴァが迷子になっちゃったみたいなんだ。」
ミシェル「大変!
私達も探しましょう?」
ラグナ「うん、君には世話になったからね。」
シャールヴィ「ありがとう、助かるよ!」
手分けして街の人々に聞き込みした末、街から離れた場所で建造中の塔に、年格好の似た幼女が、黒いローブの男と一緒に入って行ったと言う情報を得た。
3人は合流してそこへ向かう。
建造中の塔・ビヴロスト…
内部には、祭壇に祀られた宝石の様な鉱物の結晶があり、それに向かって長蛇の列が出来ていた。
魔導師がロスクヴァに言う。
「ここで順番に並んで待つんだ。
あの宝石に触れば、お嬢ちゃんも魔法使いになれる。」
塔に辿り着いたラグナ達3人。
ミシェル「この塔も…似てる…」
ラグナ「これも、魔法を供給する為の施設…?
…って、あッ、待て!」
塔を警備する衛兵の前に、シャールヴィが飛び出した。
「ロスクヴァをどこにやったんだよ⁉︎」
兵士「何だ?お前は。」
シャールヴィ「ここにオイラの妹が居るんだろ⁉︎」
兵士「魔導師候補の事か?
…よし、妹の所に連れて行ってやろう。」
シャールヴィは塔の中に入って行ってしまった。
「よ…よし!」
何か考えついたのか、ラグナはそう呟くと、アカデミーの学生証を取り出し、衛兵の所へ行く。
兵士「何だ?お前は。」
「ぼ…僕は、アースガルド議長・オーディン=ヴァルホルの息子・ラグナです。」
ラグナはそう言って学生証を見せた。
今や家出同然のラグナにとって、リスクのある行動だったが、隣国にまでは伝わっていない様だ。
兵士「こ、これは大変失礼致しました!」
ラグナ「今入って行った少年、ソール議長のお孫さんなんですが…」
「何ですと⁉︎
し、少々お待ちください!」
そう言うと兵士は、慌てて塔の中に入って行った。
一方、塔内でシャールヴィは、長蛇の列に並ばされていた。
兵士「ここに並んで待ってろ。
そのうち会えるだろうさ。」
…だが、列は徐々に進むものの、一向に変わらない状況にシャールヴィは痺れを切らし、列を外れてロスクヴァを探そうとする。
兵士「コラァ、列を乱すな!」
シャールヴィ「何だよ!
オイラは迷子の妹を探しに来ただけなんだ!」
兵士「命令を聞けんなら、実力を行使する!」
シャールヴィ「なんでオイラが命令されなきゃなんないんだよ!
やるかぁ⁉︎」
騒動が起き、続々と集まって来た兵士達を、持ち前の怪力で叩きのめすシャールヴィ。
兵士「くそッ…ま、魔導師どもを呼べ!」
呼び出された魔導師達は、ミシェルが囚われていた塔でラグナが見た者達同様、やはり廃人の様だった。
シャールヴィ「うわっ、何だコイツら⁉︎」
そこへ門番の兵士と、騒ぎに乗じて侵入したラグナ・ミシェルが駆け付ける。
兵士達
「待て!
その方はソール議長のお孫さんだ!」
「な…何だと⁉︎
(魔導師に向かって)
おい、やめろ!」
だが、魔導師の1人が正気を失い、兵士の命令を聞かないどころか、見境なく魔法攻撃をし始める。
ラグナ・ミシェル・シャールヴィは3人で魔導師を止めた。
その時である。
「が…がグガガガ…‼︎」
倒れた魔導師が、うめき声とも悲鳴ともつかない声を上げて苦しみ出した。
シャールヴィ「お…おい、大丈夫かい?
ちょっとやり過ぎたかな…?」
「こ、これは…」
「ま…まずいぞ!」
兵士達がうろたえだした次の瞬間、その魔導師の背中を突き破って、無数の手が生えてきた。
ミシェル「きゃあぁぁ‼︎」
シャールヴィ「うげえぇッ、これって…!」
ラグナ「…異形化奇病…!」
その時ラグナは思い出した。
何処かで見た事がある気がしていた、魔導師達の廃人の如き様…
ゾンビと呼ばれる、異形化奇病発症直前の症状と同じだったのだ。
発症する瞬間を初めて目の当たりにした3人は、大いに衝撃を受けるも、協力してこれを撃退する。
シャールヴィ「早くロスクヴァを見つけて、こんなとこ出ようぜ。」
ラグナ「探させてもらいますよ?」
兵士「は…はいッ!」
列の前方、祭壇の鉱石まであと数人という所にロスクヴァは居た。
シャールヴィ「ロスクヴァ、帰るぞ!」
ロスクヴァ「えぇー⁉︎
もうちょっとで魔法使いになれるのにー!」
兵士「いけません、貴族が魔導師になどなっては…!」
ラグナ「どう言う事です?」
兵士「そ…それは…
とッ、ともかく、議長の縁者とは言え部外者はお帰りくださいッ!」
かくして、無事ロスクヴァを見つけ出した3人はヨトゥンヘイムへと戻る。
ビルスキルニル邸門前…
シャールヴィ「ありがとう、助かったよ。
色々あって疲れたろ?
ウチで休んで行きなよ。」
ラグナ「いや…実は僕、家出してるんだ。
ソールさんに会って、父さんに居所知らされたらマズイから…」
シャールヴィ「駆け落ちってヤツ?
ラグ兄、意外にやるなぁ!
爺ちゃんなら心配ないさ。
力になってくれるかもしれないよ?」
かくして、ソールと対面するラグナ達。
ソール「君がオーディンのせがれ・ラグナ君か。
して、そちらは?」
ミシェル「ラグナ君と同じアカデミーの、ミシェルと言います。」
シャールヴィ「帝国のお姫様と間違われて、拐われた子だぜ。」
ソール「そうか、君が…災難だったのぅ。
孫達が世話になった。礼を言おう。
…ラグナ君、聞けば家出しとるそうだな。
父上と何があった?」
シャールヴィ「駆け落ちしたんだよな?」
ラグナ「ちょッ…シャールヴィ!
(咳払いをしてソールを見る)
…ミシェルさんと帝国の姫が別人とわかったのに、父さんとアリハマ博士はミシェルさんの身柄を拘束したんです。」
ソール「何と…どういう事じゃ…?」
ラグナ「…あ、あの…ソールさんは魔法について、どこまでご存知ですか?」
ソール「…どこまで、とは?」
ラグナ「僕は今まで、魔法の便利さに甘んじながら、それが何処からどうやって来るのか、考えた事ありませんでした。
でも、初めて見た魔法使い達は、みんな廃人みたいで…」
ミシェル「そして…魔法使いの1人が、私達の目の前で異形化奇病になったんです。」
シャールヴィ「そうそう、あと、貴族は魔法使いになっちゃダメだって言ってた。」
ソール「…それはつまり、異形化奇病化の原因が、魔法を使う事にあるかも知れんと言う事か…
実は、魔法の運用については、オーディンとアリハマ博士に一任されとって、各国の貴族達もよく知らんのだ。
君の前で言うのもはばかられるが、オーディンは昔から腹の底が読めん男でな…
して、これからどうするつもりじゃ?」
ミシェル「最初に私を拐った人達に会って見ようと思います。」
ソール「何と、テロリスト達に⁉︎
危険じゃないのかね?」
ミシェル「あの人達は、そんなに悪い人達じゃないと思うんです。
それに、何か知ってると…」
ソール「…共に過ごした君がそう言うなら、そうなのかも知れんな…
ワシはワシの立場で出来る事をしてみよう。」
シャールヴィ「…爺ちゃん。
オイラもラグ兄達と行きたい!
爺ちゃんに鍛えられたオイラだ、役には立てるぜ?」
ソール「…そうだな。
力になってあげなさい。
くれぐれも気をつけてな。
(ラグナを見て)
ラグナ君、シャールヴィをよろしく頼む。」
シャールヴィ「やったぜ!」
ラグナ「ありがとうございます!」
続く…
シャールヴィの妹・ロスクヴァが、メタモルフ発症者と思しき一角肉食兎の群に襲われていた。
そこへ現れた1人の魔導師が、魔法で一角肉食兎を焼き払う。
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おじちゃん、ありがとう!」
魔導師「どういたしまして。
お嬢ちゃん、パパとママは?」
ロスクヴァ「あたしが小さい時、天国に行っちゃったの…」
そう、実はこの兄妹の両親も他界しているのである。
ちなみに、ソールは実の祖父ではない。
魔導師は、一瞬ニヤリとした表情を隠し、言った。
「それは、すまない事を聞いたね。
ところでお嬢ちゃん、魔法使いになりたくないかい?」
ロスクヴァ「なれるの?」
「簡単さ。
おじちゃんについておいで。」
魔導師はそう言うとロスクヴァを連れ、何処かへ向かう。
一方、ラン・リンのアジトを目指すラグナとミシェル。
旅路の途中、ヨトゥンヘイムに立ち寄ると、シャールヴィが慌てた様子で走り回っていた。
ラグナ「シャールヴィ、どした?」
シャールヴィ「あ、ラグ兄・ミシェル姐!
ロスクヴァが迷子になっちゃったみたいなんだ。」
ミシェル「大変!
私達も探しましょう?」
ラグナ「うん、君には世話になったからね。」
シャールヴィ「ありがとう、助かるよ!」
手分けして街の人々に聞き込みした末、街から離れた場所で建造中の塔に、年格好の似た幼女が、黒いローブの男と一緒に入って行ったと言う情報を得た。
3人は合流してそこへ向かう。
建造中の塔・ビヴロスト…
内部には、祭壇に祀られた宝石の様な鉱物の結晶があり、それに向かって長蛇の列が出来ていた。
魔導師がロスクヴァに言う。
「ここで順番に並んで待つんだ。
あの宝石に触れば、お嬢ちゃんも魔法使いになれる。」
塔に辿り着いたラグナ達3人。
ミシェル「この塔も…似てる…」
ラグナ「これも、魔法を供給する為の施設…?
…って、あッ、待て!」
塔を警備する衛兵の前に、シャールヴィが飛び出した。
「ロスクヴァをどこにやったんだよ⁉︎」
兵士「何だ?お前は。」
シャールヴィ「ここにオイラの妹が居るんだろ⁉︎」
兵士「魔導師候補の事か?
…よし、妹の所に連れて行ってやろう。」
シャールヴィは塔の中に入って行ってしまった。
「よ…よし!」
何か考えついたのか、ラグナはそう呟くと、アカデミーの学生証を取り出し、衛兵の所へ行く。
兵士「何だ?お前は。」
「ぼ…僕は、アースガルド議長・オーディン=ヴァルホルの息子・ラグナです。」
ラグナはそう言って学生証を見せた。
今や家出同然のラグナにとって、リスクのある行動だったが、隣国にまでは伝わっていない様だ。
兵士「こ、これは大変失礼致しました!」
ラグナ「今入って行った少年、ソール議長のお孫さんなんですが…」
「何ですと⁉︎
し、少々お待ちください!」
そう言うと兵士は、慌てて塔の中に入って行った。
一方、塔内でシャールヴィは、長蛇の列に並ばされていた。
兵士「ここに並んで待ってろ。
そのうち会えるだろうさ。」
…だが、列は徐々に進むものの、一向に変わらない状況にシャールヴィは痺れを切らし、列を外れてロスクヴァを探そうとする。
兵士「コラァ、列を乱すな!」
シャールヴィ「何だよ!
オイラは迷子の妹を探しに来ただけなんだ!」
兵士「命令を聞けんなら、実力を行使する!」
シャールヴィ「なんでオイラが命令されなきゃなんないんだよ!
やるかぁ⁉︎」
騒動が起き、続々と集まって来た兵士達を、持ち前の怪力で叩きのめすシャールヴィ。
兵士「くそッ…ま、魔導師どもを呼べ!」
呼び出された魔導師達は、ミシェルが囚われていた塔でラグナが見た者達同様、やはり廃人の様だった。
シャールヴィ「うわっ、何だコイツら⁉︎」
そこへ門番の兵士と、騒ぎに乗じて侵入したラグナ・ミシェルが駆け付ける。
兵士達
「待て!
その方はソール議長のお孫さんだ!」
「な…何だと⁉︎
(魔導師に向かって)
おい、やめろ!」
だが、魔導師の1人が正気を失い、兵士の命令を聞かないどころか、見境なく魔法攻撃をし始める。
ラグナ・ミシェル・シャールヴィは3人で魔導師を止めた。
その時である。
「が…がグガガガ…‼︎」
倒れた魔導師が、うめき声とも悲鳴ともつかない声を上げて苦しみ出した。
シャールヴィ「お…おい、大丈夫かい?
