魔導姫戦記

本編 第三部

ep.37 双翼

聖獣ガルーダの強大な火炎魔法の力を手に入れたルーシェ達。
引き続きケットシーの導きに従い、やがて再び、ニフルヘイムの雪原に散らばるヴィマーナの翼の残骸を発見する。
やはり、長い廊下の様なフロアや、鳥の像が祀られていた祭壇は、跡形なく鉄屑と化した中で、巨大な猛禽だけが以前見たままの姿を保っていた。

ルーシェ「聖獣ジズ…
ヴィマーナは沈み、汝が創造主との盟約はもはや反故となった。
今こそ我が力となるべく、我と共に参れ！」
ジズ「…汝は…アグエルの末裔…なのか…？」
ルーシェ「またしてもその様な事を…
一体なんなのです？」
「…いや…だが、紛れもなく聖剣と聖獣の気配…
そして…ガルーダ、汝もこの者に従ったのだな…
…よかろう…我も共に見定めん…」
ジズはそう言うと光を放ち、やがて粒子となってケットシーに吸収された。
かくしてルーシェは、強大な雷撃魔法の力を得る。










一方その頃、ミシェル達もまたカーバンクルの導きに従い、雪原に散らばるヴィマーナの翼の残骸を発見した。
これまで見てきたもの同様、そこには原型を留めぬ鉄屑の中、極彩色の長い尾羽を纏った鳥が佇んでいた。
「我が名はフェニックス…
汝は…我が封印を解き放てし者とは違う…
紛う事なきアグエルの末裔のようだな…」
ミシェル「…どういう意味です？
貴方の封印を解いたのって…ルーシェ姫ですよね？」
フェニックス「…あの者も確かに聖剣を携え、聖獣を従えていたが…
形容し難い違和感を感じた…」
ラン「違和感…？」
リン「やっぱりミシェルちゃんが本物のお姫様で、あっちは偽物って事？」
フェニックス「いや…『偽物』という事ではあるまい…あるまいが…
違和感の正体が何なのかは、我にもわからぬのだ…」
ラン「…まぁ、けど、ミシェルがアグエルの末裔だって事はハッキリしたって訳だね。」
ミシェル「そう…みたいですね…」
フェニックス「シームルグは汝に従ったようだな…
ヴィマーナが失われた今、我が創造主との盟約はもはや反故となった…
汝が望むならば、我も汝に従おう…」
「お願いします。」
ミシェルがそう言うとフェニックスは光を放ち、やがて粒子となってカーバンクルに吸収された。
かくしてミシェルは、瀕死からの蘇生リザレクションの魔力を得る。

ラン「翼の聖獣はあと2体いるって事だよね？」
「…えぇ…」
ミシェルは浮かない表情でカーバンクルを見た。
だが、カーバンクルがそれ以上なにかに反応する様子はない。

ラン「…反応がないって事は、残りは帝国に渡ったか…」
リン「なんだかんだ言って、あっちのお姫様についてったんだね。」
「そうですね。」
ミシェルが安堵した表情でそう言った時、3人の上空を、ルーシェ達を背に乗せた巨大な猛禽が通過する。

イリア「あ！アイツら…」
「あとの2体はあちらに従ったようですわね。」
ルーシェは、不安を取り繕ったような微笑でそう言った。





続く…