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本編 第二部
ep.32 天翔ける船
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1人連行され、ヴィマーナ船内の一室に入れられたラグナ。
「…鍵はかかってない…出られそうだぞ…!」
ラグナが扉を開けると、室外では下級兵が見張りをしていた。
「部屋にお戻り下さい、ラグナ様!」
だが、これまでの冒険で経験を積んだラグナにとって、雑兵を気絶させる事などさほど難しくはなかった。
船内を探索して程なく、兵士に守られた別の部屋を発見する。
ラグナ(そんなすぐにミシェルさんが見つかるなんて出来過ぎてるけど…でも、可能性はある。)
再び兵士を気絶させて部屋に入る。
ミシェル「ラグナ君⁉︎」
ラグナ「ミシェルさん!
何もされてませんか⁉︎」
ミシェル「私は大丈夫…!」
ラグナ「よかった…!
ランさんや、帝国の人達も来てます…!
行きましょう…!」
ミシェル「えぇ…!」
脱出経路を探索中、長い廊下の様なフロアに、獣面の巨鳥の石像が祀られた祭壇を発見した。
ラグナ「これは…聖獣…?」
「だとすれば…
(石像に向かって)
お願い、私達に力を貸して…?」
ミシェルがそう言って剣をかざすと、石像に亀裂が走り、そこから光が漏れ出した。
やがて像は砕け散って光の粒子となり、獣面の巨鳥の姿を形作る。
「我が名はシームルグ…
封印されし4枚の翼は、あと一翼の解放をもって、船を天へと導かん…」
ラグナ「…?
いつもみたいにカーバンクルに吸収されないんですね…」
ミシェル「……
シームルグ、一緒に来ては貰えないの?」
シームルグ「…我ら4柱、創造主との盟約に従いて、船の翼たるべくこれに留まるものなり…」
その時、衛兵の声が聞こえてきた。
「見つけたか⁉︎」
「いや…声が聞こえた気がしたんだが…
それにしても、何故こんな所にあんな娘を…?」
「さぁな、貴族達のお考えはわからんが、我々は言われた事をやるしかない。」
(何も知らされてないのは下級兵だからか…?
そう言えば、船内では1人も騎士団に遭ってないな…
…とにかく、いつまでもここに居て捕まる訳にはいかない…!)
ラグナ達はやむなく、聖獣を残してその場を離れた。
一方ルーシェ達も、再び長い廊下の様なフロアに、尾羽の長い鳥の石像が祀られた祭壇を発見する。
「…グレゴリウス皇女・ルーシェの名において命ず…
聖獣よ、天翔ける船の翼たるべく、その戒めを解き放たん…!」
ルーシェが石像に向かって剣をかざすと、像に亀裂が走り、そこから光が漏れ出した。
やがて像は砕け散って光の粒子となり、極彩色の鳥の姿を形作る。
それと同時に、艦内は明るく照らされ、微細な振動と共に、機械の作動音が響き渡った。
「我が名はフェニックス…
全ての翼は解き放たれた…
我ら4柱、船を天へと導かん…」
ルーシェ「…全て…解き放たれた…⁉︎」
イリア「アレ?
あともう1体いるんじゃ…?」
ザハーク「ミシェル殿によって解放された、と見るべきでしょう。
…となれば、次なる急務はこの船の制御…」
ゼル「しかしその前に姫様、少しでも休まれた方が…」
ルーシェ「…いいえ…船の封印は解かれたのです…
先を急がねばなりません…!」
やがてルーシェ達が辿り着いたフロア…
周囲の壁にはガラスの板が張り巡らされているが、窓とは違う…
外の景色など映しておらず真っ暗だが、これを覗き込むのにお誂え向きの椅子が、それぞれに設置してあった。
フロアの中央には祭壇がある。
ザハーク「殿下の持つ聖剣エクスカリバーが、かつて祀ってあった祭壇によく似ていますな。
もしやそれを突き立てれば…」
「…やってみましょう…」
ルーシェが祭壇に剣を突き立てると、真っ暗だった周囲のガラス板は、とつぜん窓の様に外の景色を映しだし、微細だった振動と作動音が強さ・高さを増すと同時に、フロア内に声が響く。
「天への道は開かれた…!」
ザハーク「おぉぉ…遂に…!
殿下、今こそ逆賊どもに裁きの鉄槌を…‼︎」
一方その頃…
ラグナ「…⁉︎
船が…動いてる?」
ミシェル「……
ラグナ君のお父様達は、私にこの船を起動させようとしてた…
他にそれが出来る人が居るとすれば…」
ラグナ「ルーシェ姫…!」
ミシェル「でも、そうだとしたら…
ルーシェ姫はこの船をどう使うのかしら…」
ラグナ「まさか新興国に『裁きの鉄槌』を⁉︎」
その時、2人の前にオーディンが立ち塞がった。
「そこまでだ、ラグナ…!」
ラグナ「と…父さん…!」
オーディン「彼女を渡せ。
そして一緒に来い、ラグナ。」
ラグナ「…僕達に構ってる場合ですか?父さん。
恐らくいま船を動かしてるのはルーシェ姫です。
帝国が船を手に入れたという事は、アースガルドにも『裁きの鉄槌』が下るかもしれないんですよ⁉︎」
オーディン「心配せずともそうはならん。」
ラグナ「…なぜ…そう言い切れるんです…?」
オーディン「お前がそれを知る必要はない。」
ラグナ「…またそうやって貴方は…‼︎」
「…知りたくば、力ずくで聞き出してみるがいい…!」
オーディンはそう言うと槍を構えた。
ラグナは槍の石突に近い所を握り、横薙ぎを繰り出すと、勢いそのまま回転して斬撃を連続する。
「確かに、そうやって遠心力を利用すれば、腕力で劣るお前でも膂力を得られる…が、動きが単調だな。」
オーディンは周期的なリズムで繰り出される斬撃の合間を縫い、刃圏の内側に飛び込んだ。
ラグナはすかさず槍を握る箇所を、石突から柄の中央寄りに持ち変え、穂先と石突による連撃に切り替える。
オーディン「…少しの間にまた研鑽を積んだ様だな…
だが、同じ武器を使う以上、腕力と熟練の差は一朝一夕では覆らんぞ。」
「(確かに、いまだ実力は父さんの方が遥かに上だ…だけど!)
…言ったはずですよ。
ミシェルさんを守る為には、どんな手も使うって…!」
ラグナがそう言って視線を送ると、ミシェルが頷く。
「…聖獣ムリアンよ、かの者に大地の防壁を!
…聖獣ユニコーンよ、かの者の刃に更なる鋭さを!」
魔法の加護を得て、ラグナに対する攻撃は威力が半減し、逆にラグナによる攻撃はその威力を増した。
ラグナ(よし、これなら何とか通用する!)
「フッ…どんな手も使う、か…
ならばこちらも忌憚は無用…!
スレイプニル、参れ!」
オーディンが合図をすると、8脚の馬が駆けつけた。
ラグナ「あれはまるで…聖獣…!
アリハマ博士が造ったのか…?」
オーディンはその馬・スレイプニルに跨り、槍を構えると、ラグナの視界から瞬時に消えた。
ラグナ「!⁉︎」
次の瞬間、背後から斬撃が襲う。
反射的に受け止め反撃を試みるも、残像を残して、再び背後から斬りかかる。
ひとしきりラグナを翻弄した後、オーディンは言う。
「もう諦めろ、ラグナ。」
「くっ…ま、まだです…!」
ラグナはそう答えると、再びミシェルに視線を送り、ミシェルもまた頷いた。
「…お願いペガサス、ラグナ君に力を貸して!」
ミシェルの言葉に呼応してカーバンクルから放たれた光は、やがて粒子となって集まり、天馬の姿を形作る。
「…盟約に従いて、主を守らんとする者に力を貸さん…」
ラグナ「よ…よし!」
ペガサスを駆る事で、スレイプニルの瞬間移動の様な動きにも対応できるようになり、加えてラグナの振るう槍は穂先から雷撃を放つ。
射程攻撃を得る事で、趨勢はラグナに傾いた。
その時、船内を照らしていた灯りが突然すべて消える。
ラグナ「な、なんだ⁉︎」
船内に声が響く。
「これより10を数えたのち、裁きの鉄槌が下される…
船内の者は衝撃に、艦橋の者は加えて閃光に備えよ…
10・9・8…」
ラグナ「裁きの鉄槌…!
う、撃つのか?ルーシェ姫…!
