ヴォルノースの森の なんてことない毎日

藻ノかたり

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扉の奥の秘宝 (12) しばしの休憩

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「ほい、じゃぁ頑張ってくれ。俺は、ここで見張り番だ」

ゾルウッドはそう言うと、持参したクッションを石畳の床に置きました。どっかと座り込み、後の壁にもたれかかります。ここから、鍵開けに挑戦するフューイを監視するのです。

フューイは少しうなづいて、一人、奥へと進みます。秘宝の収まっている部屋の前へ辿り着いたフューイは、携えていた背の低い小さな椅子、いえ、台と言った方が良い代物を扉の前に置きました。

背負っていたリュックを床に放り、中から鍵開けの道具一式を取り出します。

さぁ、勝負の始まりです。

若い細工師は台に腰を下ろし、早速、目の前の難敵に向き合いました。

「これが、オレの求める錠前であらん事を」

フューイが呟きましたが、ゾルウッドには聞こえません。何か訳ありのようですね。

彼は昨日から練った手順を、次々と試していきました。ですが、ことごとくはじかれてしまいます。さすが秘宝への扉、一筋縄ではいきません。フューイはくじける事なく、それどころか表情一つ変えずに作業を続けます。

一方、曲がり角に、でんと陣取ったゾルウッド。カード型の魔道具から伸びたイヤホンからは華麗な歌声が流れています。座る事により更に丸っこくなった体は、歌声に合わせてリズムを取っているとも、貧乏ゆすりともわからぬ動きを見せ始めました。

しかしその目は先ほどまでの穏やかなものとは打って変わり、遠方で鍵開け作業に従事するライバルをしっかと見据えています。

ジリリン、ジリリン!

作業開始から、どれだけ時間が経ったでしょう。ゾルウッドの暇つぶしを手伝う魔道具から、アラームの音が鳴り響き、午前中の作業終了を告げました。

「おおい、フューイさんよぉ。昼飯の時間だぜぇ」

ヨッコラショとばかりに立ち上がったゾルウッドが、未だに錠前と格闘しているライバルに声をかけます。昼に休憩を取る事は規則で決められており、これは守らねばなりません。見張りは決まりを守らせる役目も担っているのです。

奥まった廊下に響く中年細工師の声を受け、フューイが腰を上げます。そして、珍しく、ため息をつきました。仕事がはかばかしくない証拠です。

二人は連れ添って、宝物棟の外へと出てきました。朝に挨拶をした衛兵の姿は、どこにも見えません。

「ありゃ、兵隊さんはどこへ行っちまったんだ。不用心だなぁ」

ゾルウッドが、辺りをキョロキョロと見回します。

「ボンシックが言っていたように、人手が足りないんだろう。まぁ、こういう事なら、オレたちが互いを見張らなきゃならない理由も納得できる」

珍しくフューイが、話に乗って来ました。

「だねぇ」

ゾルウッドは、少し嬉しそうに答えます。

両名は連れ立って宿舎の食堂へ行き、バラバラではありましたが食事をとりました。ゾルウッドは、相変わらず愛想を振りまきながら、レネフィルと冗談を交わしています。
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