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呼ぶ人
呼ぶ人8好機
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この時リンメルは金を盗ったことで何か言われるんじゃないかと考えていたのだが、クルクはお金盗られるなんて何度も経験はあるし、リンメルの盗っていった額は少ないものである。それに、とても痛いくらいに殴られたほうが嫌だった。リンメルは弱々で叩いてきただけなのでびっくりした程度だ。
「俺は、懐かしくないし、会いたくなんてなかったし。もうあんま声なんてかけてくんなよ」
そう言ってリンメルはすぐに部屋に戻ってしまって会話といえるようなことにはならなかった。
そこでクルクは次の日教室にやってきたリンメルに思い切って挨拶する。怪訝にされたが納得してもらえたので嬉しい。
その上、クルクとしては好機といえることが起こる。
唸り声が聞こえて話しかければ。
「ぜっんぜん意味が分かんねえ。どうすんだこれ。大丈夫か俺」
どうやらリンメルは今の授業が分からないらしい。きっといきなり上位学部に移ったから差があるのだろうと考えたクルク。たしかに一般の授業より難しいのであるが、リンメルはさっぱり分かってないなんてこの時のクルクは知らない。
教えてあげようかと言えば、受け入れてくれたリンメル。クルクはこんなふうに何かで釣って仲良くなろうとする自分は浅ましいなと自嘲する。
部屋で勉強を教えたりするようになって、知らないところの多さに驚くやら不思議に思ったりしたものの、想像以上にリンメルと過ごすのは楽しかった。
クルクが勉強以外で出来ることに、手伝いで覚えた料理がある。休憩の時にお菓子を出した。
「うまっ。お前って勉強だけでなく食いもん作る取り柄もあったんだな」
「そうかな? 嫌いではないけど。よかった」
リンメルのなんも考えてない褒め言葉にクルクはほやほやと喜ぶ。なんも考えてないのが、飾りないのだと伝えているから。
それから、リンメルと関わることが増えたクルク。
楽しくて気づいてないが、リンメルと一緒にいる時は呼び出されることがない。これは柄の悪さが滲み出てるリンメルにお坊っちゃんは近づきがたいからである。それに一応リンメルの影になったクルクはようやく目立たなくなっていた。
それでも時々からまれるのだけど。
ふと、最近図書室に行ってないことに気づいた。
シェンは寂しがってないかと思うと無性に行きたくなり、リンメルに断りをいれて図書室に向かった。お菓子もたくさん持っていく。
本を読み待つとシェンが心なしか寂しげな鳴き声で現れた。
「シェン。ごめんね? おわびにいっぱいお菓子作ってきたからね」
鞄からお菓子を出し机の上に置くと膝の上に乗せたシェンが勢いよく食べ出す。
「でも、これからどうしようかな…。シェンと会えるのは短い時間だけだし…」
今まで日が落ちかけている時の短い間の触れあいである。リンメルとは授業終わりから夕食頃まで勉強をすることが多い。そのまま夕食をとると、その後ここに来るのは難しい。
夕食を遅くにするかなと悩んでいると部屋の扉を開ける音がする。
「え? あ…」
「お前…。最近どうしたんだ?」
現れたセルツァーは最近のクルクのことを尋ねているが、なんとなく、怒ってる。
「ごめんなさい」
「謝るようなことしてたのか」
「違うけど…」
「じゃあ謝ることないだろ」
「セルツァー怒ってるし…」
「怒ってねえ。……ただ、最近ここにも来ないから……。心配したんだ。前のこともあるし」
ぼそぼそと話す言葉でもしっかりとクルクの耳に届く。それにほんのり頬を染めたクルク。
「あ、う、ごめん」
「だから、どうして謝る。…いや、責めるわけじゃない。…どうして最近来なかった?」
「それは、その…」
「…言いにくいことか?」
「違うよ。あの…、友達ができたからで。あ、友達だって思ってるのは僕だけかもしれないけど。それで、勉強を教えてたからここに来ることがなかったんだ」
「なるほどな。そういえば今までは…、いなかったのか?」
「うん…。僕、どんくさいから」
「そんなこともないと思うが…。しかし、ここには嫌な奴ばかりで、友達とかになりたくないか。で、それじゃあ、これからはあんまり来れないのか?」
「…それは…。分からない。できればここにも来たいんだけど」
「シェンが寂しがるかもしれないしな。だが、友達を優先したらいい。やっとできたんだろ?」
セルツァーは本心を隠し、クルクの望むだろうことを後押しした。
「うん」