一体どこに…⁉︎」
続く…
「…鍵はかかってない…出られそうだぞ…!」
ラグナが扉を開けると、室外では下級兵が見張りをしていた。
「部屋にお戻り下さい、ラグナ様!」
だが、これまでの冒険で経験を積んだラグナにとって、雑兵を気絶させる事などさほど難しくはなかった。
船内を探索して程なく、兵士に守られた別の部屋を発見する。
ラグナ(そんなすぐにミシェルさんが見つかるなんて出来過ぎてるけど…でも、可能性はある。)
再び兵士を気絶させて部屋に入る。
ミシェル「ラグナ君⁉︎」
ラグナ「ミシェルさん!
何もされてませんか⁉︎」
ミシェル「私は大丈夫…!」
ラグナ「よかった…!
ランさんや、帝国の人達も来てます…!
行きましょう…!」
ミシェル「えぇ…!」
脱出経路を探索中、長い廊下の様なフロアに、獣面の巨鳥の石像が祀られた祭壇を発見した。
ラグナ「これは…聖獣…?」
「だとすれば…
(石像に向かって)
お願い、私達に力を貸して…?」
ミシェルがそう言って剣をかざすと、石像に亀裂が走り、そこから光が漏れ出した。
やがて像は砕け散って光の粒子となり、獣面の巨鳥の姿を形作る。
「我が名はシームルグ…
封印されし4枚の翼は、あと一翼の解放をもって、船を天へと導かん…」
ラグナ「…?
いつもみたいにカーバンクルに吸収されないんですね…」
ミシェル「……
シームルグ、一緒に来ては貰えないの?」
シームルグ「…我ら4柱、創造主との盟約に従いて、船の翼たるべくこれに留まるものなり…」
その時、衛兵の声が聞こえてきた。
「見つけたか⁉︎」
「いや…声が聞こえた気がしたんだが…
それにしても、何故こんな所にあんな娘を…?」
「さぁな、貴族達のお考えはわからんが、我々は言われた事をやるしかない。」
(何も知らされてないのは下級兵だからか…?
そう言えば、船内では1人も騎士団に遭ってないな…
…とにかく、いつまでもここに居て捕まる訳にはいかない…!)
ラグナ達はやむなく、聖獣を残してその場を離れた。
一方ルーシェ達も、再び長い廊下の様なフロアに、尾羽の長い鳥の石像が祀られた祭壇を発見する。
「…グレゴリウス皇女・ルーシェの名において命ず…
聖獣よ、天翔ける船の翼たるべく、その戒めを解き放たん…!」
ルーシェが石像に向かって剣をかざすと、像に亀裂が走り、そこから光が漏れ出した。
やがて像は砕け散って光の粒子となり、極彩色の鳥の姿を形作る。
それと同時に、艦内は明るく照らされ、微細な振動と共に、機械の作動音が響き渡った。
「我が名はフェニックス…
全ての翼は解き放たれた…
我ら4柱、船を天へと導かん…」
ルーシェ「…全て…解き放たれた…⁉︎」
イリア「アレ?
あともう1体いるんじゃ…?」
ザハーク「ミシェル殿によって解放された、と見るべきでしょう。
…となれば、次なる急務はこの船の制御…」
ゼル「しかしその前に姫様、少しでも休まれた方が…」
ルーシェ「…いいえ…船の封印は解かれたのです…
先を急がねばなりません…!」
やがてルーシェ達が辿り着いたフロア…
周囲の壁にはガラスの板が張り巡らされているが、窓とは違う…
外の景色など映しておらず真っ暗だが、これを覗き込むのにお誂え向きの椅子が、それぞれに設置してあった。
フロアの中央には祭壇がある。
ザハーク「殿下の持つ聖剣エクスカリバーが、かつて祀ってあった祭壇によく似ていますな。
もしやそれを突き立てれば…」
「…やってみましょう…」
ルーシェが祭壇に剣を突き立てると、真っ暗だった周囲のガラス板は、とつぜん窓の様に外の景色を映しだし、微細だった振動と作動音が強さ・高さを増すと同時に、フロア内に声が響く。
「天への道は開かれた…!」
ザハーク「おぉぉ…遂に…!
