風の鎮護歌

ななえ

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オリビエとハスラム 3

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「ハスラム、怖い」

 泣きながらオリビエは、ハスラムの腕にしがみつく。顔は声の方を向けてたまま。

「お姫様を守る騎士みたい。けど、オレ悪者じゃあないから、ただ会いたかったんだ。泣くなよ」

「誰だ!」

 ハスラムは姿の見えない敵に怒鳴った。

「さぁーてね?」

 笑いの含んだ声で返される。

「いやぁー!」

 同時にオリビエの悲鳴も上がる。
 両頬を手で激しくこすっていた。
 あの声の主が、撫ぜるように風を当ててきたのだろう。
 止まない風から逃れようとハスラムの胸に顔を埋めて大泣をきした。

「泣かせるなよ!」

 オリビエをきつく抱きしめ、低く響く声を出してハスラムは見えない相手を威嚇した。

「怖いな。オマエだって、いつも泣かせているくせに」

「こいつがやるなってことするからだ」

「そうか、からかって泣かせていることも知ってるぞ」

 オレならばいいんだ! と、顔に書いているといいたいが、この少年は口がたちそうなのでやめた。

 それに聞かれたくないのか、オリビエの両耳に手を当てている姿も面白い。

「う、うるさい! オレたちに何の用だ?」

「挨拶だよ。また会うことがあるけど、その時はよろしくってやつ」

「オレたちはもう会いたくない。姿を見せろ」

「まあ、そういうなよ。オレ、今本来の姿じゃあないんだ。元の姿を取り戻すまで、それまでそのお姫様を守ってやってね」

「オマエにいわれなくてもそうするよ。じゃあ、用事をいえよ!」

「お楽しみってことで」

 語尾と同時に風景が変わった。
 元の場所に戻っていた。
 風は強く吹いたままだった。


「あれ、なんだったんだ?」

 異空間へ飛ばされたことは分かっていたが、飛ばしたものの正体は分からないだった。
 使われた魔法は、かなり高度なものだろうとしか。

「また会うみたいなこといってたな」

 できれば会いたくない。それにアレは自分ではなくオリビエに会いたいようだった。
 あんな怖い目に遭わされたのだ、次に会えば声を聞くだけでオリビエは泣きじゃくるだろう。
 それは避けたい。

「その時にオレがいればいいんだけど」

 四六時中いっしょにいることは無理だった。

「それにアレも心配だな」
 
 もう一つのやっかい事があった。
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