リア充な世界にこんにちは

茜るるる

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第2話 嫌いなのは

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 一日の授業が終わり、大半の学生は楽しい楽しい部活動とやらに足を運ぶ。
 何やらそこでは友達ができるとかできないとか。部活に入ってない俺には関係ないんだけどね。



 友達を作らないのかって?

 滑稽極まりない疑問である。

 1学期の期末試験が迫ろうとしている時期、教室内ではすでに部活や同じ中学といったグループが既に出来上がっている。どうせ今から頑張って輪に入ったとしても絶対に浮くのは経験済みだ。

 それに俺自身、友達が欲しくないといえば嘘になるが、だからと言って一人が嫌かと聞かれればそうでもない。これは言い訳でもなんでもなく、友達がいたらいたでそいつらに合わせなければならないということに嫌気が差すからだ。

 帰宅の準備をしつつ、教室をぐるっと見渡す。

 ほら、無理やり合わせてますよ感あふれる笑顔がそこら中に転がっている。
 面白くもないのに笑わなくちゃいけないというのはたいそう疲れるんだろうな、きっと。こういうのを見ると別にボッチでもいいやって思えてくるのは俺だけじゃないはず。

 え?その割にはよく喋りますねって?
 何を馬鹿な。コミュ障ボッチだって人一倍喋りますさ。頭の中オンリーだけどね……。



 そんなこんなで自分の境遇を肯定しつつも、味気のない一日の学校生活が終わる。
 本当に何のイベントもない。ラノベのような高校生活を送っている奴はいるのだろうか、と思うほどに無味無臭の学園ライフだ。

 はてさて、ということで帰宅部である俺はというと、誰に挨拶をすることもなく帰路につくわけである。
 校舎を出てみると俺以外にもちらほらと下校しているわけだが、だからと言って仲間意識なんぞ生まれはしない。生まれるのはクラスメイトに会わないようにと願う偏屈心だけである。



 下校時間約5分。一切の会話なく早々に帰宅するものの、特にやることあるわけではない。
 こんなことなら部活をやっておけばよかった。なんてことはあんまり思わないが、毎日やることがないというのも困ったものだ。

 おもむろにベッドに潜りこみ、スマホのロックを解除する。
 LINEの通知なんて来ているはずもなく、なんとなくダウンロードしてみたCMなんかでよく見る話題沸騰中のソシャゲアプリを開く。と言っても、たかが高校生に課金できるはずもない訳で、対して強くもなければ超レアなキャラもいない。



 果たしてソシャゲの何が面白いのだろうか?



 それはきっと『レアなキャラ当たったー!』とか、『マルチプレイしようぜー』なんて、友達とわいわいするのが楽しいのだ。
 所詮ソシャゲはリア充のために作られたものであって、ボッチが楽しむことを目的にはしていない。もう数年前に自己解決した問題である。

 画面内のかわいいキャラクターからログインボーナスだけ受け取り、そっとスマホの画面を閉じる。
 よし、寝るか。


「ただいまー」


 布団の中で眠りに就こうとしたところで、1階から奏の上機嫌な声が聞こえてくる。概ね学校で何か賞でも貰ったのだろう。

 トントントンと軽快に弾む階段を上ってくる音。
 ここで俺はいつも通り布団に潜り込み、臨戦態勢に入る。と言っても、姉に対抗できるような武器(栄誉)は当然持ち合わせていないわけで、攻撃ではなく防御に徹することにしよう。


「ねぇ空君見て見てっ!この前に読書感想文コンクールで金賞貰ったんだけど」


 勢いよく開いた俺の部屋の扉と、きっとそこに立っているであろう嬉しそうな顔の奏。見なくても分かるくらいに想像できる状況である。
 それはそうと、いい加減ノックというものを覚えようか……。

 なんて冗談はさておき。
 奏の声が俺の部屋に響き渡るが、決して返事はしない。これぞまさしく居留守ならぬ居眠りである。
 ん?なんか同じような言葉があったような気がするけど……まぁいいか。


「寝てるのー?」


 寝てない。

 でも返事はしない。
 どうでも良いけど、あなた高校に入ってから賞何個目ですか?なんて疑問が思い浮かんでもやはり口にはしない空君である。





 正直なところ、俺は奏が嫌いだ。
 お世辞にも俺は勉強も運動も優れているとはいい難い。コミュ力もないし、何か秀でた特技だってない。きっと異世界転生したとしても、せいぜい村人D止まりだろう。

 傍や奏はと言うと、俺にないものをすべて持っていると言っても過言ではない。
 今通っている高校だって地元では有名な進学校だが、家事をこなしつつも定期テストでは毎回上位に入り込む。しっかりテスト勉強をしても真ん中ちょい下の俺とは大違いである。

 別に奏が悪いという訳ではない。と言うよりも、何一つ悪いところはないだろう。いわゆる自己嫌悪と言うやつだ。



 ふぅと小さなため息と共に、扉の閉まる音がする。


「あっつ……」


 奏の気配が消えたのを確認し、ゆっくりと被っていた布団を脱ぐ。
 6月末と言う初夏の夕暮れ。流石に羽毛布団を被っていると汗がジワリと滲み出てくるわけで、暑い以外の感想は出てこない。
 やっぱり夏は嫌いだ……。なんてことを考えながらベッドから足を出す。


「んっふっふ、引っかかったね空君」


「ふぁっ!?まだいたのかよ」


 油断したところにニヤリと悪っぽく笑う顔は、家族と言うマイナス補正がかかっても可愛いと思ってしまう。
 が、そのあどけない表情がこれまた俺の腐りきった心にグサリと刺さるわけである。

 って、子供かお前は!
 なんて頭の中で突っ込んでみるが、こんな子供じみたやり取りが案外楽しかったりする。


「じゃあ夜ご飯作ってくるから」


「んー」


 火照った体を手で仰ぎながら、今度こそ奏が出ていくのをしっかりと見送る。
 と同時に、額から一筋の汗が垂れる。クーラーを入れるには少しばかり時期も早いし、窓を開けることで我慢しようではないか。

 窓を開けるといつの間にかオレンジに染まる景色が広がっていた。
 2階からの景色というのは別段伝えるものもないが、初夏の夜風というものはどうにも心地よい。こんな風を浴びていると、そろそろ風鈴でも出すかなー。なんてどうでもいいことが頭に浮かぶ。



 やっぱり、そんなに嫌いじゃないみたいだ。


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