50 / 218
魔女の薬 (10) コリスの悪い予感
しおりを挟む
「だから、パパ!」
ついに、ママが怒りだしました。
皆さんには、もうどういう事かわかりましたよね。
ママはパパの事は覚えていますが、ニールが自分の子供である事を忘れています。そしてパパは、ニールが自分の子供である事は覚えていますが、ママが自分の奥さんである事を忘れています。一方で、ニールはママの事もパパの事も覚えています。
「だから、ママ!」
「だから、ニール!」
「だから、パパ!」
ニールとパパとママは、三人そろってかみ合わない会話を続けました。言い合いでお腹がへって、取りあえずは昼食を食べようとパパが提案するまでは。
「あぁ、心配だわ。心配、心配。あの子、ちゃんとやっているかしら」
魔女会議を終え、コリスが町へ戻って来ました。中央通りにある時計台は、既に午後三時をまわっています。
新米魔女ネリスの師匠であり、この町の薬工場の責任者、最高位の魔女コリスは本当に心配でたまりませんでした。大切な魔女会議の内容も、ロクロク頭に入らないほどに心は上の空だったのです。
「こんな事なら、いっそネリスを家に帰して、工場のカギを閉めきってしまうんだったわ」
コリスの予感は、とても当たるのです。良くない予感は特にです。そんなコリスの目に、町のあちらこちらでのざわめく様子が映り出しました。
「何の騒ぎかしら……」
特大の嫌な予感を携えて、其処ここで事情を聞いて回るコリス。彼女は町の人に大変慕われていましたので、彼らは口々に、すすんでトラブルの内容を話しました。
概要は、何となくだけど分かったわ。町の大多数の人が影響を受けているとなると、これは病気の感染か、呪いの類か、あとは……薬物汚染!
そう言えば僅かにですが、薬の残り香がします。コリスは最高位の魔女だけあって、こういう”鼻”も利くのです。彼女は悪い予感で爆発しそうな心をなだめながら、急いで薬工場へと向かいました。
コリスは薬工場の大きな門扉の脇についている勝手口を開け、少し離れている正面玄関へと急行します。彼女の心の中では、ネリスを信じたい気持ちと、絶対何かやらかしたという気持ちが何度も入れ替わっていました。
「あら?」
気のはやるコリスでしたが、またしてもふと、気になる臭いが彼女の鼻孔をくすぐりました。先ほど、町で嗅いだのと同じ臭いです。それは玄関から少し離れているゴミの廃棄棟の方から漂っているようです。コリスの魔女としての勘が”あそこには、きっと何か重要な物がある”とささやきました。
自分の心を信じたコリスが廃棄棟へ行き、少し空いている扉を開けてみると……。
ついに、ママが怒りだしました。
皆さんには、もうどういう事かわかりましたよね。
ママはパパの事は覚えていますが、ニールが自分の子供である事を忘れています。そしてパパは、ニールが自分の子供である事は覚えていますが、ママが自分の奥さんである事を忘れています。一方で、ニールはママの事もパパの事も覚えています。
「だから、ママ!」
「だから、ニール!」
「だから、パパ!」
ニールとパパとママは、三人そろってかみ合わない会話を続けました。言い合いでお腹がへって、取りあえずは昼食を食べようとパパが提案するまでは。
「あぁ、心配だわ。心配、心配。あの子、ちゃんとやっているかしら」
魔女会議を終え、コリスが町へ戻って来ました。中央通りにある時計台は、既に午後三時をまわっています。
新米魔女ネリスの師匠であり、この町の薬工場の責任者、最高位の魔女コリスは本当に心配でたまりませんでした。大切な魔女会議の内容も、ロクロク頭に入らないほどに心は上の空だったのです。
「こんな事なら、いっそネリスを家に帰して、工場のカギを閉めきってしまうんだったわ」
コリスの予感は、とても当たるのです。良くない予感は特にです。そんなコリスの目に、町のあちらこちらでのざわめく様子が映り出しました。
「何の騒ぎかしら……」
特大の嫌な予感を携えて、其処ここで事情を聞いて回るコリス。彼女は町の人に大変慕われていましたので、彼らは口々に、すすんでトラブルの内容を話しました。
概要は、何となくだけど分かったわ。町の大多数の人が影響を受けているとなると、これは病気の感染か、呪いの類か、あとは……薬物汚染!
そう言えば僅かにですが、薬の残り香がします。コリスは最高位の魔女だけあって、こういう”鼻”も利くのです。彼女は悪い予感で爆発しそうな心をなだめながら、急いで薬工場へと向かいました。
コリスは薬工場の大きな門扉の脇についている勝手口を開け、少し離れている正面玄関へと急行します。彼女の心の中では、ネリスを信じたい気持ちと、絶対何かやらかしたという気持ちが何度も入れ替わっていました。
「あら?」
気のはやるコリスでしたが、またしてもふと、気になる臭いが彼女の鼻孔をくすぐりました。先ほど、町で嗅いだのと同じ臭いです。それは玄関から少し離れているゴミの廃棄棟の方から漂っているようです。コリスの魔女としての勘が”あそこには、きっと何か重要な物がある”とささやきました。
自分の心を信じたコリスが廃棄棟へ行き、少し空いている扉を開けてみると……。
0
あなたにおすすめの小説
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる