ツクチホ短編・黒・まとめ

はるば草花

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征服3

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「…まあ、たいしたことじゃないか。セリは生け贄にされたんだ」

「…は?」


比喩的表現として言ったのは分かるが。…穏やかな言葉とはいいがたいぞ。

ハルガは言い切ったとでもいうように俺の髪をいじって遊んでる。


「…おい…」

「睨んでもそそられるだけだぞ? だから簡単な話だ。ああ、言ったか? というか知っているか? 俺は世界的な企業の家系であると」

「…なんとなくそうじゃないかとは思っていたが…、跡継ぎなのか?」

「んー。一応? 小さいとこだと誰がトップになるかとかで争うようだが、うちほどになると、トップなんて面倒で遊びたいと言うものが多いぞ? トップになれずとも遊んで暮らせるだけの金と力は手に入るからな。それなのに面倒なことはしたくないだろう?」

「わかんねえよ。男なら、一番上がいいだろう」


少なくとも俺はできるだけ上がいい。馬鹿の下とかありえない。そうはいってもこういう男の存在はあるのだから、世界で一番とはさすがにこの歳で思わないが。


「セリは上がいいんだな? 俺も面倒は好きではないが…。セリが手に入るなら悪くないと思ったぞ?」

「それは…」


手に入る? 強姦って意味じゃないよな。犯罪ならそんなに上でなくてもできる。


「分からないか?セリは俺に用意された生け贄。どうか試しに味わってみてくださいということだったぞ?」

「は………」


………ちょっと…、待て。それは…、まさか。ああ、でもそれなら。


「ああ、そんな顔することはない。セリはそこらの安っぽいのとは違う。俺の為に、俺の持つ、俺がこれから手に入れる、大きな力にすり寄る為に極上品として差し出されたんだ。つまりはセリなら俺のお気に召すだろうと選ばれた。この国にいるたくさんの女や男の中で選ばれたのであって、捨てられたんじゃない。一番の者を神に捧げるのは当然だろ?」


慰めてもいるつもりか、ハルガは俺の顔を柔らかな手つきで撫でる。その表情はいつもの余裕そうなままだが。


「お前が神かよ?」


強気に返すのは、話を理解したくなくての無意識のことかもしれない。


「まさか。ただの人間だ。だが、見えない神よりも恐れる者は多いかもな」


ハルガは薄く笑う。この男が望めば、下の人間は簡単に人生を左右させられそうだ。


「セリは選ばれた」


こんな上から目線の言い方も、本当に上なのだとしたら、言い返すことがどれほどの人間にできるのだろうか。


「は、それでもお前のほうが上で、俺は下ってことだ」


例え選ばれたとしても、生け贄ってことは、俺の人生、捧げられた時点で終わりじゃないか…。


「…なるほど。そうか………」

「?」


何故か考えだしたハルガ。意味が分からないがそんな奴放っておいて俺はシャワーを浴びに行く。動くと行為の名残を感じて不快だが、無理矢理忘れて進んだ。

浴室に入ろうと手をかけた時、後ろから男の手が伸びてきて俺を捕まえる。


「ひどいな。主人予定の男を放っていくなよ?」


主人なんて言葉に眉間に皺ができた。しかも予定とかどんなだ。


「俺の勝手だ」


意味なくも睨むのは、男としてのプライドだろうか。


「強気なのは好みだが、少しくらい甘えてほしいものだぞ?」

「気持ち悪い」


甘える俺なんて吐き気がする。


「やれやれ。警戒をとくには時間がかかりそうだな」


襲った奴がよく言う。この男としては言うとおりにならないことがほとんどないから不思議なのだろうな。

そのまま一緒に浴室に入ることになった。ここでも抵抗なんてできないし。…もう、あまり抵抗する気はないかもしれれない。


俺はもう、たいして価値のある身ではないのだ。抵抗になんの意味がある?

浴室を出た後は帰っていったハルガ。仕事があるとかなんとかほざいてた。ここへの留学なんてしないで仕事してればいいだろうに。
俺が捧げられたことにでも関係あるのか?

なるべく考えないようにしても1人になると勝手に考え出す。

俺はつまり誰かに売られた? 家族に? 俺の家だってかなりの力があるはずだ。そこの跡継ぎだぞ。ハルガの家は外国だろうし、どうしようもないだろうが、俺を勝手に生け贄にした奴くらいなら糾弾できるだろう。それなのに俺は選ばれたとなると家族が関わった可能性は大きい。家族が裏切ったことに感傷的にはならないが。

この学園で力のある人間は確実に俺を生け贄に選んだ者に関わっているのだろうな。

権力のある複数の人間が俺をハルガの前に差し出した。ハルガの口振りからすると興味でやってきて俺を襲ったみたいだし、ハルガが選ぶことがなければ、俺は安全でいられたのか、それとも惨めな生け贄として惨めな扱いを受けることになっていたのか。それは考えてもしかたないが。

もう俺の存在なんてないに等しい。

生け贄という事実を受け入れるだけの精神はさすがに持ち合わせていないようだ。

どうすればいいのか、そんな選択をすることもできず俺は流されるだけ。
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