72 / 218
扉の奥の秘宝 (13) 人の良い常連客
しおりを挟む
その後、二人は再び宝物庫へ舞い戻り、フューイが挑戦を続行したものの、作戦クリアには到りませんでした。
「ふぅ。これでアンタの勝ち逃げは、取りあえず無くなったわけだ」
ゾルウッドが、ニヤリとしました。もし初日でフューイがカギを開けてしまったら、ゾルウッドは挑戦する機会すら奪われてしまったのですから、彼の言は十分に理解できますね。
フューイは、何も答えませんでした。彼の心は、既に明後日の再挑戦を見据えていたからです。
宿舎に戻ったフューイは、早速に自室で今日の成果を書き留めます。これを元にして、計画を練り直すのでした。
暫くたつと接客スタッフのレネフィルが、フューイを呼びに来ます。夕食の支度が整ったからです。フューイは研究成果をデスクの鍵付き引き出しにしまうと、彼女の後について食堂へ降りました。
思ったよりも、ずっと複雑だ。さすがと言うべきか、当然と言うべきか……。
彼は機械的に夕食を口へと運びます。料理の味なんて、全く意に介しません。ちょっと料理人に対しては失礼ですね。
早々に食事を終えたフューイが、部屋へと引き上げます。しかし、ドアを開けた瞬間……。
「?」
フューイは何とも言えない違和感を覚えました。先ほど出て行った時と、何ら変わりはありません。しかし、何か、何かが違うのです。彼は直感的にデスクの引き出しを開けました。鍵がかかった、今日の成果が記されている資料の入った引き出しです。
果たしてそこに、目的のものはありました。
「気のせいか」
大きくため息をついたフューイは、資料を元の引き出しに戻し鍵をかけます。
初日のせいか、今日は疲れた。
若い細工師は、そのままベッドに倒れ込み、泥のように眠りの淵へと落ちていきました。
「いゃぁ、他人事ながら緊張しますねぇ」
骨董屋「エンシャント・ケイブ」のカウンターに陣取ったマルロンが、興奮気味に語ります。
「だろ? 世紀の大勝負。お前さんは、どっちが勝つと思う?」
カウンター越しに、この屋のオーナー、ゼペックの口角が上がりました。最終的には高く売りたいわけですが、そこは気持ちよく買ってもらいたいとも思っています。その為には、こういった由緒・由来の話は欠かせません。
「そうですねぇ。人の良さそうなゾルウッドに勝ってほしい気もしますが、ニヒルなフューイも捨てがたい。なぁ、セディーはどう思う?」
すっかり店主の術中にはまった小太りの男が、隣に座っている骨董仲間に話しかけました。
「うーん。何とも言えないなぁ。どっちが開けてもいいと言えばいいし……」
「なんだよ、張り合いがないなぁ」
パパの気のない返事に、マルロンは不服そうです。
パパは、考えます。
この話って、どちらが鍵を開けるかに意味はあるんだろうか。つまりは開ける者の違いによって、ストーリーの展開に差があるのかどうか……。
「ふぅ。これでアンタの勝ち逃げは、取りあえず無くなったわけだ」
ゾルウッドが、ニヤリとしました。もし初日でフューイがカギを開けてしまったら、ゾルウッドは挑戦する機会すら奪われてしまったのですから、彼の言は十分に理解できますね。
フューイは、何も答えませんでした。彼の心は、既に明後日の再挑戦を見据えていたからです。
宿舎に戻ったフューイは、早速に自室で今日の成果を書き留めます。これを元にして、計画を練り直すのでした。
暫くたつと接客スタッフのレネフィルが、フューイを呼びに来ます。夕食の支度が整ったからです。フューイは研究成果をデスクの鍵付き引き出しにしまうと、彼女の後について食堂へ降りました。
思ったよりも、ずっと複雑だ。さすがと言うべきか、当然と言うべきか……。
彼は機械的に夕食を口へと運びます。料理の味なんて、全く意に介しません。ちょっと料理人に対しては失礼ですね。
早々に食事を終えたフューイが、部屋へと引き上げます。しかし、ドアを開けた瞬間……。
「?」
フューイは何とも言えない違和感を覚えました。先ほど出て行った時と、何ら変わりはありません。しかし、何か、何かが違うのです。彼は直感的にデスクの引き出しを開けました。鍵がかかった、今日の成果が記されている資料の入った引き出しです。
果たしてそこに、目的のものはありました。
「気のせいか」
大きくため息をついたフューイは、資料を元の引き出しに戻し鍵をかけます。
初日のせいか、今日は疲れた。
若い細工師は、そのままベッドに倒れ込み、泥のように眠りの淵へと落ちていきました。
「いゃぁ、他人事ながら緊張しますねぇ」
骨董屋「エンシャント・ケイブ」のカウンターに陣取ったマルロンが、興奮気味に語ります。
「だろ? 世紀の大勝負。お前さんは、どっちが勝つと思う?」
カウンター越しに、この屋のオーナー、ゼペックの口角が上がりました。最終的には高く売りたいわけですが、そこは気持ちよく買ってもらいたいとも思っています。その為には、こういった由緒・由来の話は欠かせません。
「そうですねぇ。人の良さそうなゾルウッドに勝ってほしい気もしますが、ニヒルなフューイも捨てがたい。なぁ、セディーはどう思う?」
すっかり店主の術中にはまった小太りの男が、隣に座っている骨董仲間に話しかけました。
「うーん。何とも言えないなぁ。どっちが開けてもいいと言えばいいし……」
「なんだよ、張り合いがないなぁ」
パパの気のない返事に、マルロンは不服そうです。
パパは、考えます。
この話って、どちらが鍵を開けるかに意味はあるんだろうか。つまりは開ける者の違いによって、ストーリーの展開に差があるのかどうか……。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる