ヴォルノースの森の なんてことない毎日

藻ノかたり

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扉の奥の秘宝 (16) 逃げない理由

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「契約書には、もしどちらも鍵を開けられなかったら、その時は一定の報酬、まぁ参加料と口止め料だろうな、それが支払われるとあった。

十日間近く拘束される仕事としては、破格の手当だと思う。今、ここを立ち去ったら、当然もらえない。それに上手く行けばのだが、この先の何日間かで、あんたが鍵を開けて莫大な報酬を得る可能性だってある。

おまけに、一定時間戻らなければ、その場では捕まらないが、盗賊の一味として手配はされる。もう、まともな仕事は出来はしまい」

フューイが、きっぱりと言い放ちます。

「つまり、良い事は一つもないと」

「そうなるな」

二人の問答に、決着がつきました。

「いやぁ、あんた頭も切れるねぇ。たださ、世の中、それが仇になる場合もあるもんだってのは、忘れん方がいいな。まぁ、オッサンのおせっかいだがね」

ゾルウッドはそう言い残すと、一人、門の方へと歩いていきます。

わかってるさ。多分、オレは世の中で一番それを良く知っている。だから落とし前をつける為に、どうしてもあの錠前に出会わなきゃならないんだ。

フューイは拳をギュッと握りしめ、宿舎への道を辿りました。ただでさえ彼の険しい顔が、更に険しくなりました。

それから、二時間ばかりが経ったでしょうか。ゾルウッドは何事もなく宿舎へと戻って来ます。「もう、ゾルウッドさん。逃げ出したのかと思っちゃいましたよ!」と気安く声をかけるレネフィルの言葉にも、相変わらず笑って答える中年細工師でした。

下の食堂でそんな事が起きているとは露知らず、というよりも、全く関心のないフューイが明日の再挑戦を前にして作戦を練り上げます。

期限の内に、鍵を開けるのは難しいかも知れない。

フューイの心に、珍しく弱気の風が吹きました。ですが風ついでに言わせてもらえば、明日は明日の風が吹くです。諦めてはいけません。

しかし翌日の挑戦は、フューイの予想通りになりました。午前、午後と必死の挑戦も実りません。フューイは、落胆の表情をおくびにも見せないで宿舎に帰ります。

次こそは……。

若い細工師は決意を新たにして、再々挑戦に向けての知恵を絞り、ノートに綿密な作戦を書き込みました。

トントン。ドアが鳴ります。

いつものように、レネフィルが食事の用意が出来た事をフューイに伝えました。

今日の夕食は、サシの入った牛ステーキです。本来なら大変なご馳走ですが、フューイは無表情のまま、淡々と網目の入った肉を口へと運びます。

その時、フューイの頭に突然、鍵開けのアイデアが閃きました。こういう経験って、誰しもありますよね。全然関係ない行動をしている時に、急に良い考えが頭に浮かぶって事。
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