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本編 第三部
ep.39 同盟打診
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アースガルドからヨトゥンヘイムへと向かうラグナとシャールヴィは、国境に設けられた関所に辿り着いた。
ヨトゥンヘイム兵「我が国では現在、アースガルドからの入国を厳しく制限している。」
シャールヴィ「なんでだよ⁉︎
今までそんな事なかったぞ!」
ラグナ「…いや待った、シャールヴィ。
仕方ない、ここはいったん引き返そう。
関所を引き返してしばらく後、シャールヴィが問い掛ける。
「いやにあっさり引き下がったんじゃね?ラグ兄。」
ラグナ「…父さんとロキ議長の話が決裂したにしても、その後の対応が早過ぎる…」
シャールヴィ「どういう事?」
ラグナ「やっぱり父さんの言った通り、ロキ議長は最初から、ここまで折り込み済みだったのかも…
だとすると、今後のヨトゥンヘイムの動向が気になる…」
シャールヴィ「よ~し…こうなったら、山越えするしかないぜ!」
「不法入国か…じ、上等だ!」
ラグナはシャールヴィと共に険しい山岳地帯を、追手を避けながら、時に対峙し討ち倒しながら、やがてヨトゥンヘイム国・ビルスキルニル邸に辿り着いた。
ソール「おぉ、シャールヴィ!
ラグナ殿も…よくここまで来られたな。
今や我が国は、開戦に向けて厳戒態勢なんじゃぞ!」
ラグナ「やっぱり…
ロキ議長が父に、義勇軍派兵の話を持ち掛けてきたんですが、アリハマ博士の身柄を交換条件にされて…
でも博士は消息不明で、それで決裂したんです。
その後すぐ国境も閉鎖されて…」
ソール「ロキめ…何が義勇軍じゃ!
彼奴はムスペルヘイムに加勢して、アースガルドに攻め込むつもりじゃぞ!」
シャールヴィ「なんだって⁉︎
くっそ~…あのコウモリ野郎め!」
ソール「いかにオーディンとて、二国同時に戦火を交えるのは分が悪かろう…」
ラグナ「ソールさん、何とかして止める方法はないんでしょうか?」
ソール「…すまぬラグナ殿…
情け無い話じゃが、今となっては、儂には何の権限も発言力も無いのじゃ…
…しかし、あの者達ならば…」
ラグナ「…あの者?」
ソール「シャールヴィ、お前もあのとき会ったろう?
ユグドラシルの瓦礫に埋もれたシグルズ達の救出に協力してくれた…」
シャールヴィ「もしかして…オルファス家の騎士とか言ってたヤツらか⁉︎」
ラグナ「オルファス家と言うと…ヴァナヘイムの?」
ソール「左様。
オルファス家は有力な議会貴族じゃ。
ヴァナヘイムは今のところ中立の立場を表明しておるが、戦況が二国対一国となるならば、協力するよう議会に働き掛けてくれるやもしれん。」
シャールヴィ「よぅし、早速ヴァナヘイムに行こうぜ!」
ラグナ「あぁ!
ソールさん、ありがとうございます!」
ソール「うむ。
2人とも、気をつけてな!」
アースガルド・ムスペルヘイム・ヴァナヘイム、三国の国境線が交わる地点…
ムスペルヘイムはアースガルドとの開戦に向けて軍が集結しつつあり、ヴァナヘイムはその様子を静観している。
そして、その遥か上空…
翼ある鹿に跨った者が、ヴァナヘイムの関所に向かう2人の姿を見下ろしていた。
「あの少年は確か…
…という事は、新参謀殿の読み通りって訳ね。」
「貴国の状況は察するが、我が国は中立の立場を表明している。
いま貴国からの入国を認めると、ムスペルヘイムに弓引く行為ともとられかねんのだ、申し訳ないが…」
関所を守るヴァナヘイム兵にそう言われ、またしてもラグナとシャールヴィは関所を引き返す。
シャールヴィ「くっそ~コッチもか。
こうなったら、またフホーニューコクか?」
ラグナ「いや、これから協力を仰ごうという相手に、それはまずい。」
シャールヴィ「だよな~…
でも、じゃあどうする?」
ラグナ「う~ん…」
「君は、ラグナ=ヴァルホルだな?」
途方に暮れる2人に、少女が声を掛けた。
ラグナ「そ、そうだけど…君は?
