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第3章 富国強兵
第2話 青銅器と魔王の秘密
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「遊撃隊は交代制にする。当然部隊指揮官もローテーションだ。それから武器は鉄以外の金属で作る」
俺の発言を聞いた魔王とズメイは揃って目を丸くした後、一斉に質問を始めた。
早速魔王が問いかけてくる。
「鉄以外の金属で武器を作るだと?何を材料にするのだ?」
「青銅を材料とします」
青銅は銅に対して10%前後のスズを含んだ合金だ。
はっきりいって強度は鉄に劣るが、加工しやすいという利点を持つ。
「青銅で作った武器は鉄にどの程度対抗できる?」
魔王は半信半疑といった様子だ。
「はっきりとしたことは言えません。しかし、数合打ち合う程度なら耐えられるはずです」
いくら日本でミリオタだったとはいえ、俺自身が実際に鉄器と青銅器の戦いを見たわけではない。
素手に比べれば遥かにマシなことは確かだが、どこまで鉄製の武器に対抗できるかは不安だ。
本当なら魔王軍の兵士たち全員に鉄製の武器を使わせてやりたい。
だが、指揮官がないものねだりをしても仕方がない。
ゴブリンたちには数年後ではなく、数週間後に準備できる武器が必要なのだ。
「そもそも自分たちで武器を作る必要はあるのか?魔王様は多くの武器を人間たちから奪った。タカアキも遊撃戦で人間どもを捕虜にして装備を獲得した。これを繰り返すことが近道だろう」
腕組みをして考え込んでいたズメイが提案する。
「相手から奪うことを前提にすることは危険だ。戦いは毎回上手くいくわけじゃない」
古今東西、敵から武器や食料を奪うことで戦いを続けようとした軍はろくな目にあっていない。
俺が作戦を立てる以上、地球で幾多の軍が犯した過ちを繰り返させるわけにはいかない。
「青銅を作る技術を発達させて行けば、いずれ鉄を作ることができるようになります。技術は一つ一つ積み重ねていくものです。ここはまず銅製の武具の開発に力を入れるべきです」
俺が締めくくった時、魔王とズメイからの反論はなかった。
この改革は単なる武器の制作にはとどまらない。
青銅が作れれば、日本で言う弥生時代程度の技術は得ることが出来る。
自力で武器が作れるようになれば、魔王軍はただ戦うだけの『軍』ではなく、モノを生産できる『国』という側面を持つ組織へと成長する。
エルナーゼ王国との厳しい戦争を戦い抜く大きな力となるはずだ。
「タカアキ、武器の制作については納得したが、遊撃隊をローテーションするというのはどういう意味だ?」
考え込んでいると、ズメイがやや困惑したように尋ねてきた。
「そのままの意味だ。第2、第3遊撃隊を作り、俺が魔王城から離れられない時にエルナーゼ王国軍補給部隊の妨害をやってもらう」
「タカアキ以外が指揮を執るということか?お前が一番知っていることだろうが、戦術と戦略についてある程度の理解がなければ補給部隊襲撃の指揮は取れない。今の魔王軍にお前以外の適任者がいるとは私は思えない」
どうやら俺の作戦指揮能力を高く買ってくれているようだ。
だが、魔王軍には俺以外にも指揮官がいる。
だから俺はズメイの言葉に淡々と返事を返す。
「いるじゃないか。俺以外に魔王軍の戦略について考えを巡らしている者がここに2人」
「まさか!私と魔王様を指名するのか⁉」
ズメイがローブの下で目を見開いた。
心底驚いているらしい。
「私は今まで連戦連敗の魔王軍の参謀だったんだぞ」
「でも今は違う。この3人で頭を悩ませて魔王軍を改革しようとしている」
「しかし、実戦で上手くやれるかは分からんぞ…」
ズメイはなおも悩んでいる。
地名決めでの自信はどこへ行ったんだ。
だが不安な気持ちも分かる。
俺も魔王軍別働隊を始めて率いた時は、大きな責任を感じた。
「大丈夫だ。ズメイは戦術について基本的なことは理解している。慎重に補給部隊を狙えば失敗することはない」
さらにこれまで散っていった魔王軍の戦士たちの無念をはらすチャンスだと励ますとズメイの目の色が変わった。
やる気になってくれたようだ。
あとは魔王の説得だ。
その身に纏う魔力は膨大で、戦場に出れば絶大な戦力になるだろう。
彼の力に頼らない手はない。
魔王の飛び出した眼球を見つめながら頼み込む。
「魔王様、突然の提案で申し訳ありません。しかし、魔王軍全員のためにお力を振るっていただけないでしょうか」
魔王が返答を返す前にズメイが発言した。
「タカアキ、私は全力を尽くして敵補給部隊を攻撃する。だが、魔王様を前線に出すわけにはいかん。私とタカアキの部隊で2交代制にしてくれ」
ズメイの言いたいことは分かる。
だが、賛成することはできない。
「最高指揮官が前線で戦うのはリスクが大きいことは分かっている。しかし、今の魔王軍には魔王様という強力な戦力を温存する余裕はない」
「その分も私が働く!だから---
「よい、ズメイ。黒騎士、いや、タカアキには本当のことを話すべきだ」
魔王の静かな声が、俺とズメイの論争を断ち切った。
「魔王様、それはいけません!タカアキは私が納得させます!!どうかもう少しお時間を---」
