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バルファ旅行記すりー前編
すりー前編12
しおりを挟む「…怖い思いをしたようだな」
「そんな感じか?」
「同種族ともほとんど会ってないんだろう。よほど寂しかったに違いない」
「……なあ、びっくりするほど懐いてるんだが。…そいつはやっぱり他のラルクスのところに戻したほうがいいのか?」
シバルは荒くれ者だが、ラルクスが懐いてるし、心配したりといい奴なんだな。
「…お前が迷惑でないなら、側においてくれないか? おそらく野生の生き方を知らなくては仲間と一緒には生きにくい」
「そうか…。ま、別に拾ったからには最後まで面倒みるさ」
シバルの言葉が分かったのか、ラルクス、たしか、ジェスは、シバルのもとに戻っていった。
その後、たくさんの料理を勧められたり、荒くれ男達にからまれたりと騒がしく大変だったが、楽しく過ごし、腹がいっぱいになって部屋に戻った。
それから風呂を借りて入った。この地域は見た通り水は貴重なのか、普通の部屋をとるより高いのだとか。しかし疲れた身体で湯を入れた桶だけというのは悲しいので頼んだ。払うのは誠那なわけで、将来なんとか返そう。裏技で向こうの世界でも払えるみたいだが。
「入った後で言うのもなんだが、そんな貴重な水を贅沢に使うなんて恨まれるだろうか?」
風呂には誠那に先に入ってもらい、次に入って部屋に戻ってきてから、くつろいでた誠那に尋ねる。現地の人とは仲良くしたいんだ。
「貴重といっても地下水脈でしっかり確保できている。土地がこんなふうだから大事にしているだけだ。というか、巡礼者など余所から来たものから金をとる為にそう言ってるだけじゃないか? 食材も余所から買ってるしな」
「ああ、観光客相手のぼったくりか。なら問題ないな。…セイナ」
「…オミ?」
長椅子の上でくつろぎながら書物を読む誠那の隣に座る。それに誠那が驚いた顔を見せる。どうした?
「ラルクスのことだが」
「ああ、そのことか。前から知ってるだろ? シバルの言っていた通りだ。救いともいえないが、ラルクスは愛玩兼番犬目的が多いから、そこまでひどい目には合わない。子供の時に捕まるから、捨てられると生きていけないがな。それでもシバルのようにまた他の人間が飼ってくれることも多いから、…そんな顔するな。人だって人身売買されてるんだから、同じだ」
「ん…。でも、ラルクスは悪さしない。人が嫌にならないか?」
「…ラルクスも悪さするぞ?」
「はあ?!」
「まあ、ちょっとした不良ラルクスであって、たいしたことではないがな。人はひどいことをするぶん、救う力も大きい。俺も長く人の中でいるから半分人だと思ってるんだ。嫌うなんてことはないさ」
「…なら。いいが…」
人だと思っていてくれるという言葉は何より安心する。
結局存在が違うんだとどこかのやさぐれキャラみたいに敵になったりしないだろう。
誠那がラルクスなのは面白く感じるも、へだたりでもあると、この時になって気づくなんて馬鹿だな。それでも誠那にはそんなものないみたいだから、このまま親友でいられる。
「ほら、落ち込むのも分かるが、あのラルクスは幸せそうだったから大丈夫だ」
シバルに拾われたラルクスのことで、俺がまだ落ち込んで俯いてると思った誠那が頭をぽんぽんと叩く。そんなことされると、涙でも出てしまいそうだろうが。
俺はすぐには頭を上げられず、その間中、誠那にぽんぽんされた。風呂に入って綺麗になったから触り心地がいいのか?
ようやく落ち着いた俺は顔を上げ、誠那にもう平気だといい、それからベッドに横になって眠った。
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