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扉の奥の秘宝 (14) のんきな細工師
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「ほれほれ、あんまり難しく考えなさんな」
ゼペックは空になった二人のカップにコーヒーをつぎ、一緒にバタークッキーを出しました。ボンシックと、二人の細工師が食べていたのと同じお菓子です。
「おぉ、こういうのが出ると、臨場感が増しますねぇ」
マルロンがキャッキャッと喜びながら、クッキーに手を伸ばします。繰り返しますが、この人、三十代半ばのいい大人です。
パパはそんな愛すべき骨董仲間に目をやりながら、一気に残り少なくなったクッキーの一つを取り上げました。
「さぁてと、いよいよここから、話は佳境に入っていくぞ」
インターバルをとったあとの、後半戦が始まります。
フューイが鍵開けに失敗した翌日。今度はゾルウッドが、作戦に挑む番となりました。
宝物庫最深部の曲がり角についた時、
「じゃぁ、さっさと開けて、褒美は頂きだ。昨日開けられなかった事を、後悔した方がいいな」
と、ゾルウッドがフューイを挑発します。
「そうか」
相変わらず、ぶっきらぼうに応えるフューイ。
それを気にする事もなく、ゾルウッドは宝物庫の前に勇んで行進していきました。
フューイは、その場に腰掛けます。ゾルウッドと違い、クッションもなければ暇つぶしの魔道具もありません。お尻が痛くならないんでしょうかね。
午前中、ゾルウッドの努力は徒労に終わりました。そして昼食後、再び彼の挑戦が始まります。フューイはそれを、見るとはなし見ていました。
監視と言っても、四六時中、ゾルウッドの方を緊張して見据えている必要はありません。彼が、”その場にいるかどうか”だけを確認すればいいのです。もし扉が開いて、陽気な細工師が中へ入れば、それは一目でわかりますからね。
「うーん、駄目だなぁ」
「ちきしょうめ」
「あ、なるほど」
黙々と鍵開けに集中していたフューイとは違い、ゾルウッドは事あるごとにコメントを発します。フューイは、それをただ黙って聞いていました。
こんな有様ですので、鍵開けが成功するわけがありません。
そしてついに、
「あ~、だめだこりゃ。今日はおしまい」
と、投げやりな声が長細い廊下に木霊しました。ゾルウッドは、早々に鍵開け道具を袋に詰め、意外にも軽い足取りでフューイの元へと引き返してきます。難敵に歯が立たなかった事など、余り気にしていないようです。
「今日は、終わりだ、終わり。見張り番、おつかれさま」
中年細工師は苦笑いをしながら、冗談めかしてフューイに作業終了を伝えました。
「もういいのか?」
若い細工師が、一応尋ねます。
「あぁ、ちょっと煮詰まっちまった。問題点は十分にわかったから、明後日の再挑戦までじっくりと対策を考えるさ」
「オレが明日、開けてしまうかも知れないぞ?」
フューイが念を押しました。あとで文句を言われてはたまらないからです。面倒事を避けるクセがついている、フューイならではの発言でした。
ゼペックは空になった二人のカップにコーヒーをつぎ、一緒にバタークッキーを出しました。ボンシックと、二人の細工師が食べていたのと同じお菓子です。
「おぉ、こういうのが出ると、臨場感が増しますねぇ」
マルロンがキャッキャッと喜びながら、クッキーに手を伸ばします。繰り返しますが、この人、三十代半ばのいい大人です。
パパはそんな愛すべき骨董仲間に目をやりながら、一気に残り少なくなったクッキーの一つを取り上げました。
「さぁてと、いよいよここから、話は佳境に入っていくぞ」
インターバルをとったあとの、後半戦が始まります。
フューイが鍵開けに失敗した翌日。今度はゾルウッドが、作戦に挑む番となりました。
宝物庫最深部の曲がり角についた時、
「じゃぁ、さっさと開けて、褒美は頂きだ。昨日開けられなかった事を、後悔した方がいいな」
と、ゾルウッドがフューイを挑発します。
「そうか」
相変わらず、ぶっきらぼうに応えるフューイ。
それを気にする事もなく、ゾルウッドは宝物庫の前に勇んで行進していきました。
フューイは、その場に腰掛けます。ゾルウッドと違い、クッションもなければ暇つぶしの魔道具もありません。お尻が痛くならないんでしょうかね。
午前中、ゾルウッドの努力は徒労に終わりました。そして昼食後、再び彼の挑戦が始まります。フューイはそれを、見るとはなし見ていました。
監視と言っても、四六時中、ゾルウッドの方を緊張して見据えている必要はありません。彼が、”その場にいるかどうか”だけを確認すればいいのです。もし扉が開いて、陽気な細工師が中へ入れば、それは一目でわかりますからね。
「うーん、駄目だなぁ」
「ちきしょうめ」
「あ、なるほど」
黙々と鍵開けに集中していたフューイとは違い、ゾルウッドは事あるごとにコメントを発します。フューイは、それをただ黙って聞いていました。
こんな有様ですので、鍵開けが成功するわけがありません。
そしてついに、
「あ~、だめだこりゃ。今日はおしまい」
と、投げやりな声が長細い廊下に木霊しました。ゾルウッドは、早々に鍵開け道具を袋に詰め、意外にも軽い足取りでフューイの元へと引き返してきます。難敵に歯が立たなかった事など、余り気にしていないようです。
「今日は、終わりだ、終わり。見張り番、おつかれさま」
中年細工師は苦笑いをしながら、冗談めかしてフューイに作業終了を伝えました。
「もういいのか?」
若い細工師が、一応尋ねます。
「あぁ、ちょっと煮詰まっちまった。問題点は十分にわかったから、明後日の再挑戦までじっくりと対策を考えるさ」
「オレが明日、開けてしまうかも知れないぞ?」
フューイが念を押しました。あとで文句を言われてはたまらないからです。面倒事を避けるクセがついている、フューイならではの発言でした。
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