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拘束5
しおりを挟む「お坊っちゃんなヒサカには難しい話だったか? 簡単な話だ。お前を脅す材料は役員達の弱みだが、学園を卒業した後までだとそのネタじゃ心許ないからな。さらにお前が一生奴隷になりそうなものでも作ろうかと思ってな」
「………は?」
一生奴隷にしたいという言葉も理解したくないが、どうしてそうなるのか分からない。
「お前は意外と真面目だろう? その上ただの知人の役員まで守ろうとするお人好し。そんな奴の一番いい鎖は、負い目なんじゃないかと考えた。いい案だろ? 自分のせいだからしかたないとずっと俺の我が儘を断れない」
最終的に実元は重傷をおった上に風紀委員でなくなるという筋書きだった。
苦しそうな振りを実元がしてさえいれば、比坂は側にいつづけただろう。
「まあ、ばれたなら仕方ない。それでもずいぶんと衝撃は与えたようだしなあ? もっと弱るといい。俺が喰ってやるから」
そう言って比坂の身体を引き寄せようとして腕をとった実元だったが、比坂は身体を動かしそれをはずす。
今まで従順にしていた比坂なので実元は驚くが、さすがに衝撃の事実を理解するのに時間がかかるのだろうと考え、さらに手を出すことはしなかった。
比坂はわずかに身体を揺らしながら実元の部屋を出ていった。
その後、転校生はあっさりと再び転校してしまい、騒動はあっさりと収束していった。
役員達も仕事を思いだし、比坂が体調が悪そうなので、仕事はしばらく自分達がすべて引き受けるということになり、比坂は生徒会室に行くこともなくなった。
数日たって、実元は頃合いだろうと比坂に自室に来るように伝えたのだが、1日待てどやってくる気配がない。もう1度信用のおける人間に伝えさせたが、比坂はこない。
どういうことかと眉間を寄せていた時、風紀委員室に生徒会役員がやってきて、ここ数日比坂が部屋にこもっていて心配だと言ってきた。
実元もどういうことだと思い、すぐに比坂の部屋へと向かった。
「おい、ヒサカ?」
心配だからといって手に入れた鍵を使って中へと入る。部屋の中は暗く、窓からのわずかな光が部屋を照らしていた。
「…なにをしている?」
実元は困惑した。
比坂はソファーに座って俯いていたが、制服を着た状態でしかも適当に着たという感じでいる。
「おい」
近くに寄ってかがみ、比坂の顔を見る。
その目は虚ろとでもいうのか、目の前の実元が見えてないかのようだ。その目は、諦めた目じゃないかと実元は感じた。
何故そんな状態になったのか。心当たりはある。心が弱らないかと考えていたのだから。
自分が追い込んだ。中途半端な出来で終わったが、それなりに衝撃になっただろうと思った。
そしてそれによって弱りきった人は、誰かに縋るようになるのではないかと考えた。
だが、結果、比坂は縋ることを考えるのでなく、なにもかもに諦めてしまったのではないか。
そこまで予想が出来なかったが、これでは困る。自分を見てはくれない。
それ以上に、もともと追いつめたかった訳じゃない。
「ヒサカ…」
声が震えた。
「俺が悪かった」
懇願する。
これまで、どうして比坂を追い込んだのか、全てを語る。それしかできることが思いつかなかった。
比坂に告白を断られた後、それでもどうしても諦められなかった実元は生徒会役員の弱味を知って、これを利用すればいいんじゃないかと考えた。
脅しで気持ちを手に入れることは出来なくても、自分のものにできればそれでいいと思った。
そしてそれは、さらに飢えを呼び、比坂を手放すなんて考えられなくて、それでさらに側にいさせる為に、計画を考えた。
「…好きなんだ。今も、きっとこれからも、どうしようもなく…」
やってはいけない行為だと分かっていた。それでも、気持ちは抑えられなかった。悔やむ今でも、好きでしかたなく、手放せるとは思えない。
だから懇願する。もう何もしないから、その代わり自分の側にいてほしい。
そんな懇願を比坂は、ぼんやりとしたまま、はっきりしない意識の中、聞いていた。
ゆっくりと実元のおかした事を理解していく。
そして、その事にたいしての自分の気持ちを確かめる。
「…………馬鹿じゃねえか…」
そんな気持ちになった。実元の行ったことは腹立たしい行為であり、犯罪だ。
それでも懇願する姿を見て、自分は嫌われていたわけでないと知ったことで、安堵もした。
そして、そんな気持ちであんな事をしたのかと思うと馬鹿じゃないかと思った。
馬鹿すぎる。
「ヒ、サカ…」
比坂の目が、前のような強さが戻っていて、実元は不安を抱えつつも、救われたような気がする。
「…どうしようもない馬鹿だな。…しょうがないから、仕切り直しで許してやるよ」
罪をなかったことにしてのやり直しという意味。それは許されたのか、突き放されたのか、はっきりはしない。
「………わかった」
それでも、やり直せるのだ。消されたかのような日々は忘れたくはないが、再び、今度は間違えないように、決意する。
その後、
今度は卑怯な手は使えないけれど、比坂を絶対欲しい実元は必死に信頼と好意を手に入れようと風紀の仕事を決められた以上にこなしていく。
それによって何度も体調を崩すことになる。
それに呆れた比坂は、まあ、いわば、ほだされた。
友人だと思っていたことが気持ちの中にあったものの、じょじょに寄り添っていくことになった。
20130912
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