その雰囲気は…もしかして帝国魔導師…?」
少女「元帝国魔導師だ。
名をレラジェと言う。」
シャールヴィ「オイラはシャールヴィだぜ。
元…って言う事は、辞めたのか?
なんで?」
レラジェ「…袂を別つつもりは無かったが、ごく個人的な事情でね…」
シャールヴィ「で、その元帝国魔導師が何の用だよ?」
レラジェ「ヴァナヘイムに行きたいのだろう?
君たち次第では、手を貸すのも吝かではないと思ってね。」
ラグナ「僕たち次第…と言う事は、何か交換条件が?」
レラジェ「人探しに協力してもらいたい。」
シャールヴィ「人探しって…オイラたち急いでるんだぜ?」
レラジェ「だが、他に打つ手もないんだろう?
なに、心配せずとも私の人探しは君達の用事の後でいいよ。」
ラグナ「……
わかりました、よろしくお願いします。」
翼ある鹿が一度に乗せて運べる人数は2人が限度。
二度に分けて、3人は国境を飛び越える。
ラグナ「ここからオルファス家の人に会うまでは、僕とレラジェさんはシャールヴィの従者という事にしよう。
僕達2人は国籍を明かす訳にいかないからね。」
シャールヴィ「ウチでそんなもん雇った事ないけど…わかった。」
レラジェ「…やむを得ないな。」
やがて3人はヴァナヘイム首都・オルファス邸に辿り着いた。
衛兵「…ん?
坊主、どこかで会ったか?」
ラグナ「こちら、ヨトゥンヘイム国ソール前議長が御令孫・シャールヴィ=ビルスキルニル様にあらせられます。
オルファス家の方にお取次ぎ願いたく、馳せ参じました。」
衛兵「おお、そうだった。
一緒にシグルズ殿を助けたのだっ…
……
助けたのでしたな。」
シャールヴィ「急に改まって言い直さなくてもいいぜ。」
衛兵「ガハハハハ…!
では失敬して…今お呼びするから待っておれ。」
しばし待つと、シャールヴィよりやや幼い位の少年が出迎えた。
「シャールヴィ君!…と、そちらは?」
レラジェ「…私は…ただの使用人だ…」
ラグナ「ラグナ=ヴァルホルです。」
アポロン「ヴァルホル卿…と言う事は、アースガルド議長オーディン侯の…?
ご挨拶が遅れました、僕はオルファス家が末弟・アポロンです。
どうぞ、お上がり下さい。
今、兄も呼んで参ります。」
レラジェ「……」
再び、しばし待つ。
シャールヴィ「ガキのくせに、アイツしっかりしてんな。」
ラグナ「はは…」
レラジェ「…来たぞ。」
現れたのは、豪胆な若い騎士だった。
「よぉシャールヴィ!
…と、そちらがオーディン議長の御子息の…?」
ラグナ「はじめまして、ラグナ=ヴァルホルと言います。」
騎士「俺の名はエルキュール。
すまないが、かしこまって話すのは苦手でな…多少の無礼は勘弁してくれ。」
ラグナ「大丈夫です。」
シャールヴィ「オイラやシグルズもそんな感じだよな。」
エルキュール「で…そっちのお嬢さんは?」
レラジェ「…私はただの使用人だ。
お構いなく…」
エルキュール「…そうかい。
じゃあ早速だが用件を聞こう。
大方の予想はつくが…」
ラグナは、これまでの経緯を話す。
エルキュール「…なるほど、そう言う事か…
はじめムスペルヘイムは我が国に共闘を打診して来たんだが、我々が中立を表明して踏み留まったと思ったんだ。
それが今度はヨトゥンヘイムと組む事になって、開戦に向けた足取りが急に早まったって訳か。
タイマンも出来んとは、腰抜けどもめ…!」
ラグナ「…とは言え、ここで止めないと、この二国連合が今後、世界の覇権を狙うかもしれません。」
エルキュール「あぁ、充分にあり得る。
…よし、議会に進言してもらう様、父上に掛け合ってみよう。」
シャールヴィ「やったな、ラグ兄!」
ラグナ「ありがとうございます!