ちょっとやり過ぎたかな…?」
「こ、これは…」
「ま…まずいぞ!」
兵士達がうろたえだした次の瞬間、その魔導師の背中を突き破って、無数の手が生えてきた。
ミシェル「きゃあぁぁ‼︎」
シャールヴィ「うげえぇッ、これって…!」
ラグナ「…異形化奇病…!」
その時ラグナは思い出した。
何処かで見た事がある気がしていた、魔導師達の廃人の如き様…
ゾンビと呼ばれる、異形化奇病発症直前の症状と同じだったのだ。
発症する瞬間を初めて目の当たりにした3人は、大いに衝撃を受けるも、協力してこれを撃退する。
シャールヴィ「早くロスクヴァを見つけて、こんなとこ出ようぜ。」
ラグナ「探させてもらいますよ?」
兵士「は…はいッ!」
列の前方、祭壇の鉱石まであと数人という所にロスクヴァは居た。
シャールヴィ「ロスクヴァ、帰るぞ!」
ロスクヴァ「えぇー⁉︎
もうちょっとで魔法使いになれるのにー!」
兵士「いけません、貴族が魔導師になどなっては…!」
ラグナ「どう言う事です?」
兵士「そ…それは…
とッ、ともかく、議長の縁者とは言え部外者はお帰りくださいッ!」
かくして、無事ロスクヴァを見つけ出した3人はヨトゥンヘイムへと戻る。
ビルスキルニル邸門前…
シャールヴィ「ありがとう、助かったよ。
色々あって疲れたろ?
ウチで休んで行きなよ。」
ラグナ「いや…実は僕、家出してるんだ。
ソールさんに会って、父さんに居所知らされたらマズイから…」
シャールヴィ「駆け落ちってヤツ?
ラグ兄、意外にやるなぁ!
爺ちゃんなら心配ないさ。
力になってくれるかもしれないよ?」
かくして、ソールと対面するラグナ達。
ソール「君がオーディンのせがれ・ラグナ君か。
して、そちらは?」
ミシェル「ラグナ君と同じアカデミーの、ミシェルと言います。」
シャールヴィ「帝国のお姫様と間違われて、拐われた子だぜ。」
ソール「そうか、君が…災難だったのぅ。
孫達が世話になった。礼を言おう。
…ラグナ君、聞けば家出しとるそうだな。
父上と何があった?」
シャールヴィ「駆け落ちしたんだよな?」
ラグナ「ちょッ…シャールヴィ!
(咳払いをしてソールを見る)
…ミシェルさんと帝国の姫が別人とわかったのに、父さんとアリハマ博士はミシェルさんの身柄を拘束したんです。」
ソール「何と…どういう事じゃ…?」
ラグナ「…あ、あの…ソールさんは魔法について、どこまでご存知ですか?」
ソール「…どこまで、とは?」
ラグナ「僕は今まで、魔法の便利さに甘んじながら、それが何処からどうやって来るのか、考えた事ありませんでした。
でも、初めて見た魔法使い達は、みんな廃人みたいで…」
ミシェル「そして…魔法使いの1人が、私達の目の前で異形化奇病になったんです。」
シャールヴィ「そうそう、あと、貴族は魔法使いになっちゃダメだって言ってた。」
ソール「…それはつまり、異形化奇病化の原因が、魔法を使う事にあるかも知れんと言う事か…
実は、魔法の運用については、オーディンとアリハマ博士に一任されとって、各国の貴族達もよく知らんのだ。
君の前で言うのもはばかられるが、オーディンは昔から腹の底が読めん男でな…
して、これからどうするつもりじゃ?」
ミシェル「最初に私を拐った人達に会って見ようと思います。」
ソール「何と、テロリスト達に⁉︎
危険じゃないのかね?」
ミシェル「あの人達は、そんなに悪い人達じゃないと思うんです。
それに、何か知ってると…」
ソール「…共に過ごした君がそう言うなら、そうなのかも知れんな…
ワシはワシの立場で出来る事をしてみよう。」
シャールヴィ「…爺ちゃん。
オイラもラグ兄達と行きたい!
爺ちゃんに鍛えられたオイラだ、役には立てるぜ?」
ソール「…そうだな。
力になってあげなさい。
くれぐれも気をつけてな。
(ラグナを見て)
ラグナ君、シャールヴィをよろしく頼む。」
シャールヴィ「やったぜ!」
ラグナ「ありがとうございます!」
続く…
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