魔導姫戦記

森乃守人

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外典 ドラゴンハンター

ep.1 政敵(本編 〜ep.14)

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ムスペルヘイム国の魔法石フォシル採掘場で、異形化奇病メタモルフ化したメデューサによって石に変えられたラグナ。

それを治す力を持つ竜・アスクレピオンの封印された魔法石フォシルを探し求め、シグルズは翼竜ワイバーンへと姿を変えたメリュジーヌの背に乗り、ヨトゥンヘイム目指して飛び立った。










ヨトゥンヘイム国・ビルスキルニル邸…

シグルズ「久しぶりだな、おやっさん。」
ソール「おぉ、シグルズ!
話は聞いたぞ、災難だったな。
まぁ、お前の事だ、微塵も案じてはおらんかったがな。
…ところで、その子は?
どこぞの女子おなごにでも産ませたか?」
シグルズ「…勘弁してくれ…」
メリュジーヌ「…我が名はメリュジーヌ。
ウロボロス団の創始者である。」
ソール「き…君が⁉︎
これは失礼した…孫が世話になっておる。
…しかし…見たところ子供の様だが…」 
メリュジーヌ「この姿は、人の支配する世を生きる為の擬態じゃ。」
ソール「人の…?
君は人ではないのか?」
メリュジーヌ「我は竜…アグエル文明に滅ぼされし、森羅万象の理を司る種族の末裔。」
ソール「竜じゃと⁉︎
そんなものが実在するのか…?
いくらシグルズの連れでも、にわかには信じられん…」
シグルズ「無理もねぇだろうけどな…
本題はここからだぜ、おやっさん。
実はラグナが異形化奇病メタモルフにやられて、石にされちまってな…そいつを治せる力を探してんだ。」
ソール「石にだと⁉︎
そんなもの、魔法でもなくば治せまい…
…⁉︎
まさか、君が…?」
メリュジーヌ「左様…だが、今はまだ、そのような力を持っておらぬ。
新たな力を得るには、我が眷属の魂が封じ込められし骸…汝らが魔法石フォシルと呼ぶ鉱石を要する。」
ソール「⁉︎
魔法石フォシルが…竜の魂が宿る骸だと?」
シグルズ「そういう訳で魔法石フォシルを探してんだ。
この国にも、建造途中の魔法供給施設があったろ?」
ソール「うむ。
シャールヴィ達から話を聞いて、建造は中断させておる。
そういう事情ならば、魔法石フォシルは持って行くがよい。」
メリュジーヌ「感謝する。」










ソールの案内で辿り着いた魔法供給施設・ビヴロストは、虹色の光を放っていた。

メリュジーヌ「…稼働しておるな…」
ソール「なんだと⁉︎
そんなはずは…どういう事じゃ?」

入口に立つ衛兵が、近付くソールに気付き慌てる。
「ソ…ソール議長⁉︎」
ソール「誰じゃ⁉︎塔を稼働させておるのは!」
兵士「こ、これは…ロキ次長が…」
ソール「ロキだと⁉︎
奴は中におるのか?」
兵士「は…魔法石フォシルの祭壇の間に…」
「彼奴め…勝手な真似を…!」
ソールはそう言うと、塔の中に入って行った。

シグルズ「…1人で行っちまった…」
メリュジーヌ「汝らの言葉で言う所、我らは『てろりすと』じゃ。
今はここで静観すべきであろう。」
シグルズ「…だな…おやっさんの立場上…」










ビヴロスト内部・魔法石フォシルの祭壇…

ソール「ロキ!
勝手な真似をしおって…どういうつもりじゃ⁉︎」
ロキ「これはこれはソール議長。
ご自分を差し置いて勝手とは心外…貴族達は皆、塔の建造中止に反対しておりますぞ。
議会の総意に従ってこその民主主義でありましょう?」
ソール「民を犠牲にして何が民主主義か!
魔導師が異形化奇病メタモルフになるのだと言うたであろう⁉︎」
ロキ「根拠がありませぬ。
子供の戯れ言など、議会に持ち込まれなさるな。」
ソール「ぬうぅ…
ともかく、議長命令じゃ!
今すぐ塔の稼働を止めい!」
「…ソール候…勘違いしておられるようだが、議長というものの立場は、かつての皇帝などとは違う。
貴方の命令など、いずれ議会の総意でいくらでも覆りましょう。
それが民主主義というものですよ。
ククク…」
ロキはそう言い残して立ち去った。










