ツクチホSS

はるば草花

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ゆずれないもの(現代)

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「ハルキ」

「ネリア」

「もう来てたんだね。ごめんね。遅れて」

「いいよ。こっちが早くに来てただけだし」


ここは学園の庭、美しい白バラの咲く庭園で、その中心部の休憩スペースにある白いテーブルとチェアーのある場所にハルキはいた。

ネリアという男に呼ばれ、予定の時間より一時間早く来てプリントをしていた。


「ネリア、この後どうする?俺の部屋で遊ぶ?それとも、」

「ハルキ、今日は大事な話があるんだ」

「大事な…?」


ハルキをここに呼んだネリアという男は、美形な外国の人間で、金の髪に青い瞳をしている。

実は、小国とはいえ裕福な国の王子である。身分を隠して日本のこの学園にやってきた。

そしてハルキと出会う。

ネリアは身分を隠そうとしてやりすぎて、来た当初は鬘に眼鏡でもっさりスタイルだったのだが、ハルキは優しく接してくれた。

その上、王子であると告白しても、目の色は全く変わることがなかった。

ハルキが可愛くて、愛しくてしかたないネリアは、父である国王に正妻として迎え入れたいと願い、許可を得た。

王としては変な女に引っかかるよりマシだし、日本男子といえば、外国では優しいと評判で、期待してたりする。かわゆい息子嫁に肩揉んでもらうのが夢だった。

ということで、


「ハルキ…」

「ネ、リア?」


座っているハルキの前に膝を折り、胸に手を当てる。


「愛してます。僕の国に来てください」


プロポーズ。
お付き合いどころか、気持ちを伝えたのも初めてだが、好かれていると自信があったし、王子という立場で不安にさせない為に、本気を伝えたかった。


「え……、それって、」

ハルキは驚き動揺する。しかし意味を理解すると少し考えて、


「あ、無理だわ」

「え?」

予想外のあっさり拒否。


「な、なぜ?」

「え、日本離れるとか無理。言うの気が引けるけど、はっきり言えば、そんな面白くなさそうなとこ行きたくないし。つか、日本以外だと萌えれるもんは少ないだろ。それはきつい」


ハルキはオタクだった。ディープにというわけでなく、あっさりしているが、それでも日本離れるなんて考えられない。

そりゃあ、ネリアの国はハンパない金持ちかもしれないが、ネットがいくら普及してようが、何でも手に入れられようが、リアルタイムで肌で感じるには遠すぎる。

歩いて五分でコンビニとかなさそう。モノが手に入るにしても、ネットで新製品閲覧なんて虚し過ぎる。


「えっと…、…え?」


理解を超えた出来事にネリアは状況が飲み込めない。


「ごめん。ネリアは男だとしても好きなんだけど、俺、日本以外では生きてけない」

「………………」


頑張れネリア。
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