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第11話 猫のワルツ
しおりを挟む生徒会選挙投票開始の前日、相も変わらず猫村先輩は不機嫌である。
何がそこまで不機嫌にさせるの?と聞きたいくらいにこの上ない不機嫌さはいっそ敬意に値するのではないだろうか。
なんて御託は置いといて……。
投票日が近付いているからか、他の後援の人が顔を出してくれるおかげで俺のやることは全くと言っていいほどない。むしろこの場にいる必要があるのか疑問に思うくらいだ。
肝心の説得はというと、誠に残念なことに無駄な努力という結果に終わった。もしこの場に他の先輩がいなかったら俺はどれほどの罵詈雑言を浴びせられていたのだろうか、と考えると猫村先輩を除く先輩方には感謝の念も尽きないわけである。
まぁもろもろの雑用をやったのでそこは大目に見て頂きたい。
……。
いや待て、本来は感謝して貰うべきところではないだろうか?と言っても、あの猫村先輩に限ってそれを望むのは高望みが過ぎるというものだ。なんて相変わらず俺も自己解決に勤しむ日々である。
なんにせよ、とうとう明日から奏と猫村先輩の一騎打ちが始まるわけだ。
この明日からと言うのはすなわち二日間。立候補者とその後援が昼休みなどの放送で演説を行うためのものであり、その二日間の合計獲得票数によって生徒会長を決定するらしい。
明日からの演説に向けて何やら会議をする2年生軍団と、それを傍から眺めるワタクシ。勿論、その会議に混ざろうと思えるほどのコミュ力もありはしない。
ということでほんとにやることがない訳である。
さて、ではちょっと早いけど帰りますか。
明日からの演説の打ち合わせをしているであろう先輩たちを横目に鞄を持つ。
流石にあの輪に入って『帰ります』なんてことは言えないのでこのまま黙って帰ることにしよう。お疲れ様でした。
廊下に出てすぐ、校舎の窓から差し込む暖かな日差しに思わず片目を閉じる。こんな時間に帰るのは割と久しぶりかもしれない。
いや、多く見積もっても一週間ちょっとか……。
「おい」
おっと、何やら後ろから聞き覚えのある不機嫌そうな声がするではありませんか。
おそらく勝手に帰ることに怒ってるのでしょう。と、この一週間で学んだ脳細胞が瞬時に答えをはじき出す。
「すいません、俺がいても邪魔そうな感じだったので」
うん、嘘は言っていない。
……気がする。
「あ、いや……」
珍しくも猫村先輩がしおらしく顔をそむける。どうやら怒っている感じではなさそうだが……。
そして腕組みはしているものの、右手に持つお菓子の箱を俺は決して見逃さない。
まさか俺にくれるのか?あの猫村先輩が!?
「その、なんだ……色々助かった。お礼をしないのは礼儀としてなってないと思ってな……」
これが俗にいう、『デレ』と言うものか……。
こんな一面もあったのかと素直に驚く。
ツン:デレが99:1くらいだろうか?頬が少し赤らんでいるような気がしないでもない。
「……」
意外過ぎてどう反応していいのかも分からず、とりあえず差し出されたチョコレートの箱に視線を移す。どこのスーパーにでも売っている、たかだか数百円のチョコレートだ。
が、これがまさか高校生活初の女子からもらうお菓子だとは……。俺なんて以外過ぎて声が出ないほどである、ましてや猫村先輩だって夢にも思わないだろう。
ありがたく頂きます。
女子にお菓子を貰えるなんて、これが高校生かとテンション少し上がってきた。
「じゃあ明日からは私たちでやるからもう来なくていいわ。ご苦労様」
なんて思うのも束の間、いつも通り冷淡にそれだけ言うと猫村先輩は早々に踵を返した。まぁ別に?初めからイベントなんて期待してなかったし……。
「あの」
無言のまま、振り返った不機嫌そうな面が俺を突き刺す。
こんな状況でこんなことを言ったら殺されてしまうのでは?と思えるほどに猛々しいオーラである。
最優先事項。
それは生徒会役員にならないこと。そのためならなんだって……。
「最悪、まだ手はあるんで……」
「あら、それは助かるわ」
そんな俺の覚悟を一蹴するかのように、猫村先輩は不敵に笑った。
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