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18.デートの約束
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翌週の火曜日、深夜近くになって、煌也から連絡があった。
『今、日本に帰ってきたところ。
あとで、また連絡するね』
とりあえず、仕事は無事に終わったらしく、金曜日が待ち遠しくなっていた郁に、翌日、煌也からメッセージが入っていた。
『金曜、食事とかどう?』
食事のあとに、ブルー・ムーンに行くのだから、郁には、拒む理由はない。
『勿論、大丈夫です。楽しみです』
『よかった。ブルー・ムーンに行く前に、少しゆっくり食事でも取りたいんだけど。
郁、どこかリクエストある?』
リクエスト、と言われて、郁は考え込んでしまった。
学生時代から東京で過ごしているが、あちこちに外食に行くことは少なかったからだ。面倒だったし、節約していたこともあるし……。せいぜい、学生の頃バイトしていた焼き肉屋、それと学校の近くにあったラーメン屋くらいしか、行かないような気がする。
『俺、あんまり、外食に行かないんです』
そういえば、婚約者がいた頃も、あまり外食はしなかった。いつも、彼女が店を決めて、彼女がデートの段取りをしていた。そう言うことも、彼女は、不満だったのだろうと思う。
『じゃあ、どうしようかな。郁、東新宿だったよね?』
『はい』
『……いかにもデート、な、雰囲気の良い店と、気軽な店と、雰囲気皆無の居酒屋と……いろいろ在るけど、どこが良い?』
『俺はどこでも良いんですけど……』
と、過去の恋愛のことを思い出して、郁は口ごもった。店も知らない。煌也の好みも知らない。何もかも、全部、ダメな気がする。それは、良くない。
『煌也って……、なにか、好きな食べ物は?』
『えっ? 俺は……郁だけど?』
思わず、顔が熱くなる。好物だと言われるのは悪い気はしないが、今は、そういう場合ではないのだ。
『そうじゃなくて……』
『あまり、好き嫌いはないと思う。けど、酒メインとか、長いコース料理とかよりは、もっと軽い食事が良いし、焼き肉のあと、ブルー・ムーンにいくって言うのも、ちょっとなあ』
なんとなく、なまなましいからだろうか、と思った郁だったが、煌也の答えは違うようだった。
『焼き肉の薫りがする郁だと、なんとなく、店に行っても、気になる気がして……』
確かに、いくら排煙設備がついていても煙に燻されているようなものだ。そういう状態だと、少し、ムードに影響がありそうだとは思った。今まで、ムード、というのを気にしたことがない、郁ではあったが……。
『軽めの食事、雰囲気が良くて……』
郁は、傍らのパソコンで、店を検索する。条件を入力していくと、だんだん候補が絞れてくる。
『和洋どっちが良いですか?』
『和食もあるの?』
『……高価なお店とかなら』
東新宿エリアには、ホテルも数多い。ホテルの和食であれば、それなりの食事が出来そうだとは思う。
『まあ、俺は価格帯はあまり気にしないんだが……、なんとなく、郁は、もう少しカジュアルな店の方が楽しめそうじゃないかな? であれば、気軽な雰囲気で個室、とかだと嬉しいかな』
『なるほど……、あっ』
郁の目に留まったのは、珍しい料理の店だった。
『なにか、気になるお店在った……?』
『気になるというか……珍しい料理のお店だなと思って。……地元とかでみたことなかったし、美味しいのかなあって……価格帯、少し上がるし、あんまり気楽な感じじゃないんですけど……』
『ふうん? でも、郁が気になるって、珍しいんじゃない?』
『そうですか?』
『うん。郁って、食事より、あっちって感じだから』
言われて恥ずかしくなる。返信が遅れると、煌也が続けて聞いてきた。
『それで、何の料理のお店なの?』
『あっ、すっぽんみたいです』
『……………』
『……………』
『……………』
『……………すっぽん……』
『あ、煌也、嫌い?』
『いや、嫌いじゃないし……そうだよな。うん、じゃあ、頑張るから、すっぽんにしようか』
『頑張る?』
価格帯が少し上なので、そういう意味で『頑張る』なのだろうか、と郁は少し首を捻る。
『でも、別にこのお店じゃなくても……』
『いや、俺も、……自信がないわけじゃないんだが、頑張りたいから、すっぽんにするよ。うん、確かに、スッポンは利くんだ』
うんうん、と肯いているだろう煌也の言葉を見ながら、郁は首を捻る。
昔、近所に住んでいた、居酒屋の娘は、『スッポンは、お肌に良いのよ♥』と言っていたのを思いだしたからだ。煌也は、若々しくてみずみずしい肌をしているのに、気を遣っているのか、と郁は、手入れに熱心でないことを、少しだけ羞じた。
(そうだよね……煌也に触って貰ったり、皆に見て貰うんだから……肌とか、いろいろ、お手入れ……したほうがいい、かも知れないよね……)
とりあえず、金曜日の十九時にすっぽん料理の予約を入れて、そのあと、ブルー・ムーンへ向かうと言うことで話はまとまった。
「ああ、金曜が待ちきれないなぁ……」