よろしくお願いします!」
オルファス邸を去る際、レラジェが尋ねた。
「…ところで、パーシアス卿は今どちらに?」
アポロン「兄様なら私用でムスペルヘイム国・エティオフの街に…
兄様に何か?」
レラジェ「…いや、別に…」
ラグナ「…?
では、僕達はこれで失礼します。」
シャールヴィ「じゃあな!」
アポロン「お気をつけて…!」
かくしてオルファス邸を後にした一行。
ラグナ「僕達の用件はこれで終わりです。」
シャールヴィ「で、姐ちゃんは誰に何の用なんだ?」
レラジェ「…オルファス家の長兄・パーシアス卿…」
ラグナ「それでさっき…
じゃあムスペルヘイムに?」
レラジェ「あぁ。」
かくして、ヴァナヘイムとムスペルヘイムの国境に設けられた関所に辿り着いたが、入国審査は相当厳重な様だ。
ラグナ「やっぱり、通過する全員の身元を証明しないと通れなそうだ。
シャールヴィはともかく、アースガルド国籍の僕と、帝国籍のレラジェさんでは拘束されかねない…」
レラジェ「…君達はもういいぞ。
私だけなら、翼ある鹿に乗ればどうとでもなる。」
ラグナ「すみません…約束を最後まで果たせず…」
「いや、おかげで手掛かりは掴めた。
充分だ。」
そう言い残して早々に飛び去ろうとするレラジェに、ラグナは呼び止める様に言った。
「あのっ…ありがとうございました。
お気をつけて…!」
レラジェは一瞥して軽く手を上げると、翼ある鹿を駆り、颯爽と飛び去る。
シャールヴィ「…なんか愛想のないヤツだったな。」
続く…
ヨトゥンヘイム兵「我が国では現在、アースガルドからの入国を厳しく制限している。」
シャールヴィ「なんでだよ⁉︎
今までそんな事なかったぞ!」
ラグナ「…いや待った、シャールヴィ。
仕方ない、ここはいったん引き返そう。
関所を引き返してしばらく後、シャールヴィが問い掛ける。
「いやにあっさり引き下がったんじゃね?ラグ兄。」
ラグナ「…父さんとロキ議長の話が決裂したにしても、その後の対応が早過ぎる…」
シャールヴィ「どういう事?」
ラグナ「やっぱり父さんの言った通り、ロキ議長は最初から、ここまで折り込み済みだったのかも…
だとすると、今後のヨトゥンヘイムの動向が気になる…」
シャールヴィ「よ~し…こうなったら、山越えするしかないぜ!」
「不法入国か…じ、上等だ!」
ラグナはシャールヴィと共に険しい山岳地帯を、追手を避けながら、時に対峙し討ち倒しながら、やがてヨトゥンヘイム国・ビルスキルニル邸に辿り着いた。
ソール「おぉ、シャールヴィ!
ラグナ殿も…よくここまで来られたな。
今や我が国は、開戦に向けて厳戒態勢なんじゃぞ!」
ラグナ「やっぱり…
ロキ議長が父に、義勇軍派兵の話を持ち掛けてきたんですが、アリハマ博士の身柄を交換条件にされて…
でも博士は消息不明で、それで決裂したんです。
その後すぐ国境も閉鎖されて…」
ソール「ロキめ…何が義勇軍じゃ!
彼奴はムスペルヘイムに加勢して、アースガルドに攻め込むつもりじゃぞ!」
シャールヴィ「なんだって⁉︎
くっそ~…あのコウモリ野郎め!」
ソール「いかにオーディンとて、二国同時に戦火を交えるのは分が悪かろう…」
ラグナ「ソールさん、何とかして止める方法はないんでしょうか?」
ソール「…すまぬラグナ殿…
情け無い話じゃが、今となっては、儂には何の権限も発言力も無いのじゃ…
…しかし、あの者達ならば…」
ラグナ「…あの者?」
ソール「シャールヴィ、お前もあのとき会ったろう?
