バルファ旅行記

はるば草花

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バルファ旅行記すりー前編

すりー前編26

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堂々としているからか、買いに来てもおかしくなさそうな見た目だからか、誰も何も言わないどころか、不審な目で見てくる者はいない。
ひとまず今いる連中の話している情報は全て記憶しているので、後で見つけられる可能性は高まりそうだ。


「なあ」

「おう?!」


しまった。記憶するのに集中しすぎて周囲の状況に気を配らなさすぎた。

いきなり肩に手を置かれ吃驚してしまう。


「悪い。びっくりさせたか? 少し話があるんだ。少し端のほうで聞いてくれないか?」


俺の肩に手を乗せたのは優雅な雰囲気の男で美形の部類だろう。ここには合わない感じではあるが、今この場所では不思議ではないのかもしれない。ただ、話とはなんなんだ。


「お連れさんも一緒に」


俺は誠那と目線で会話する。断ってもいいが、簡単に諦めるのか分からない。それなら聞いたほうが早いかもしれない。俺達を不審に思っているのなら、別の部屋に…、とか言いそうだし。
仕方ないと、俺達は取引している連中と離れる。情報は欲しいが、ある程度は手に入れたしな。


「すまん。びっくりさせたな。さっき取引の情報を探ってたんだろ?」

「……………」

これは…、やばい、のか?


「警戒しなくてもいい。俺も調べていたんだ。ここの違法取引の情報を手に入れてね」

「………どうして、分かった?」

誠那が警戒しながら尋ねる。


「そりゃ、目が違う。あいつらには分からないと思うけど、幻獣を買いに来た連中とは違うよ。それで、そうなんだろう? あ、俺はこの国の騎士団所属のウルア」

「…そうか。俺達は偶然ここに来て情報を得たんだ。国も違う」


誠那は諦めたのか情報を探りにきたのだと答えた。


「なるほどねえ。それでもここまで侵入するほどってことは、他国とはいえ意味があるんだろ?」

「まあな」

「そうなると完全に協力とはいかないようだけど、少しは協力しあおう。こっちの情報も渡すからそっちのもくれるかな?」

「…まだたいしてないんだ。そっちのほうは本格的にしてそうだな」

「そうとも限らない。それならそれで損はないさ。その顔はすごく情報欲しいって言ってるよ」

「…まあ…」

「こんな小さな取引くらい、なんてことはないさ」

「小さいほうなのか?」


さっきの誠那は情報からするとこれが普通みたいだったけど。


「基本はこんなものだよ。幻獣なんて簡単に捕まえられるわけないし」

「だよな」

「でももっと大きいのもあるってこと。そうなるとすごい金が動く。いや、それどころじゃないか」

「…そんなにすごいのか」

「まだあんまり知らないんだね」

「勉強中で」

「ということで、ここにいる理由はないな。もとのとこに戻ろうか」

「え、うお?!」

「おいっ」


ウルアさんが俺達の背中をぐいぐい押して俺達はもとの通路まで戻った。


「強引だ」

「まあまあ、あそこにいても意味ないでしょ。もうさっきのショーの舞台に人はいないし、そっち行こうか」


自分のペースで話しを進めていくウルアさん。俺達は息を吐き、後を追った。

人はいないと言っていたが、1人の男がいた。雰囲気はまたここには合ってなくて貴族の従者のような気がする。その男からウルアは紙の束を受け取った。


「ほい。これ、今すぐに用意できた情報だよ」


俺達に向けて紙束を差し出してきたので誠那が近づきそれを受け取った。


「………これは、情報がこんなに?! 国が動けばこんな簡単に手に入るのか? それとも、ここの連中が馬鹿か?」


誠那の驚く声から、かなりの情報が書いてあるとみられる。しかし、違和感がする。それは誠那も同じだったんだろう。


「ここの連中が馬鹿なのは確かだね。いくら国の目が届きにくい場所だからって警備が甘すぎる。だけど、それは直接手に入れただけだ」

「……つまり?」

「こんな小さな取引の場所なんてどうなったっていい。むしろ、別にそこらの幻獣に興味なんてない。だけど、………君は別だ」


ウルアの表情が変わり、誠那は離れようと動いたが。


「ぐっ!」

「セイナ!」


倒れこんだ誠那に駆け寄る。顔は苦しそうにしていた。


「お前なにをっ」


こんな状況、ウルアがしたに違いない。睨むも、ウルアは平然としていた。


「せっかく計画した次代ラルクス長の捕獲計画だったけど、失敗してふてくされていれば、姿を見たって情報が入って喜んだ。こんな小さな取引なんてどうなってもいいくらい」

嬉しそうに話すこいつは異常だ。


「うあ…」

「セイナ! なにしたっ」

「苦しいだろう? ラルクス専用、いや、次代長殿に合わせて考えた魔法陣だ。力を封印できる。力を使えまい? 苦しむとは思わなかったが、抗おうとしているのかな?」


地面に光る模様が見える。それが誠那を苦しめている魔法陣だろう。敵と話してても意味がないと俺は魔法具を取り出す。


「無駄」


敵2人しかないかったのに、すぐに複数の配下だろう男達が現れる。



俺は…。ほとんど何もできなかった。

悔しいなんてもんじゃない。前に遭遇した幻獣密猟者とは比べ者にならなかった。

簡単に倒され、さらに俺は簡単に捨てられた。テントの外にぽいっと。

俺にはまったく価値がないから、いらないってことだろう。それに取引の情報の紙束も一緒に。本当に取引もどうでもいいんだろう。

馬鹿にされてるとしか思えないが、それでも大事な情報だ。その紙束を握り締める。

敵意を感知する魔法具が完璧ではないなんて、フラグの予感がしていたが、本物相手だと意味がなかったな。




「……………うあああああっ」


誠那がさらわれた。

狙われてるのは分かっていたのに、完全に忘れてのんびり観光してた。

俺はっ、少しは強くなったと思ってた。それが少しも意味がなくて、これじゃあ誠那と肩を並べるどころじゃない。

周囲の状況なんて気にもせず、しばらく叫んでいた。

疲れた俺は声も出せなくなり、少し頭も落ち着いた。誠那を取り戻さないと。

どうすればいいかなんてまったく分からない。けれど、絶対だ。
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