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バルファ旅行記すりー前編
すりー前編16
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俺が不満そうな顔をしているのが分かったのか、誠那は宿までの道を店がある通りを選んで歩いてくれる。1人だけのときと違って解説付きなのでこれはこれで楽しい。
少しお菓子を買って宿に戻った。はしゃぎすぎたので、今日はもう大人しく部屋でまったりしよう。
さっき撮ったカメラの映像を簡易に編集したり、後で付け加える為にメモを書いたりして…。はっ! これが生態学者の第一歩か…! と気づき、さらにメモに力が入る。
誠那のほうは本を読んでいる。この周辺の歴史と魔法具に関してのもので、これからの旅の為に読んでいることが分かる。熱心な姿は真面目な風紀委員長を思い出すな。
「……どうした?」
誠那に聞かれて気づく。
「俺は、セイナの真剣な顔を見るのが、好きなようだ」
なんかずっと見てたくなるんだよな。
誠那は目を大きくした後、目をそらし、ぼそりと何か言った。
何を言ったか分からなかったが、まあ、いいかと再び編集作業に取りかかる。熱中する中、かすかに息を吐く音が聞こえたような気がするが、気のせいだろう。
それから夕食はまたもシバルに絡まれた。シバルはいい奴なんだろうが、他にも騒がしい連中がいて、賑やかなのはよくてもこういうのは苦手な俺は嫌そうな顔をしたんだが、シバルには効果はない。 誠那も同じく嫌そうなのに、シバルはむしろ喜んでいそうな気がする。…疑惑が生まれるが、深くは考えるまい。
「いいのかー? ほれほれ、ラルクスのジェスもお前達を待ってるぞー」
そう言ってシバルは胸の前にジェスを持ち上げた。ジェスは意味が分かってないのだろう。不思議そうに首を傾げる。
駄目だ。その動きは卑怯だろう。
悔しいが昨日と同じくシバルの前の席に座ってやる。
「あー、たまらん。幸せ。こんだけ美人とメシ食べられるだけでも普通なら金いんだろ。今日も奢るからいっぱい食え」
初めから奢ってもらうつもりだった俺はすでに近くの男に頼んである。昨日食べてうまかったものだ。飲み物はさわやかな果実水だ。
「聞いたぞオミー。大乱闘したってな」
「そこまでのことはしていない。ちょっと寄ってきた奴を追い返しただけだ」
噂って大きくなるものだな。
「4対1だったんだろ? 見てた奴がすげー身体能力だって興奮してたぞ。ま、俺はもとからオミはつええって思ってたけどな。見たかったなー、華麗な動き」
「…別に普通だ。あ、ジェスこっちおいで」
まだ果実がきてなくてじっとしているジェスを抱えて、腕の中でもふもふを堪能する。可愛い。
「なあ、思ったんだが、もしやオミはもとは素っ気ないタイプか?」
「あんたらにはこれでも愛想よくしているぞ?」
ここの連中も一応バルファの一部だからな。バルファに関係のないただの不良がからんできたとしたらここまで相手はしない。無視だな。ただ一十によれば、学園でも前よりはずいぶん変わったらしい。
「…つまり?」
「今は観光気分でいるからこうして相手もしている」
「へー、そりゃ俺達運がいい」
果実が来るとジェスはあっさり俺から離れてしまった。だからというわけではないが、普通に食事をしたらその場をさっくりと離れた。
「…あれだ。休むつもりで滞在したが、微妙だったな」
観光ってシバルに言ったのはけっこう本当かもしれない。今日は完全に観光でした。
「そうだな。とはいえ、長く滞在しているわけにもいかないから、明日には宿を出るぞ?」
「ああ。それでいい」
戻ってきた部屋ではさらに今日のできごとをメモする。もはや日記か?
ふと、また本を読んでいるだろう誠那を見る。しかし、本を手にしながらも集中していないようだった。
「セイナ」
「!オミ…」
ゆっくり近づいて後ろから抱きついた。学園にいる時もバルファのことを聞き出す時によくする。
「どうしたんだ? セイナ」
「俺は……、別になんでもない…」
完全に何かあるって言ってるじゃないか。隠しきれないのは悩んでいて、はっきりと決めていないからか?
「隠すってことは危険なことか。俺はそんなに頼りないか?というか吐け。お前はあからさまに苦しんでるのが分かるんだ。そんなの見て見ぬふりなんて出来ない」
「……オミ。悪い。俺がまだたいして力がないばかりに…」
「うっせえよ。お前とは対等になる気でいる俺の気持ちを壊すな。むしろセイナが幻獣でチートのように力があったりなんてしなくて良かったと思ってる」
「ふっ…。そうか。なら、よかった」
「で? 俺から話をそらすなんて不可能だぞ?」
「…だろうな。…シバルから聞いたんだ。幻獣の売り買いをしている取引があるってな」
「! それは…。ジェスのことか?」
「ジェスのほうは分からないようだ。関係のない場所で捨てられてたらしい。ただ、他の幻獣にしても放ってはおけない。…ラルクスが出される可能性もある」
「…滅多にはないよな?」
「まあな。いくらなんでも簡単に人に捕まらん。ただもうすぐ取引があるらしい。今度行われる日の情報を手に入れた。とにかく、どんなものかくらい見てみたいと思ってる」
「そっか…」
誠那がどことなく元気がなかったのも頷ける。俺も聞いた衝撃で混乱しそうだ。どう対処すればいい?
