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はるば草花

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親衛隊長の策略(平凡補佐続き)

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「今さら、やりたくないとか言わないでしょうね?」


男から出たとは思えない声が豪華な廊下に響く。その声の主はこの学園の生徒。小柄で黒髪の妖艶な美少年。


「も、もちろん、僕だって嫌なんですから」


この場にいるもう一人も、小柄でミルクティー色な髪の可愛らしい少年だ。


「では、今から、同時に行きましょう。そのほうがきっと、大ケンカしてくれる可能性が高いでしょうから」

「わ、わかりました」


ミルクティー色の少年が頷けば、黒髪の少年は満足そうな笑みを浮かべる。そして、それぞれ、別の方向へと向かっていく。


「…もしかして、大変なことなんじゃ…」


二人の会話を偶然に盗み聞いてしまったのは、平凡な生徒会補佐、波早太広だ。

さっきまでいた少年二人は、どちらも親衛隊の隊長をしている者で、

黒髪の少年は生徒会長の。
ミルクティー色の少年は風紀委員長の。

その二人が何かしようとしている。嫌な予感がする波早は慌てて会長を探しにむかう。


その頃、会長の水宮は寮の自室にいた。今日は気分が優れなくて誰かでストレス発散できないものかと物騒なことを考えている。

そこに訪れたのが、会長の親衛隊隊長の黒髪の美少年だ。


「島矢…、ちゃんとした用なんだろうな?」

「もちろんです。水宮様」


隊長をしてるだけに、島矢春葉は水宮の不機嫌で見下した目線を気にすることなく、にっこり華やかに微笑む。


「…さきほど、野上様の親衛隊長である伊原君に会いまして、伝言を頼まれたのですよ」

「…あ?」


片眉を上げた水宮。まだ情報が少ないが、おかしな感じがする。


「…えっと…」


強気な親衛隊長もさすがに少し躊躇するが、


「野上様は、水宮様と別れたいと、今までの関係はなかったことにしてほしいということだそうです」


用意してあったせりふを言いきる。聞いた水宮は不穏なオーラを纏いだし、隊長島矢も後退りたい思いになるが堪える。

ゆらり、立ち上がった水宮に、身体を震わせてしまった島矢だが、水宮はあっというまに部屋を出ていってしまう。

猛獣が部屋から消え、安堵した島矢は笑みを作った。あの様子なら上手くいきそうだ。

今回のことは、水宮と野上の関係が波早以外に知れたことによる。
隠していたわけではないので、遅かったくらいだが。

聞いた隊長達は初めはとても信じられなかったが、調査によって二人が部屋をともにすることを繰り返していて、理解するしかなかった。

この数ヶ月の間に、水宮と野上は親衛隊との夜の関係が急激に減っていき、いまや全くない。

このようなことはきっと二人とも珍しい相手との遊びに少々はまっただけだと考えた隊長達。
ならばもともと仲の悪い二人の関係が悪くなれば嫌になって飽きるだろうと都合よく考えてしまった。
別れるなんて言われればプライドがゆるせなくて怒るはず。



走るではないが、すごいスピードで歩く会長水宮。
その頃同じく委員長野上も廊下を進んでいる。

二人とも凶悪な表情をしていて、運悪く出会ってしまった一般生徒は悲鳴をあげて邪魔せぬようにと、壁にへばりつく。

そしてお互い相手を見つけた二人。
ちょうど波早も出会った二人を見つけ急いで駆け寄ろうとするが、体力切れでなかなかたどり着けず、睨み合う二人の口は開く。


「残念だが、てめえがどう考えようが離れてやる気はない」

こっちは水宮。

「気が変わろうが嫌だろうが関係ねえ、別れる気はない」

こっちは野上。

睨み合いながら同時に言った。両方、そっちがどう思おうが離す気はない、という考えだ。


「「あ?」」


相手の言葉で二人はすぐに親衛隊の企みだと気づく。
波早も安堵にへたる。

隊長の策だったとはいえ、今回のことはちょうどいいのではと考えた野上。


「言っておく、この先ずっと離す気はねえ」


今後の為に言った。

諦めろ。俺のもんだ、と。

そんな独占宣言に、ぐったりしてた波早の目が輝く。
水宮はどう思ったか、波早には読めない。


「…そっちも親衛隊が仕掛けてきたんだろ?ベッドの中で期待させるようなこと言ったんじゃないのか?」


話題を変えてきた。たしかに、何故、今回のことに至ったのか、気にはなる。


「あん?貴様と毎日部屋を同じくしてるってのに、そんな時間あると思ってんのか?それとも、そっちは上手くやってたってのか」


さらっと返す野上だが、その心中はいかなものか。隊長の思惑どおり、修羅場なのか?


「てめえのつけた痕があるのにできるわけないだろ」

「それもそうか。プライドの高い貴様が見せられるわけねえよな。なら、これからもつけて増やしてやるよ」

「ならこっちもつけてやる」


若干ゆるんだ表情の二人は怖ろしく妖しい笑みを浮かべる。


「そうだ。もう一つ言っとく。俺以外の奴に触らせるな。許さねえからな」


凶悪な表情で脅す野上だが、それはつまり嫉妬なわけですかと波早は分析。ということは、体だけの関係でないともとれる。


「そっちもな。てめえは俺のもんなんだ。全てな」


水宮も宣言。支配者宣言とも考えられるが、波早はわかった。両方、溺愛してる。おそらく無自覚で認めないだろうが、もうどっぷりはまってる。

この二人ならこの先も大丈夫そうだ。


「なにやってる?」

「わあ?!あ、あれ、会長?委員長は?どうしたんです?」


委員長の姿がない。この後は愛を確かめ合うのでは。


「知らないが。想像はつく。そうだ、お前も来い。手伝え」

「はい……」


何をとはきけない。どう考えても親衛隊長のことだろう。
波早にとっては二人を別れさそうとした憎き奴らではあるが……、今すぐ逃げてーー!!と心の中とはいえ叫んだ。



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