バルファ旅行記

はるば草花

文字の大きさ
14 / 49
バルファ旅行記つー

つー6

しおりを挟む

「感無量…」

「会長。それ、今日何度め?気持ちは分かるけど…」


中は広くて、長い柱があったり、崩れてよく分からない彫刻があったりと、ありふれた遺跡って感じだが、寂れ具合なんかはいい感じだ。


「とくに豪華でもないだろ?」


ルーバルトは理解できないようだ。現地人はそうだろう。


「こういう造りの神殿は、バルファでは多いからな」


誠那が冷静に解説してくれた。なるほど。見た目が似た神殿が他にもあるんだな。


「この先に進みますよ」


シャルハも当然見慣れているのか、感慨にふけることなくさくさく奥へと進んでいく。

通路はなかなか長く、わくわくする。
屋根や壁はあったりなかったり。たまに転がってる石のオブジェや壷を見つけては近づき探ってみるが、何もない。まあ、それが普通か。


「宝なんてありはしないぞ?とっくに誰かが持っていってる」

「それはそうなんだろうが、ロマンを見させてくれ…」


到着したのは、小さい6畳間ほどの場所にやってきた。でかい男5人には少し窮屈だ。奥には石でできた何かを置く為の台があり、壁には彫刻がある。


「ここは奥の祈りの間ですよ」


またもシャルハが解説してくれた。最初の広間が一般人が祈りを捧げる場所で、ここは神殿に仕えていた神官が祈りを捧げる間なのだとか。

説明終えたシャルハは懐から取り出した白い石を台の上に乗せ、祈り始めた。


「おい、俺達も祈ったほうがいいのか?」


小さな声でルーバルトに聞いてみる。


「別にしなくてもいい。俺もそこまで興味ないしな」

「いいのか、それで。じゃあ、長くなりそうだし、探検してていいか?」


あの状態は長くなると分かる。


「んー、まあ、セイナもいるし、いいぞ。俺はシャルハが拗ねないように側から離れられないが」

「分かった。なんだかんだで仲いいな」

「まあな」


にやりとしたルーバルト。もしや普段の苦労かけてるのも計算か?まあ、そんなことはどうでもいい。冒険が俺を待っている。


「行くぞ。セイナ、イチト」

「はいはーい。うわっ、楽しみ」

「…ああ」


くっ、現地人な誠那は冷静だが、しかたない。

俺達は道なき道を進む。ぶっ壊れた壁の穴を見つけたらくぐって先に行くのは当然する。

建物の外に出たが、中庭だろうか?とくに何もなく荒れていて雑草だらけだ。来たところ以外壁に囲まれており、窓らしき開いてるところを通って通路へと入る。

やっぱり同じような通路で、それをさらに進む。


「くっ、同じようなところばかりだが、動画で撮りたい。せめて写真とか」

「分かる分かる。とくに何もないけどね」

「色々あるだろ。壷とか皿とかカップとか」


落ちてるのはほとんど陶器製だ。金属でできたものは盗られるんだろう。

こういうものでも地球に持って帰って、メイド・イン・バルファだと証明できれば莫大な金になりそうだ。うちは十分金はあるので興味はないが。


「そういえば古いものかな。売れるかな?」


バルファで売るとかもありだな。残りものでも価値はあるのか?


「古そうだな。バルファでも古いものへの興味は深いぞ」

「おお。しかし、持ってけないよな。…ん?」

「どしたの会長?」

「なんか…、音楽が聞こえるような気がする」

「えー?俺は聞こえないけど。委員長は聞こえる?」

「いや……」


ファンタジーじゃ他の奴が聞こえないなんて定番すぎて驚きもないな。とにかくその音を辿る。
音楽?のようなそれは、上のほうから降り注ぐように聞こえるような気がする。

けれど上に音があるという感じではなく、俺は導かれるようにその音に惹かれて神殿を進む。

木の枝が入り口を塞ぐようなところに来た。


「きっとこの先に何かあるに違いない」

「それ、絶対適当に言ってるよね?」

「俺の勘」

「うん。適当だ」

「よし、行くぞ」


入り口を塞ぐ木の枝を掴んで引っ張るがびくともしない。何故だ。俺を呼んでいるんじゃないのか!


「あー、無理だね。冒険はここまでだ」

「諦めたら終わりだ!諦めなければ道はある!ふぐぐっ」

「すっぱり諦めるのも重要だよ」

「くっ……、何故だ…」


数分粘ったが、枝は少し歪んだだけだった。せっかく来れたというのに、もう終わりなのだろうか…。


「会長…、そこまでしょげなくても、まだまだこれから機会はあるから!」

「一期一会だ。そんなに何度も同じ機会はないものだ」

「会長?」


あのラルクスに今もまだ会えないのと同じだ。もう二度と会えないだなんて思いたくはないが。


「この先にそんなに行きたいか?」

「行きたい」


誠那が聞いてきたので答えた。どうもあのラルクスのことがあるからか、今、行動したくてならない。


「そうか…。なら、木に呼びかけてみよう」

「え?」

「ん?」


誠那の言葉に一十が驚いたので、意味を理解していないながらも顔を上げる。すると、誠那が木に手をあてて淡い緑の光の粒を全身から出していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

タトゥーの甘い檻

マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代) どのお話も単体でお楽しみいただけます。 ​「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」 ​真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。 ​それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。 「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。 アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。 ​ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。 愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。 ​「……お前のわがままには、最後まで付き合う」 ​針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。 執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

処理中です...