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朝いちばん
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「何で?」
ネッドが、怪訝な顔をした。
「だって、お前はこれから台所の片付けがあるだろう?」
リュランの答えに、ハッと嫌な事を思い出すネッド。
「あぁ、そうか。キチンとやっておかないと、シャミーがウルサイからなぁ。おい、もちろん手伝ってくれるんだろうな」
「さっきも言ったが、俺は客だ。この家の主人は客に皿を洗わせるのか? ――という事で、俺は寝る。お休み、石より硬いネッド君」
そう言うとリュランは、さっさとネッドのベッドへと潜り込んだ。
「ちょっと待て。何でお前が僕のベッドで寝るんだよ。下のソファーで寝ろ、ソファーで!」
「何言ってんだ。それが高価な食材を山ほど持って来た客に対する態度かよ。ほらほら、あんまり遅くなると、洗い物の音がうるさいってシャミーに怒られるぞ」
「お、お前なぁ……」
ネッドは言い返そうと思ったが、無駄な抵抗だと悟り、ため息をつきながら台所へと向かう。妹の怒りを買わないように、出来るだけ静かな動きを心掛けて。
ん――、今度の探索は、一筋縄ではいかないようだなぁ……、何か悪い予感がする。それにしても、ゴワドン侯爵とは一体どういう人物なんだろう……。ネッドは、洗い物の泡を鼻の頭に付けながら思いを巡らせた
――目の前に森が生い茂っている。これは、リルゴットの森だ。なぜ僕は、ここに居るんだろう。
ん、あれは何だ。森の入り口あたりに二人の子供が遊んでいる。とても、のどかな風景。ゆったりとした時間。そこに突然、ゾラウルフの群れが現れる。
危ない、逃げろ! そう叫ぶが、子供達には聞こえない。でもその代わりに、狼どもが僕を嗅ぎつけやって来る。恐ろしい鳴き声が、僕の耳をつんざく……つんざく……、……ざく、……いちゃん、おにいちゃん、お兄ちゃん!
お兄ちゃん?
「お兄ちゃん、早く起きて! 店を開ける時間に、間に合わなくなっちゃうわよ」
恐る恐る目を開けると、そこにはほっぺたをパンパンに膨らませたシャミーの顔。……そうだ、昨日、リュランにベッドを取られて、居間のソファーで寝たんだっけ。昨晩の記憶が、おぼろげながら頭に浮かぶ。
その途端、ネッドはグルンと回り、ソファーから転げ落ちた。シャミーがネッドがくるまっていた毛布を掴んで、そのまま引っ張り抜いたのだ。憐れなネッドは、暫く状況がつかめなかった。
「ひどいな、シャミー。もう少し、優しく起こしてくれよ」
無駄な願いとは知りつつ、ネッドがぼやく。
「ちゃんと、一回目は優しく起こしたわよ」
とぼけた顔のシャミーを見ながら、わかるものかとネッドは思う。
「うーん、そうだ。リュランはどうした。僕のベッドで、寝ているはずだけど」
「もう、とっくに出て行ったわ。諜報部員の朝は早い、とか言ってね」
「え、あいつが、朝飯も食べないで出て行ったのか。珍しい事もあるもんだ」
昨日の図々しさを思えば、ネッドはまだ夢を見ている気分であった。
「いえ、しっかり食べていったわよ。今、何時だと思ってるの?」
「何時?」
「8時30分」
「えっ―――!! 開店まであと30分しかないじゃないか! どうして、起こしてくれなかったんだよ」
文句を垂れるネッドだったが、シャミーの顔が鬼のように変わっていくのを見て、自分が余程寝坊したのだという事を嫌でも理解する。
「急がなきゃ、急がなきゃ」
シャミーが作った朝食をかっこんで、急ぎ開店準備を始めるネッド。こういう時に限って、いつもの節約料理ではなく、昨日の贅沢料理の残り物である事を恨みつつ。
そんなこんなで、やっとこさ開店準備が間に合ったネッドの城「機能付加ショップ ハッピーアディション」
