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第3話 勝ちたいの
しおりを挟む1学期期末テストも無事に終わり、太陽の光が一層と大地を照らす今日この頃。俺はこの蒸し暑い中で学校中の掲示板にポスターを貼る作業に勤しんでいた。
本来なら冷房の効いた部屋で悠々自適な放課後。それなのに、なぜ俺は青春とは遠くかけ離れた人気の無い廊下で汗を流さなければならないのだろうか?
その答えは遡ること一週間、体育祭も終わり次期生徒会長を決める選挙が始まるころだった。
え?……体育祭?
高校生活が始まって早3ヶ月というのに部活仲間も友達もいない俺にとって、体育祭などただ走って終わるだけのイベントである。わざわざ語るようなことがあると思うだろうか?
はい、ということで割愛。
・ ・ ・ ・ !
「ねぇ空君、生徒会とかって興味ない?」
家で夕食を食べている時に、何の前触れもなく奏が話を振る。
「生徒会?なんで急に」
「んっと、そろそろ次の生徒会選挙があるんだけど、私って部活は行ってないじゃない?それで学年主任の先生がやることないならって生徒会長の立候補を進めてきて」
まぁ確かに教師生徒ともに人望は十分、勉強もできて生活態度も芳しい。さらに部活にも入ってないとなればこれほど適した人物はいないだろう。
「ふーん…で、なんで俺?」
「なんか生徒会長以外にもいろいろ役があって、基本的には立候補の時に後援してくれた人がその役につくみたい。でも空いてるところは生徒会で決めていいって言ってたから、もし空君が興味あるならどうかなって思って」
なるほど、つまり毎日測帰宅してダラダラしてる俺のことが心配ってわけですね。
しかし心配ご無用です。むしろ先輩ばっかりのところに入っていったら余計に精神が持たなくなりそうなんで。
「んー、俺はいいかな……」
「でも部活もやってないし……。高校3年間なんてあっという間だよ?」
うん、まぁその通りだと思うんだけど、世の中にはいろいろな人種がいるんですわ。生まれつきイベントパワーの低い人とか。
それに、どうせ俺が生徒会に入ってもコミュニケーションとか取れないだろうし、浮くのは簡単に想像できるわけで……。
「俺、そういうの向いてないし」
そう言って俺は再度ご飯に手を付ける。
その様子を見た奏は少し残念そうな顔をするが、俺の性格を知っているからかそれ以上は聞いてこなかった。
当然、俺もその時点でこの話は終わったものだと思っていた。
そして今日に至るわけだが……。
< ・ Д ・ >
「菩土って子いる?」
いつも通り授業を終え、早々に帰宅しようとしていた俺の教室に少しきつそうな女の声が響き渡る。腕を組み、トントンと不機嫌そうに教室の中を睨んでるところを見ると、声の主は間違いなくこの人だろう。
「あ、俺ですけど……なんですか?」
「ちょっといい?」
そう言って腕を組んで教室のドアにもたれかかっていた女学生は廊下の方へと歩き出す。ワイシャツを腰に巻いたほぼ私服のような服装、後ろ髪をアップテールにしてる辺りにリア充っぽさを感じる。
見たことない人だけど同じ学年の人だろうか?いや、それよりも態度とか喋り方とかがちょっと怖いんだけど、ヤンキーとかだったらどうしよう。
なんて考えながら廊下を歩いて少々、別棟まで来たヤンキー(仮)は周囲に人がいないことを確認してから空き教室へと入っていく。
何の話だろう、本当に怖い。なんてことを思いつつもその人に続いて教室へと入っていく。
「ドア」
「あ、すいません」
ヒエェェッ!
不機嫌というか、言い方がもう全然優しくないんだもん。え、何?他人に聞かれたらまずい話なの?
ドアを閉め、改めてヤンキー(仮)と向き合う。
暑さと緊張のせいで背中の毛穴という毛穴から汗が噴き出る。基本的にボッチは蚤の心臓な訳で、こればかりはもうどうしようもない……。
「……」
「……」
ヤダ、ちょっと目つきも怖いんですけど……。てか、何この沈黙タイム。すごい怖い。
なんて思うのも束の間、一切視線を逸らさなかったヤンキー(仮)の口がゆっくりと動き始める。
「手早く話しましょう」
自分から呼んどいて何を偉そう――。
「キミのお姉さんに勝ちたいの」
俺の考えを遮るようにヤンキー(仮)は口を開いた。
その声は芯が通っていて、それでもどこか淡々としていた。ジッと俺を見つめる視線はまるで獲物を狙う豹のような眼だ。
「だから、協力して」
締め切られた教室。
汗が止まる気配はなさそうだ。
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