少しお菓子を買って宿に戻った。はしゃぎすぎたので、今日はもう大人しく部屋でまったりしよう。
さっき撮ったカメラの映像を簡易に編集したり、後で付け加える為にメモを書いたりして…。はっ! これが生態学者の第一歩か…! と気づき、さらにメモに力が入る。
誠那のほうは本を読んでいる。この周辺の歴史と魔法具に関してのもので、これからの旅の為に読んでいることが分かる。熱心な姿は真面目な風紀委員長を思い出すな。
「……どうした?」
誠那に聞かれて気づく。
「俺は、セイナの真剣な顔を見るのが、好きなようだ」
なんかずっと見てたくなるんだよな。
誠那は目を大きくした後、目をそらし、ぼそりと何か言った。
何を言ったか分からなかったが、まあ、いいかと再び編集作業に取りかかる。熱中する中、かすかに息を吐く音が聞こえたような気がするが、気のせいだろう。
それから夕食はまたもシバルに絡まれた。シバルはいい奴なんだろうが、他にも騒がしい連中がいて、賑やかなのはよくてもこういうのは苦手な俺は嫌そうな顔をしたんだが、シバルには効果はない。 誠那も同じく嫌そうなのに、シバルはむしろ喜んでいそうな気がする。…疑惑が生まれるが、深くは考えるまい。
「いいのかー? ほれほれ、ラルクスのジェスもお前達を待ってるぞー」
そう言ってシバルは胸の前にジェスを持ち上げた。ジェスは意味が分かってないのだろう。不思議そうに首を傾げる。
駄目だ。その動きは卑怯だろう。
悔しいが昨日と同じくシバルの前の席に座ってやる。
「あー、たまらん。幸せ。こんだけ美人とメシ食べられるだけでも普通なら金いんだろ。今日も奢るからいっぱい食え」
初めから奢ってもらうつもりだった俺はすでに近くの男に頼んである。昨日食べてうまかったものだ。飲み物はさわやかな果実水だ。
「聞いたぞオミー。大乱闘したってな」
「そこまでのことはしていない。ちょっと寄ってきた奴を追い返しただけだ」
噂って大きくなるものだな。
「4対1だったんだろ? 見てた奴がすげー身体能力だって興奮してたぞ。ま、俺はもとからオミはつええって思ってたけどな。見たかったなー、華麗な動き」
「…別に普通だ。あ、ジェスこっちおいで」
まだ果実がきてなくてじっとしているジェスを抱えて、腕の中でもふもふを堪能する。可愛い。
「なあ、思ったんだが、もしやオミはもとは素っ気ないタイプか?」
「あんたらにはこれでも愛想よくしているぞ?」
ここの連中も一応バルファの一部だからな。バルファに関係のないただの不良がからんできたとしたらここまで相手はしない。無視だな。ただ一十によれば、学園でも前よりはずいぶん変わったらしい。
「…つまり?」
「今は観光気分でいるからこうして相手もしている」
「へー、そりゃ俺達運がいい」
果実が来るとジェスはあっさり俺から離れてしまった。だからというわけではないが、普通に食事をしたらその場をさっくりと離れた。
「…あれだ。休むつもりで滞在したが、微妙だったな」
観光ってシバルに言ったのはけっこう本当かもしれない。今日は完全に観光でした。
「そうだな。とはいえ、長く滞在しているわけにもいかないから、明日には宿を出るぞ?」
「ああ。それでいい」
戻ってきた部屋ではさらに今日のできごとをメモする。もはや日記か?
ふと、また本を読んでいるだろう誠那を見る。しかし、本を手にしながらも集中していないようだった。
「セイナ」
「!オミ…」
ゆっくり近づいて後ろから抱きついた。学園にいる時もバルファのことを聞き出す時によくする。
「どうしたんだ? セイナ」
「俺は……、別になんでもない…」
完全に何かあるって言ってるじゃないか。隠しきれないのは悩んでいて、はっきりと決めていないからか?
「隠すってことは危険なことか。俺はそんなに頼りないか?というか吐け。お前はあからさまに苦しんでるのが分かるんだ。そんなの見て見ぬふりなんて出来ない」
「……オミ。悪い。俺がまだたいして力がないばかりに…」
「うっせえよ。お前とは対等になる気でいる俺の気持ちを壊すな。むしろセイナが幻獣でチートのように力があったりなんてしなくて良かったと思ってる」
「ふっ…。そうか。なら、よかった」
「で? 俺から話をそらすなんて不可能だぞ?」
「…だろうな。…シバルから聞いたんだ。幻獣の売り買いをしている取引があるってな」
「! それは…。ジェスのことか?」
「ジェスのほうは分からないようだ。関係のない場所で捨てられてたらしい。ただ、他の幻獣にしても放ってはおけない。…ラルクスが出される可能性もある」
「…滅多にはないよな?」
「まあな。いくらなんでも簡単に人に捕まらん。ただもうすぐ取引があるらしい。今度行われる日の情報を手に入れた。とにかく、どんなものかくらい見てみたいと思ってる」
「そっか…」
誠那がどことなく元気がなかったのも頷ける。俺も聞いた衝撃で混乱しそうだ。どう対処すればいい?
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