婚約破棄されたノンケの俺がドSな男にハマってる~カフェの裏では、秘密のハプニングバー・ブルームーンがやっている~

七瀬京

文字の大きさ
18 / 34

18.デートの約束

しおりを挟む
 翌週の火曜日、深夜近くになって、煌也から連絡があった。

『今、日本に帰ってきたところ。
 あとで、また連絡するね』

 とりあえず、仕事は無事に終わったらしく、金曜日が待ち遠しくなっていた郁に、翌日、煌也からメッセージが入っていた。

『金曜、食事とかどう?』

 食事のあとに、ブルー・ムーンに行くのだから、郁には、拒む理由はない。

『勿論、大丈夫です。楽しみです』

『よかった。ブルー・ムーンに行く前に、少しゆっくり食事でも取りたいんだけど。
 郁、どこかリクエストある?』

 リクエスト、と言われて、郁は考え込んでしまった。
 学生時代から東京で過ごしているが、あちこちに外食に行くことは少なかったからだ。面倒だったし、節約していたこともあるし……。せいぜい、学生の頃バイトしていた焼き肉屋、それと学校の近くにあったラーメン屋くらいしか、行かないような気がする。

『俺、あんまり、外食に行かないんです』

 そういえば、婚約者がいた頃も、あまり外食はしなかった。いつも、彼女が店を決めて、彼女がデートの段取りをしていた。そう言うことも、彼女は、不満だったのだろうと思う。

『じゃあ、どうしようかな。郁、東新宿だったよね?』

『はい』

『……いかにもデート、な、雰囲気の良い店と、気軽な店と、雰囲気皆無の居酒屋と……いろいろ在るけど、どこが良い?』

『俺はどこでも良いんですけど……』

 と、過去の恋愛のことを思い出して、郁は口ごもった。店も知らない。煌也の好みも知らない。何もかも、全部、ダメな気がする。それは、良くない。

『煌也って……、なにか、好きな食べ物は?』

『えっ? 俺は……郁だけど?』

 思わず、顔が熱くなる。好物だと言われるのは悪い気はしないが、今は、そういう場合ではないのだ。

『そうじゃなくて……』

『あまり、好き嫌いはないと思う。けど、酒メインとか、長いコース料理とかよりは、もっと軽い食事が良いし、焼き肉のあと、ブルー・ムーンにいくって言うのも、ちょっとなあ』

 なんとなく、なまなましいからだろうか、と思った郁だったが、煌也の答えは違うようだった。

『焼き肉の薫りがする郁だと、なんとなく、店に行っても、気になる気がして……』

 確かに、いくら排煙設備がついていても煙に燻されているようなものだ。そういう状態だと、少し、ムードに影響がありそうだとは思った。今まで、ムード、というのを気にしたことがない、郁ではあったが……。

『軽めの食事、雰囲気が良くて……』

 郁は、傍らのパソコンで、店を検索する。条件を入力していくと、だんだん候補が絞れてくる。

『和洋どっちが良いですか?』

『和食もあるの?』

『……高価なお店とかなら』

 東新宿エリアには、ホテルも数多い。ホテルの和食であれば、それなりの食事が出来そうだとは思う。

『まあ、俺は価格帯はあまり気にしないんだが……、なんとなく、郁は、もう少しカジュアルな店の方が楽しめそうじゃないかな? であれば、気軽な雰囲気で個室、とかだと嬉しいかな』

『なるほど……、あっ』

 郁の目に留まったのは、珍しい料理の店だった。

『なにか、気になるお店在った……?』

『気になるというか……珍しい料理のお店だなと思って。……地元とかでみたことなかったし、美味しいのかなあって……価格帯、少し上がるし、あんまり気楽な感じじゃないんですけど……』

『ふうん? でも、郁が気になるって、珍しいんじゃない?』

『そうですか?』

『うん。郁って、食事より、あっちって感じだから』

 言われて恥ずかしくなる。返信が遅れると、煌也が続けて聞いてきた。

『それで、何の料理のお店なの?』

『あっ、すっぽんみたいです』

『……………』
『……………』
『……………』
『……………すっぽん……』

『あ、煌也、嫌い?』

『いや、嫌いじゃないし……そうだよな。うん、じゃあ、頑張るから、すっぽんにしようか』

『頑張る?』

 価格帯が少し上なので、そういう意味で『頑張る』なのだろうか、と郁は少し首を捻る。

『でも、別にこのお店じゃなくても……』

『いや、俺も、……自信がないわけじゃないんだが、頑張りたいから、すっぽんにするよ。うん、確かに、スッポンは利くんだ』

 うんうん、と肯いているだろう煌也の言葉を見ながら、郁は首を捻る。
 昔、近所に住んでいた、居酒屋の娘は、『スッポンは、お肌に良いのよ♥』と言っていたのを思いだしたからだ。煌也は、若々しくてみずみずしい肌をしているのに、気を遣っているのか、と郁は、手入れに熱心でないことを、少しだけ羞じた。
(そうだよね……煌也に触って貰ったり、皆に見て貰うんだから……肌とか、いろいろ、お手入れ……したほうがいい、かも知れないよね……)
 とりあえず、金曜日の十九時にすっぽん料理の予約を入れて、そのあと、ブルー・ムーンへ向かうと言うことで話はまとまった。
「ああ、金曜が待ちきれないなぁ……」
 待ちきれない、と同時に、確実に、金曜日は会うことが出来るのだ、と身体の奥が、ずん、と疼いた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

溺愛前提のちょっといじわるなタイプの短編集

あかさたな!
BL
全話独立したお話です。 溺愛前提のラブラブ感と ちょっぴりいじわるをしちゃうスパイスを加えた短編集になっております。 いきなりオトナな内容に入るので、ご注意を! 【片思いしていた相手の数年越しに知った裏の顔】【モテ男に徐々に心を開いていく恋愛初心者】【久しぶりの夜は燃える】【伝説の狼男と恋に落ちる】【ヤンキーを喰う生徒会長】【犬の躾に抜かりがないご主人様】【取引先の年下に屈服するリーマン】【優秀な弟子に可愛がられる師匠】【ケンカの後の夜は甘い】【好きな子を守りたい故に】【マンネリを打ち明けると進み出す】【キスだけじゃあ我慢できない】【マッサージという名目だけど】【尿道攻めというやつ】【ミニスカといえば】【ステージで新人に喰われる】 ------------------ 【2021/10/29を持って、こちらの短編集を完結致します。 同シリーズの[完結済み・年上が溺愛される短編集] 等もあるので、詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。 ありがとうございました。 引き続き応援いただけると幸いです。】

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。 せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。 クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom × (自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。 『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。 (全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます) https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390 サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。 同人誌版と同じ表紙に差し替えました。 表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

処理中です...