待ちきれない、と同時に、確実に、金曜日は会うことが出来るのだ、と身体の奥が、ずん、と疼いた。
『今、日本に帰ってきたところ。
あとで、また連絡するね』
とりあえず、仕事は無事に終わったらしく、金曜日が待ち遠しくなっていた郁に、翌日、煌也からメッセージが入っていた。
『金曜、食事とかどう?』
食事のあとに、ブルー・ムーンに行くのだから、郁には、拒む理由はない。
『勿論、大丈夫です。楽しみです』
『よかった。ブルー・ムーンに行く前に、少しゆっくり食事でも取りたいんだけど。
郁、どこかリクエストある?』
リクエスト、と言われて、郁は考え込んでしまった。
学生時代から東京で過ごしているが、あちこちに外食に行くことは少なかったからだ。面倒だったし、節約していたこともあるし……。せいぜい、学生の頃バイトしていた焼き肉屋、それと学校の近くにあったラーメン屋くらいしか、行かないような気がする。
『俺、あんまり、外食に行かないんです』
そういえば、婚約者がいた頃も、あまり外食はしなかった。いつも、彼女が店を決めて、彼女がデートの段取りをしていた。そう言うことも、彼女は、不満だったのだろうと思う。
『じゃあ、どうしようかな。郁、東新宿だったよね?』
『はい』
『……いかにもデート、な、雰囲気の良い店と、気軽な店と、雰囲気皆無の居酒屋と……いろいろ在るけど、どこが良い?』
『俺はどこでも良いんですけど……』
と、過去の恋愛のことを思い出して、郁は口ごもった。店も知らない。煌也の好みも知らない。何もかも、全部、ダメな気がする。それは、良くない。
『煌也って……、なにか、好きな食べ物は?』
『えっ? 俺は……郁だけど?』
思わず、顔が熱くなる。好物だと言われるのは悪い気はしないが、今は、そういう場合ではないのだ。
『そうじゃなくて……』
『あまり、好き嫌いはないと思う。けど、酒メインとか、長いコース料理とかよりは、もっと軽い食事が良いし、焼き肉のあと、ブルー・ムーンにいくって言うのも、ちょっとなあ』
なんとなく、なまなましいからだろうか、と思った郁だったが、煌也の答えは違うようだった。
『焼き肉の薫りがする郁だと、なんとなく、店に行っても、気になる気がして……』
確かに、いくら排煙設備がついていても煙に燻されているようなものだ。そういう状態だと、少し、ムードに影響がありそうだとは思った。今まで、ムード、というのを気にしたことがない、郁ではあったが……。
『軽めの食事、雰囲気が良くて……』
郁は、傍らのパソコンで、店を検索する。条件を入力していくと、だんだん候補が絞れてくる。
『和洋どっちが良いですか?』
『和食もあるの?』
『……高価なお店とかなら』
東新宿エリアには、ホテルも数多い。ホテルの和食であれば、それなりの食事が出来そうだとは思う。
『まあ、俺は価格帯はあまり気にしないんだが……、なんとなく、郁は、もう少しカジュアルな店の方が楽しめそうじゃないかな? であれば、気軽な雰囲気で個室、とかだと嬉しいかな』
『なるほど……、あっ』
郁の目に留まったのは、珍しい料理の店だった。
『なにか、気になるお店在った……?』
『気になるというか……珍しい料理のお店だなと思って。……地元とかでみたことなかったし、美味しいのかなあって……価格帯、少し上がるし、あんまり気楽な感じじゃないんですけど……』
『ふうん? でも、郁が気になるって、珍しいんじゃない?』
『そうですか?』
『うん。郁って、食事より、あっちって感じだから』
言われて恥ずかしくなる。返信が遅れると、煌也が続けて聞いてきた。
『それで、何の料理のお店なの?』
『あっ、すっぽんみたいです』
『……………』
『……………』
『……………』
『……………すっぽん……』
『あ、煌也、嫌い?』
『いや、嫌いじゃないし……そうだよな。うん、じゃあ、頑張るから、すっぽんにしようか』
『頑張る?』
価格帯が少し上なので、そういう意味で『頑張る』なのだろうか、と郁は少し首を捻る。
『でも、別にこのお店じゃなくても……』
『いや、俺も、……自信がないわけじゃないんだが、頑張りたいから、すっぽんにするよ。うん、確かに、スッポンは利くんだ』
うんうん、と肯いているだろう煌也の言葉を見ながら、郁は首を捻る。
昔、近所に住んでいた、居酒屋の娘は、『スッポンは、お肌に良いのよ♥』と言っていたのを思いだしたからだ。煌也は、若々しくてみずみずしい肌をしているのに、気を遣っているのか、と郁は、手入れに熱心でないことを、少しだけ羞じた。
(そうだよね……煌也に触って貰ったり、皆に見て貰うんだから……肌とか、いろいろ、お手入れ……したほうがいい、かも知れないよね……)
とりあえず、金曜日の十九時にすっぽん料理の予約を入れて、そのあと、ブルー・ムーンへ向かうと言うことで話はまとまった。
「ああ、金曜が待ちきれないなぁ……」
待ちきれない、と同時に、確実に、金曜日は会うことが出来るのだ、と身体の奥が、ずん、と疼いた。
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