塔を後にしたソールと合流したシグルズ 。
「おやっさん、どうだった?」
ソール「ひとまず塔の稼働は止めさせた。
だが恐らく、いずれ議会で再稼働が議決されるだろう。
…まぁ、その前に何者かが塔に忍び込んで魔法石フォシルを盗んだとしても、ワシは預かり知らんがな。」
シグルズ「ククク…なるほど、『何者かが』…ね。」
メリュジーヌ「汝の立場上、我らと居るのを誰かに見られるのは杞憂であろう。
我らはここで失礼するとしよう。」
シグルズ「あぁ、じゃあな、おやっさん。」
ソール「うむ、武運を祈る。」










その夜、ビヴロストへの潜入を試みるシグルズとメリュジーヌ。

シグルズ「衛兵が居ねぇ…
おやっさんが引き上げさせたか…?」
メリュジーヌ「…誰か来るぞ。」

2人が隠れて様子を伺うと、1人の兵士が
塔内へ入って行った。

シグルズ「…何だ?アイツは…」

2人は塔内を探索すると、堅牢な扉がいくつもあるフロアに辿り着く。
そこでは、先ほどの兵士が扉を1つづつ解錠していた。
全ての扉の解錠を終えると、兵士は慌てた様子でフロアを立ち去ろうとする。

シグルズ「何してんだ?あんた。」
「‼︎
やはりロキ様の仰った通り、警備を解いた途端、魔法石フォシルを狙って賊が侵入しおったか!
だが、後悔するがいい…兵に捕らえられた方がまだマシだったとな!」
兵士はそう言うと、逃げるようにその場を立ち去った。

シグルズ 「…偉そうに言って、結局逃げんのかよ…
何だったんだ?アイツは…」
メリュジーヌ「…奥に何かおるぞ。」

兵士が解錠した扉から姿を現したのは、無数の異形化奇病メタモルフだった。

メリュジーヌ「…どうやら異形化奇病メタモルフ化した魔導師達の隔離室だったようだな。」
シグルズ 「なるほど…兵士の代わりに魔法石フォシルを守らせようって訳か…
確かに、並の盗賊相手ならいい番兵だろうがな…!」

2人は異形化奇病メタモルフを蹴散らしながら先へ進み、やがて、魔法石フォシルの祀られた祭壇に辿り着いた。
メリュジーヌは魔法石フォシルに向かって唱える。
「忌まわしきアグエル文明により封印されし我が眷族よ…
その戒めを今、解き放たん。」

すると魔法石フォシルは砕け散って光の粒子となり、半人半蛇の女の姿を象った。
「我はラミア…
我が戒めを解き放てし眷族よ…
汝が力を我に示せば、盟約に従い我が力を授けん。」

ラミアの長い尾はシグルズの剣撃を阻み、容易に致命傷には至らないものの、メリュジーヌの魔法と併せて徐々にダメージを蓄積する。

シグルズ「意外に単純作業か?」
メリュジーヌ「いや、そうはいくまい。」

ラミアが口を開くと、シグルズとメリュジーヌの身体から光の粒子が放たれ、ラミアの口に集まっていく。

シグルズ「…何だ?
いきなりどっと疲れたぜ。」
メリュジーヌ「エナジードレイン…
魔法で我らの体力を己のものとしたようだ。
シグルズ「チッ…押してたはずが、形勢逆転されたって訳かよ。
何か策はあるか?」
「さて…効果はあるかな?
試してみよう。

盟約に従い受け継ぎし闇精アスプの力と、其を振るうに相応しき姿を解き放たん…」
そう唱えたメリュジーヌは黒い蛇の姿に変わり、黒い霧のような息吹を吐き出すと、ラミアは闇に覆われて眠りにつく。

シグルズ「…後味悪りィけどな…」
メリュジーヌ「これは生前の『力』の具現であり、本来既に亡き者…忌憚きたんは無用。」

とどめを刺すと、ラミアは砕け散って無数の光の粒子となり、メリュジーヌに吸収された。
かくしてメリュジーヌはエナジードレインの魔法を得る。

メリュジーヌ「アスクレピオンではなかったな。
まぁ、そう都合よくも行くまいが…」
シグルズ「…そうだな。」

2人はビヴロストの塔を後にした。





続く…
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