ユグドラシルの瓦礫に埋もれたシグルズ達の救出に協力してくれた…」
シャールヴィ「もしかして…オルファス家の騎士とか言ってたヤツらか⁉︎」
ラグナ「オルファス家と言うと…ヴァナヘイムの?」
ソール「左様。
オルファス家は有力な議会貴族じゃ。
ヴァナヘイムは今のところ中立の立場を表明しておるが、戦況が二国対一国となるならば、協力するよう議会に働き掛けてくれるやもしれん。」
シャールヴィ「よぅし、早速ヴァナヘイムに行こうぜ!」
ラグナ「あぁ!
ソールさん、ありがとうございます!」
ソール「うむ。
2人とも、気をつけてな!」
アースガルド・ムスペルヘイム・ヴァナヘイム、三国の国境線が交わる地点…
ムスペルヘイムはアースガルドとの開戦に向けて軍が集結しつつあり、ヴァナヘイムはその様子を静観している。
そして、その遥か上空…
翼ある鹿に跨った者が、ヴァナヘイムの関所に向かう2人の姿を見下ろしていた。
「あの少年は確か…
…という事は、新参謀殿の読み通りって訳ね。」
「貴国の状況は察するが、我が国は中立の立場を表明している。
いま貴国からの入国を認めると、ムスペルヘイムに弓引く行為ともとられかねんのだ、申し訳ないが…」
関所を守るヴァナヘイム兵にそう言われ、またしてもラグナとシャールヴィは関所を引き返す。
シャールヴィ「くっそ~コッチもか。
こうなったら、またフホーニューコクか?」
ラグナ「いや、これから協力を仰ごうという相手に、それはまずい。」
シャールヴィ「だよな~…
でも、じゃあどうする?」
ラグナ「う~ん…」
「君は、ラグナ=ヴァルホルだな?」
途方に暮れる2人に、少女が声を掛けた。
ラグナ「そ、そうだけど…君は?
その雰囲気は…もしかして帝国魔導師…?」
少女「元帝国魔導師だ。
名をレラジェと言う。」
シャールヴィ「オイラはシャールヴィだぜ。
元…って言う事は、辞めたのか?
なんで?」
レラジェ「…袂を別つつもりは無かったが、ごく個人的な事情でね…」
シャールヴィ「で、その元帝国魔導師が何の用だよ?」
レラジェ「ヴァナヘイムに行きたいのだろう?
君たち次第では、手を貸すのも吝かではないと思ってね。」
ラグナ「僕たち次第…と言う事は、何か交換条件が?」
レラジェ「人探しに協力してもらいたい。」
シャールヴィ「人探しって…オイラたち急いでるんだぜ?」
レラジェ「だが、他に打つ手もないんだろう?
なに、心配せずとも私の人探しは君達の用事の後でいいよ。」
ラグナ「……
わかりました、よろしくお願いします。」
翼ある鹿が一度に乗せて運べる人数は2人が限度。
二度に分けて、3人は国境を飛び越える。
ラグナ「ここからオルファス家の人に会うまでは、僕とレラジェさんはシャールヴィの従者という事にしよう。
僕達2人は国籍を明かす訳にいかないからね。」
シャールヴィ「ウチでそんなもん雇った事ないけど…わかった。」
レラジェ「…やむを得ないな。」
やがて3人はヴァナヘイム首都・オルファス邸に辿り着いた。
衛兵「…ん?
坊主、どこかで会ったか?」
ラグナ「こちら、ヨトゥンヘイム国ソール前議長が御令孫・シャールヴィ=ビルスキルニル様にあらせられます。
オルファス家の方にお取次ぎ願いたく、馳せ参じました。」
衛兵「おお、そうだった。
一緒にシグルズ殿を助けたのだっ…
……
助けたのでしたな。」
シャールヴィ「急に改まって言い直さなくてもいいぜ。」
衛兵「ガハハハハ…!