そして、今日一番の客は、意外な人物だった。
ネッドが、怪訝な顔をした。
「だって、お前はこれから台所の片付けがあるだろう?」
リュランの答えに、ハッと嫌な事を思い出すネッド。
「あぁ、そうか。キチンとやっておかないと、シャミーがウルサイからなぁ。おい、もちろん手伝ってくれるんだろうな」
「さっきも言ったが、俺は客だ。この家の主人は客に皿を洗わせるのか? ――という事で、俺は寝る。お休み、石より硬いネッド君」
そう言うとリュランは、さっさとネッドのベッドへと潜り込んだ。
「ちょっと待て。何でお前が僕のベッドで寝るんだよ。下のソファーで寝ろ、ソファーで!」
「何言ってんだ。それが高価な食材を山ほど持って来た客に対する態度かよ。ほらほら、あんまり遅くなると、洗い物の音がうるさいってシャミーに怒られるぞ」
「お、お前なぁ……」
ネッドは言い返そうと思ったが、無駄な抵抗だと悟り、ため息をつきながら台所へと向かう。妹の怒りを買わないように、出来るだけ静かな動きを心掛けて。
ん――、今度の探索は、一筋縄ではいかないようだなぁ……、何か悪い予感がする。それにしても、ゴワドン侯爵とは一体どういう人物なんだろう……。ネッドは、洗い物の泡を鼻の頭に付けながら思いを巡らせた
――目の前に森が生い茂っている。これは、リルゴットの森だ。なぜ僕は、ここに居るんだろう。
ん、あれは何だ。森の入り口あたりに二人の子供が遊んでいる。とても、のどかな風景。ゆったりとした時間。そこに突然、ゾラウルフの群れが現れる。
危ない、逃げろ! そう叫ぶが、子供達には聞こえない。でもその代わりに、狼どもが僕を嗅ぎつけやって来る。恐ろしい鳴き声が、僕の耳をつんざく……つんざく……、……ざく、……いちゃん、おにいちゃん、お兄ちゃん!
お兄ちゃん?
「お兄ちゃん、早く起きて! 店を開ける時間に、間に合わなくなっちゃうわよ」
恐る恐る目を開けると、そこにはほっぺたをパンパンに膨らませたシャミーの顔。……そうだ、昨日、リュランにベッドを取られて、居間のソファーで寝たんだっけ。昨晩の記憶が、おぼろげながら頭に浮かぶ。
その途端、ネッドはグルンと回り、ソファーから転げ落ちた。シャミーがネッドがくるまっていた毛布を掴んで、そのまま引っ張り抜いたのだ。憐れなネッドは、暫く状況がつかめなかった。
「ひどいな、シャミー。もう少し、優しく起こしてくれよ」
無駄な願いとは知りつつ、ネッドがぼやく。
「ちゃんと、一回目は優しく起こしたわよ」
とぼけた顔のシャミーを見ながら、わかるものかとネッドは思う。
「うーん、そうだ。リュランはどうした。僕のベッドで、寝ているはずだけど」
「もう、とっくに出て行ったわ。諜報部員の朝は早い、とか言ってね」
「え、あいつが、朝飯も食べないで出て行ったのか。珍しい事もあるもんだ」
昨日の図々しさを思えば、ネッドはまだ夢を見ている気分であった。
「いえ、しっかり食べていったわよ。今、何時だと思ってるの?」
「何時?」
「8時30分」
「えっ―――!! 開店まであと30分しかないじゃないか! どうして、起こしてくれなかったんだよ」
文句を垂れるネッドだったが、シャミーの顔が鬼のように変わっていくのを見て、自分が余程寝坊したのだという事を嫌でも理解する。
「急がなきゃ、急がなきゃ」
シャミーが作った朝食をかっこんで、急ぎ開店準備を始めるネッド。こういう時に限って、いつもの節約料理ではなく、昨日の贅沢料理の残り物である事を恨みつつ。
そんなこんなで、やっとこさ開店準備が間に合ったネッドの城「機能付加ショップ ハッピーアディション」
そして、今日一番の客は、意外な人物だった。
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