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伯父の気遣い
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「いや、これは驚いた。お前が悪魔と契約した事は知っていたが……」
「すいません。色々とお話をしていなくて」
伯父の驚きように、ネッドは恐縮する。
「まぁ、いい、まぁ、いい。全てを話せないのを承知で、私はお前の後見になったんだ。話したくなる時まで、気長に待つさ」
ネッドの心配をよそに、ガントはどこか嬉しそうに見える。娘が魔王の娘と互角に戦った事、大きな目標を得た事を喜んでいるかのようだ。
「しかしなぁ。メルだけでなく、魔王の娘とも婚約してたなんて、お前もなかなかやるじゃないか。もっとも、この国は一夫多妻制じゃないから、お前にとっては残念だろうがな」
「もう、婚約してませんよ……! 」
ネッドが、慌てて否定する。
「ふっ。だが、もしお前の父アルベルトが生きていたら、只じゃ済まなかったろうよ。あの石頭、お前をぶん殴って勘当してたかも知れんぞ」
ガントは、高笑いをした。
「まぁ、お前も騎士時代”ストーン・ゴーレムのネッド”と呼ばれていたそうだから、血は争えないというところか」
伯父の更なる高笑いに、ネッドもつられて笑う。ネッドは”あの事”について、伯父に全てを話したわけではない。もし知ってしまったら、下手をすればリュランの様に国家反逆罪に問われかねないからだ。だがメルとアリシアが対峙してしまった以上、いつかは話さねばならないだろう。
一応の話が終ったネッドは、リルゴットの森の一件が片付き次第、メルとはきちんと話し合うと告げてギルド館を後にした。
「さて、次はアスティの所だ」
ネッドは向かいのカフェに立ち寄り、友人の好きなミレッズオレンジのパイをテイクアウトする。忙しさにかまけて訪問が遅れた事を後悔しつつも、ネッドは彼の住まいである町はずれの一角へと足を運んだ。
果たしてというべきか、やはりというべきか、魔石職人アスティの店はクローズドの看板が掛かっており、住居部分の呼び鈴を押しても返事はなかった。通りかかった近所の人に聞いてみたところ、おととい辺りは見たものの、それ以降は見かけないという。
もっとも魔石を仕入れに他の街へ行く事は珍しくはないし、出来上がった品を届けたついでに微調整をする事だった普通にある。必要以上の心配はいらないだろう。これ以上、ここにいても何も出来ないと思ったネッドは、次の目的地へと足を向けた
街の外れから三十分も歩いたろうか。ネッドは、リルゴットの森の入り口辺りに差し掛かっていた。異例ずくめの探索の目的地。そして四十年前の悲劇の現場。奇しくも今は、惨劇のあった時と同じ季節である。犠牲になった子供の事、その親の事。そして懺悔の念を抱え生きてきた父の事。様々な思いが、彼の脳裏をよぎった。
「あぁ、あれは……」
ネッドから少し離れた草原に、セルラビットが群れを成している。多分、子供の頃のゴワドン侯爵と遊び相手のマリオンも、これと同じ風景を見ていたのだろう。彼は四十年前のあの時へ吸い込まれるかのように、セルラビットの群れへと近づいて行った。
ネッドは、この大人しい兎たちが悲劇の引き金になった事を思いながら、彼らの何匹かを撫でてみる。なるほど、子供なら誰でも魅かれる愛くるしさだ。幼い頃のネッドも例外ではない。
そんな感傷に浸っているネッドの体に、悪寒のような冷気が走る。彼は、すぐさま森の入り口に目をやった。
「すいません。色々とお話をしていなくて」
伯父の驚きように、ネッドは恐縮する。
「まぁ、いい、まぁ、いい。全てを話せないのを承知で、私はお前の後見になったんだ。話したくなる時まで、気長に待つさ」
ネッドの心配をよそに、ガントはどこか嬉しそうに見える。娘が魔王の娘と互角に戦った事、大きな目標を得た事を喜んでいるかのようだ。
「しかしなぁ。メルだけでなく、魔王の娘とも婚約してたなんて、お前もなかなかやるじゃないか。もっとも、この国は一夫多妻制じゃないから、お前にとっては残念だろうがな」
「もう、婚約してませんよ……! 」
ネッドが、慌てて否定する。
「ふっ。だが、もしお前の父アルベルトが生きていたら、只じゃ済まなかったろうよ。あの石頭、お前をぶん殴って勘当してたかも知れんぞ」
ガントは、高笑いをした。
「まぁ、お前も騎士時代”ストーン・ゴーレムのネッド”と呼ばれていたそうだから、血は争えないというところか」
伯父の更なる高笑いに、ネッドもつられて笑う。ネッドは”あの事”について、伯父に全てを話したわけではない。もし知ってしまったら、下手をすればリュランの様に国家反逆罪に問われかねないからだ。だがメルとアリシアが対峙してしまった以上、いつかは話さねばならないだろう。
一応の話が終ったネッドは、リルゴットの森の一件が片付き次第、メルとはきちんと話し合うと告げてギルド館を後にした。
「さて、次はアスティの所だ」
ネッドは向かいのカフェに立ち寄り、友人の好きなミレッズオレンジのパイをテイクアウトする。忙しさにかまけて訪問が遅れた事を後悔しつつも、ネッドは彼の住まいである町はずれの一角へと足を運んだ。
果たしてというべきか、やはりというべきか、魔石職人アスティの店はクローズドの看板が掛かっており、住居部分の呼び鈴を押しても返事はなかった。通りかかった近所の人に聞いてみたところ、おととい辺りは見たものの、それ以降は見かけないという。
もっとも魔石を仕入れに他の街へ行く事は珍しくはないし、出来上がった品を届けたついでに微調整をする事だった普通にある。必要以上の心配はいらないだろう。これ以上、ここにいても何も出来ないと思ったネッドは、次の目的地へと足を向けた
街の外れから三十分も歩いたろうか。ネッドは、リルゴットの森の入り口辺りに差し掛かっていた。異例ずくめの探索の目的地。そして四十年前の悲劇の現場。奇しくも今は、惨劇のあった時と同じ季節である。犠牲になった子供の事、その親の事。そして懺悔の念を抱え生きてきた父の事。様々な思いが、彼の脳裏をよぎった。
「あぁ、あれは……」
ネッドから少し離れた草原に、セルラビットが群れを成している。多分、子供の頃のゴワドン侯爵と遊び相手のマリオンも、これと同じ風景を見ていたのだろう。彼は四十年前のあの時へ吸い込まれるかのように、セルラビットの群れへと近づいて行った。
ネッドは、この大人しい兎たちが悲劇の引き金になった事を思いながら、彼らの何匹かを撫でてみる。なるほど、子供なら誰でも魅かれる愛くるしさだ。幼い頃のネッドも例外ではない。
そんな感傷に浸っているネッドの体に、悪寒のような冷気が走る。彼は、すぐさま森の入り口に目をやった。
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