では失敬して…今お呼びするから待っておれ。」
しばし待つと、シャールヴィよりやや幼い位の少年が出迎えた。
「シャールヴィ君!…と、そちらは?」
レラジェ「…私は…ただの使用人だ…」
ラグナ「ラグナ=ヴァルホルです。」
アポロン「ヴァルホル卿…と言う事は、アースガルド議長オーディン侯の…?
ご挨拶が遅れました、僕はオルファス家が末弟・アポロンです。
どうぞ、お上がり下さい。
今、兄も呼んで参ります。」
レラジェ「……」
再び、しばし待つ。
シャールヴィ「ガキのくせに、アイツしっかりしてんな。」
ラグナ「はは…」
レラジェ「…来たぞ。」
現れたのは、豪胆な若い騎士だった。
「よぉシャールヴィ!
…と、そちらがオーディン議長の御子息の…?」
ラグナ「はじめまして、ラグナ=ヴァルホルと言います。」
騎士「俺の名はエルキュール。
すまないが、かしこまって話すのは苦手でな…多少の無礼は勘弁してくれ。」
ラグナ「大丈夫です。」
シャールヴィ「オイラやシグルズもそんな感じだよな。」
エルキュール「で…そっちのお嬢さんは?」
レラジェ「…私はただの使用人だ。
お構いなく…」
エルキュール「…そうかい。
じゃあ早速だが用件を聞こう。
大方の予想はつくが…」
ラグナは、これまでの経緯を話す。
エルキュール「…なるほど、そう言う事か…
はじめムスペルヘイムは我が国に共闘を打診して来たんだが、我々が中立を表明して踏み留まったと思ったんだ。
それが今度はヨトゥンヘイムと組む事になって、開戦に向けた足取りが急に早まったって訳か。
タイマンも出来んとは、腰抜けどもめ…!」
ラグナ「…とは言え、ここで止めないと、この二国連合が今後、世界の覇権を狙うかもしれません。」
エルキュール「あぁ、充分にあり得る。
…よし、議会に進言してもらう様、父上に掛け合ってみよう。」
シャールヴィ「やったな、ラグ兄!」
ラグナ「ありがとうございます!
よろしくお願いします!」
オルファス邸を去る際、レラジェが尋ねた。
「…ところで、パーシアス卿は今どちらに?」
アポロン「兄様なら私用でムスペルヘイム国・エティオフの街に…
兄様に何か?」
レラジェ「…いや、別に…」
ラグナ「…?
では、僕達はこれで失礼します。」
シャールヴィ「じゃあな!」
アポロン「お気をつけて…!」
かくしてオルファス邸を後にした一行。
ラグナ「僕達の用件はこれで終わりです。」
シャールヴィ「で、姐ちゃんは誰に何の用なんだ?」
レラジェ「…オルファス家の長兄・パーシアス卿…」
ラグナ「それでさっき…
じゃあムスペルヘイムに?」
レラジェ「あぁ。」
かくして、ヴァナヘイムとムスペルヘイムの国境に設けられた関所に辿り着いたが、入国審査は相当厳重な様だ。
ラグナ「やっぱり、通過する全員の身元を証明しないと通れなそうだ。
シャールヴィはともかく、アースガルド国籍の僕と、帝国籍のレラジェさんでは拘束されかねない…」
レラジェ「…君達はもういいぞ。
私だけなら、翼ある鹿に乗ればどうとでもなる。」
ラグナ「すみません…約束を最後まで果たせず…」
「いや、おかげで手掛かりは掴めた。
充分だ。」
そう言い残して早々に飛び去ろうとするレラジェに、ラグナは呼び止める様に言った。
「あのっ…ありがとうございました。
お気をつけて…!」
レラジェは一瞥して軽く手を上げると、翼ある鹿を駆り、颯爽と飛び去る。
シャールヴィ「…なんか愛想のないヤツだったな。」
続く…
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