それにクルクは嬉しそうな満面の笑顔になる。さっきの頬を染めるのも可愛すぎたが、これは眩しい。
「ま、でもたまにはちゃんと顔見せて報告しろよ」
「はい。報告します」
シェンと十分戯れた後、クルクも寮の部屋へと帰った。
「俺は、懐かしくないし、会いたくなんてなかったし。もうあんま声なんてかけてくんなよ」
そう言ってリンメルはすぐに部屋に戻ってしまって会話といえるようなことにはならなかった。
そこでクルクは次の日教室にやってきたリンメルに思い切って挨拶する。怪訝にされたが納得してもらえたので嬉しい。
その上、クルクとしては好機といえることが起こる。
唸り声が聞こえて話しかければ。
「ぜっんぜん意味が分かんねえ。どうすんだこれ。大丈夫か俺」
どうやらリンメルは今の授業が分からないらしい。きっといきなり上位学部に移ったから差があるのだろうと考えたクルク。たしかに一般の授業より難しいのであるが、リンメルはさっぱり分かってないなんてこの時のクルクは知らない。
教えてあげようかと言えば、受け入れてくれたリンメル。クルクはこんなふうに何かで釣って仲良くなろうとする自分は浅ましいなと自嘲する。
部屋で勉強を教えたりするようになって、知らないところの多さに驚くやら不思議に思ったりしたものの、想像以上にリンメルと過ごすのは楽しかった。
クルクが勉強以外で出来ることに、手伝いで覚えた料理がある。休憩の時にお菓子を出した。
「うまっ。お前って勉強だけでなく食いもん作る取り柄もあったんだな」
「そうかな? 嫌いではないけど。よかった」
リンメルのなんも考えてない褒め言葉にクルクはほやほやと喜ぶ。なんも考えてないのが、飾りないのだと伝えているから。
それから、リンメルと関わることが増えたクルク。
楽しくて気づいてないが、リンメルと一緒にいる時は呼び出されることがない。これは柄の悪さが滲み出てるリンメルにお坊っちゃんは近づきがたいからである。それに一応リンメルの影になったクルクはようやく目立たなくなっていた。
それでも時々からまれるのだけど。
ふと、最近図書室に行ってないことに気づいた。
シェンは寂しがってないかと思うと無性に行きたくなり、リンメルに断りをいれて図書室に向かった。お菓子もたくさん持っていく。
本を読み待つとシェンが心なしか寂しげな鳴き声で現れた。
「シェン。ごめんね? おわびにいっぱいお菓子作ってきたからね」
鞄からお菓子を出し机の上に置くと膝の上に乗せたシェンが勢いよく食べ出す。
「でも、これからどうしようかな…。シェンと会えるのは短い時間だけだし…」
今まで日が落ちかけている時の短い間の触れあいである。リンメルとは授業終わりから夕食頃まで勉強をすることが多い。そのまま夕食をとると、その後ここに来るのは難しい。
夕食を遅くにするかなと悩んでいると部屋の扉を開ける音がする。
「え? あ…」
「お前…。最近どうしたんだ?」
現れたセルツァーは最近のクルクのことを尋ねているが、なんとなく、怒ってる。
「ごめんなさい」
「謝るようなことしてたのか」
「違うけど…」
「じゃあ謝ることないだろ」
「セルツァー怒ってるし…」
「怒ってねえ。……ただ、最近ここにも来ないから……。心配したんだ。前のこともあるし」
ぼそぼそと話す言葉でもしっかりとクルクの耳に届く。それにほんのり頬を染めたクルク。
「あ、う、ごめん」
「だから、どうして謝る。…いや、責めるわけじゃない。…どうして最近来なかった?」
「それは、その…」
「…言いにくいことか?」
「違うよ。あの…、友達ができたからで。あ、友達だって思ってるのは僕だけかもしれないけど。それで、勉強を教えてたからここに来ることがなかったんだ」
「なるほどな。そういえば今までは…、いなかったのか?」
「うん…。僕、どんくさいから」
「そんなこともないと思うが…。しかし、ここには嫌な奴ばかりで、友達とかになりたくないか。で、それじゃあ、これからはあんまり来れないのか?」
「…それは…。分からない。できればここにも来たいんだけど」
「シェンが寂しがるかもしれないしな。だが、友達を優先したらいい。やっとできたんだろ?」
セルツァーは本心を隠し、クルクの望むだろうことを後押しした。
「うん」
それにクルクは嬉しそうな満面の笑顔になる。さっきの頬を染めるのも可愛すぎたが、これは眩しい。
「ま、でもたまにはちゃんと顔見せて報告しろよ」
「はい。報告します」
シェンと十分戯れた後、クルクも寮の部屋へと帰った。
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