ズメイは自分が指揮官に指名された時よりも慌てている。
魔王はなおも言いつのろうとしたズメイを右手で制すと、落ち着いた調子で言葉を放った。
「我は魔王城の外では生きられないのだ」
俺の発言を聞いた魔王とズメイは揃って目を丸くした後、一斉に質問を始めた。
早速魔王が問いかけてくる。
「鉄以外の金属で武器を作るだと?何を材料にするのだ?」
「青銅を材料とします」
青銅は銅に対して10%前後のスズを含んだ合金だ。
はっきりいって強度は鉄に劣るが、加工しやすいという利点を持つ。
「青銅で作った武器は鉄にどの程度対抗できる?」
魔王は半信半疑といった様子だ。
「はっきりとしたことは言えません。しかし、数合打ち合う程度なら耐えられるはずです」
いくら日本でミリオタだったとはいえ、俺自身が実際に鉄器と青銅器の戦いを見たわけではない。
素手に比べれば遥かにマシなことは確かだが、どこまで鉄製の武器に対抗できるかは不安だ。
本当なら魔王軍の兵士たち全員に鉄製の武器を使わせてやりたい。
だが、指揮官がないものねだりをしても仕方がない。
ゴブリンたちには数年後ではなく、数週間後に準備できる武器が必要なのだ。
「そもそも自分たちで武器を作る必要はあるのか?魔王様は多くの武器を人間たちから奪った。タカアキも遊撃戦で人間どもを捕虜にして装備を獲得した。これを繰り返すことが近道だろう」
腕組みをして考え込んでいたズメイが提案する。
「相手から奪うことを前提にすることは危険だ。戦いは毎回上手くいくわけじゃない」
古今東西、敵から武器や食料を奪うことで戦いを続けようとした軍はろくな目にあっていない。
俺が作戦を立てる以上、地球で幾多の軍が犯した過ちを繰り返させるわけにはいかない。
「青銅を作る技術を発達させて行けば、いずれ鉄を作ることができるようになります。技術は一つ一つ積み重ねていくものです。ここはまず銅製の武具の開発に力を入れるべきです」
俺が締めくくった時、魔王とズメイからの反論はなかった。
この改革は単なる武器の制作にはとどまらない。
青銅が作れれば、日本で言う弥生時代程度の技術は得ることが出来る。
自力で武器が作れるようになれば、魔王軍はただ戦うだけの『軍』ではなく、モノを生産できる『国』という側面を持つ組織へと成長する。
エルナーゼ王国との厳しい戦争を戦い抜く大きな力となるはずだ。
「タカアキ、武器の制作については納得したが、遊撃隊をローテーションするというのはどういう意味だ?」
考え込んでいると、ズメイがやや困惑したように尋ねてきた。
「そのままの意味だ。第2、第3遊撃隊を作り、俺が魔王城から離れられない時にエルナーゼ王国軍補給部隊の妨害をやってもらう」
「タカアキ以外が指揮を執るということか?お前が一番知っていることだろうが、戦術と戦略についてある程度の理解がなければ補給部隊襲撃の指揮は取れない。今の魔王軍にお前以外の適任者がいるとは私は思えない」
どうやら俺の作戦指揮能力を高く買ってくれているようだ。
だが、魔王軍には俺以外にも指揮官がいる。
だから俺はズメイの言葉に淡々と返事を返す。
「いるじゃないか。俺以外に魔王軍の戦略について考えを巡らしている者がここに2人」
「まさか!私と魔王様を指名するのか⁉」
ズメイがローブの下で目を見開いた。
心底驚いているらしい。
「私は今まで連戦連敗の魔王軍の参謀だったんだぞ」
「でも今は違う。この3人で頭を悩ませて魔王軍を改革しようとしている」
「しかし、実戦で上手くやれるかは分からんぞ…」
ズメイはなおも悩んでいる。
地名決めでの自信はどこへ行ったんだ。
だが不安な気持ちも分かる。
俺も魔王軍別働隊を始めて率いた時は、大きな責任を感じた。
「大丈夫だ。ズメイは戦術について基本的なことは理解している。慎重に補給部隊を狙えば失敗することはない」
さらにこれまで散っていった魔王軍の戦士たちの無念をはらすチャンスだと励ますとズメイの目の色が変わった。
やる気になってくれたようだ。
あとは魔王の説得だ。
その身に纏う魔力は膨大で、戦場に出れば絶大な戦力になるだろう。
彼の力に頼らない手はない。
魔王の飛び出した眼球を見つめながら頼み込む。
「魔王様、突然の提案で申し訳ありません。しかし、魔王軍全員のためにお力を振るっていただけないでしょうか」
魔王が返答を返す前にズメイが発言した。
「タカアキ、私は全力を尽くして敵補給部隊を攻撃する。だが、魔王様を前線に出すわけにはいかん。私とタカアキの部隊で2交代制にしてくれ」
ズメイの言いたいことは分かる。
だが、賛成することはできない。
「最高指揮官が前線で戦うのはリスクが大きいことは分かっている。しかし、今の魔王軍には魔王様という強力な戦力を温存する余裕はない」
「その分も私が働く!だから---
「よい、ズメイ。黒騎士、いや、タカアキには本当のことを話すべきだ」
魔王の静かな声が、俺とズメイの論争を断ち切った。
「魔王様、それはいけません!タカアキは私が納得させます!!どうかもう少しお時間を---」
ズメイは自分が指揮官に指名された時よりも慌てている。
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