殿下、今こそ逆賊どもに裁きの鉄槌を…‼︎」
一方その頃…
ラグナ「…⁉︎
船が…動いてる?」
ミシェル「……
ラグナ君のお父様達は、私にこの船を起動させようとしてた…
他にそれが出来る人が居るとすれば…」
ラグナ「ルーシェ姫…!」
ミシェル「でも、そうだとしたら…
ルーシェ姫はこの船をどう使うのかしら…」
ラグナ「まさか新興国に『裁きの鉄槌』を⁉︎」
その時、2人の前にオーディンが立ち塞がった。
「そこまでだ、ラグナ…!」
ラグナ「と…父さん…!」
オーディン「彼女を渡せ。
そして一緒に来い、ラグナ。」
ラグナ「…僕達に構ってる場合ですか?父さん。
恐らくいま船を動かしてるのはルーシェ姫です。
帝国が船を手に入れたという事は、アースガルドにも『裁きの鉄槌』が下るかもしれないんですよ⁉︎」
オーディン「心配せずともそうはならん。」
ラグナ「…なぜ…そう言い切れるんです…?」
オーディン「お前がそれを知る必要はない。」
ラグナ「…またそうやって貴方は…‼︎」
「…知りたくば、力ずくで聞き出してみるがいい…!」
オーディンはそう言うと槍を構えた。
ラグナは槍の石突に近い所を握り、横薙ぎを繰り出すと、勢いそのまま回転して斬撃を連続する。
「確かに、そうやって遠心力を利用すれば、腕力で劣るお前でも膂力を得られる…が、動きが単調だな。」
オーディンは周期的なリズムで繰り出される斬撃の合間を縫い、刃圏の内側に飛び込んだ。
ラグナはすかさず槍を握る箇所を、石突から柄の中央寄りに持ち変え、穂先と石突による連撃に切り替える。
オーディン「…少しの間にまた研鑽を積んだ様だな…
だが、同じ武器を使う以上、腕力と熟練の差は一朝一夕では覆らんぞ。」
「(確かに、いまだ実力は父さんの方が遥かに上だ…だけど!)
…言ったはずですよ。
ミシェルさんを守る為には、どんな手も使うって…!」
ラグナがそう言って視線を送ると、ミシェルが頷く。
「…聖獣ムリアンよ、かの者に大地の防壁を!
…聖獣ユニコーンよ、かの者の刃に更なる鋭さを!」
魔法の加護を得て、ラグナに対する攻撃は威力が半減し、逆にラグナによる攻撃はその威力を増した。
ラグナ(よし、これなら何とか通用する!)
「フッ…どんな手も使う、か…
ならばこちらも忌憚は無用…!
スレイプニル、参れ!」
オーディンが合図をすると、8脚の馬が駆けつけた。
ラグナ「あれはまるで…聖獣…!
アリハマ博士が造ったのか…?」
オーディンはその馬・スレイプニルに跨り、槍を構えると、ラグナの視界から瞬時に消えた。
ラグナ「!⁉︎」
次の瞬間、背後から斬撃が襲う。
反射的に受け止め反撃を試みるも、残像を残して、再び背後から斬りかかる。
ひとしきりラグナを翻弄した後、オーディンは言う。
「もう諦めろ、ラグナ。」
「くっ…ま、まだです…!」
ラグナはそう答えると、再びミシェルに視線を送り、ミシェルもまた頷いた。
「…お願いペガサス、ラグナ君に力を貸して!」
ミシェルの言葉に呼応してカーバンクルから放たれた光は、やがて粒子となって集まり、天馬の姿を形作る。
「…盟約に従いて、主を守らんとする者に力を貸さん…」
ラグナ「よ…よし!」
ペガサスを駆る事で、スレイプニルの瞬間移動の様な動きにも対応できるようになり、加えてラグナの振るう槍は穂先から雷撃を放つ。
射程攻撃を得る事で、趨勢はラグナに傾いた。
その時、船内を照らしていた灯りが突然すべて消える。
ラグナ「な、なんだ⁉︎」
船内に声が響く。
「これより10を数えたのち、裁きの鉄槌が下される…
船内の者は衝撃に、艦橋の者は加えて閃光に備えよ…
10・9・8…」
ラグナ「裁きの鉄槌…!
う、撃つのか?ルーシェ姫…!
一体どこに…⁉︎」
続く…
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