バルファ旅行記

はるば草花

文字の大きさ
15 / 49
バルファ旅行記つー

つー7

しおりを挟む

「………………魔法?」

「そうだよ!候補生に選ばれるだけあって魔法使えるんだね、委員長」

「ほら、開いたぞ。少し狭いがなんとか通れるだろ」

「おおお…」


入り口を塞いでいた木の枝が遠慮するように隙間が出来ていた。


「いいんちょー!なにしたの?どんな魔法?俺も使いたい」

「無理」

「またもばっさり!あれ、委員長俺に厳しくない?そして会長に優しくない?」

「そうか?」

「むむ、答えそうにないな…」

「セイナ!何をしたかの説明くらいは頼む!」

「ああ、木に通らせてほしいとお願いしただけだ」

「委員長…、分かりやすい答えありがと…」

「木と会話できんのか…、すげーな。と、感動してる場合じゃないな。先へと進むぞ。そこでいじけてるイチトも行くだろ」


土を掘っていた一十も呼んでやる。土掘りも男のロマンだが、きちんとした準備がないと危険だぞ?


「ありがとー、会長…」


なんで涙目?まあ、いい。先に進もう。

木の枝の隙間をなんとかくぐって先に行くと、そこは中庭のようだ。最初に行った中庭は狭かったが、ここはちゃんと庭といえるほどの広さがあり、噴水らしきものもある。今は水もなく、石もひびがあるから水が漏れてるんだろう。


「しかし、手入れされてるようにキレイだな」


狭い中庭では雑草が好きに生えていたのに、ここは好き勝手な雑草は少ない。花壇に花も咲いている。


「もとがよくできた庭だったんだろ。計算通りに花が咲く。といっても元とはだいぶ変わっただろうし、神殿に来た誰かが手入れしていた頃もあるんだろう」

「なるほど」


不思議な力ではないようだ。寂れてるのは確かだしな。

辺りを見て回ると、石の台を発見した。祈りの間にあったものと似ている。

さっきはシャルハがいて祈りの間とか神聖なこと言われたから遠慮したが、今回はぺたぺたと台を触りまくって仕掛けがないか探す。


「スイッチとか…。ないか」

「そういう文化は聞いたことないな」

「そうか…。お宝…」


バルファの神殿とか知ってる誠那が言うなら確かなんだろう。


「しかし、」


誠那は台から離れて噴水に向かう。そこで手を叩いた。これまた光の粒が周囲に広がる。今度のはピンクっぽかった気がする。属性とかどうなってんだ。


「うお?!」


ズズズと噴水の彫刻が音をたてて動く。それはフタが開いた音だったようで、小さな空間が姿を見せた。

その空間に何かがある。ごくり…。


「ほら、何かあったぞ。お宝といえるかは分からないが」

「セイナ………」


俺がゆっくりと感動を噛みしめながら慎重に手にしようとしたのに、誠那はその宝?をひょいと取った。


「どうかしたか?」

「いや…、いい、それより…」


見つけて開けたのは誠那だし、な。


「わわ、なにそれ!いつのまに?え、どういうこと?お宝?お宝なの?」

「騒がしい…」


別の場所を探っていた一十が俺達の発見に気づいて寄ってきた。


「ごめんてー。それで委員長、それはなにかお教え願えますか?」


誠那が手にしているのは小さい宝飾品のようだ。赤い宝石のようなものが目につくな。


「さすがに何かはっきり分からないが、おそらく…」


説明をわくわくと聞いていた時、別の声が聞こえてきた。

聞いたことのない声だ。別の人がいてもおかしくはないのだろうが、そんな偶然をのほほんと受け入れる気はない。

俺達3人とも考えは同じだったようで、声の聞こえる壁に近づき正体を確かめる。警戒するにこしたことはない。


「おい、そっちちゃんと塞いでろよ!あ、ほら逃げたじゃねえか!」

「うるせえ、お前の追い込みが下手なんだよ!」

「言い合いは後にして捕まえるぞ!」


複数の男の声に何かを捕まえようとしていることから、


「悪人に違いない」

「俺もそう思うー」

「ああ」


3人とも同意見のようだ。とはいえどうしたものか?


「そうだな。後を追って、現場を押さえよう」

「ルーバルト!いつのまに?」

「けっこう前からだ」

「お待たせしました。さっそくですが仕事のようですね。この辺りも貴重な生き物が生息していますから、ありえる話です」


少し申し訳なそうにやってきたシャルハは、仕事、というところで表情を冷たくした。


「しかし向こうはこの前の旅行者としてやってきた奴よりも慣れてそうだな。武器所持、さらには魔法も使える奴らかもしれない」

「ええ、候補生とはいえ、いきなりの相手は難しいかもしれません」

「ということで、オミには俺からプレゼントだ!」

「へ?」


ルーバルトからシルバーの腕輪らしきものを貰った。


「あ、魔法具だね。これなら誰でも使用可能だよ、会長」

「…いいのか?」

「貸すだけだ。実は扱うのが難しい物なんだが、きっとオミなら使える」

「ルーバルトはなくていいのか?」

「ああ。基本、剣士だし、他にも魔法具は持っている」

「それなら遠慮なく」


きっとルーバルトは魔法は防御に利用するタイプだと見せかけての、いいとこで魔法攻撃を披露するタイプと見た。もったいぶるのではなく、奥の手みたいな感じでなるべく隠してるんだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

タトゥーの甘い檻

マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代) どのお話も単体でお楽しみいただけます。 ​「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」 ​真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。 ​それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。 「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。 アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。 ​ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。 愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。 ​「……お前のわがままには、最後まで付き合う」 ​針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。 執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

処理中です...