ヴォルノースの森の なんてことない毎日

藻ノかたり

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扉の奥の秘宝 (26) 謎解き2

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「ふん、そうかい。じゃぁ、ひとつ根拠を聞かせてもらおうじゃないか」

今度は彼女もフューイの挑発には乗りません。さすがは、プロの盗賊といったところでしょうか。

「まぁ、勘みたいなもんなんだけどな。オレが侵入者を追って、廊下の奥で見失った後、お前はオレの部屋を訪ねてきただろう? あの時、下の階へつながる階段とは”逆方向”つまり、廊下の奥の方から足音が聞こえてきたように思えたんだ。そっちから、お前が来るはずはないのにだ。

あの時は、気のせいかとも思ったよ。それに後から考えた理屈でも、お前が兵士とグルで、奴を秘密の部屋にでもかくまったんじゃないかとね。

だが、今から考えれば、お前はあの突き当りの倉庫で、何かの”物”に化けていたんじゃないのか?もしくは体を真っ黒にして、暗闇に溶け込んでいたのかも知れないな」

「ご明察。あたいは全身を黒くして、天井に張り付いていたんだ。しかし、いの一番にお前の部屋に駆けつけて、様子を探ろうとしたのが裏目に出るとは失敗した」

フューイとレネフィルの掛け合いも、だんだん滑らかになっていきます。でもそれは、終わりの時が近いという印でもありました。

パチ、パチ、パチ!

モゼントが、やんわりと笑いながら拍手をします。こちらも、余裕が戻って来たようです。

「いやぁ、降参、降参。大したもんだ。それゆえに、実に惜しいよ。あんたをここで、亡き者にしなきゃならないって事がさ」

盗賊の首領の言葉に、ウソはありませんでした。

「珍しくたくさん喋ったので、少し疲れた。今度はそっちが教えてくれないか。……今、オレを殺すと言ったが、その後はどうするんだ?」

フューイには半分答えが分かっていましたが、敢えてそう尋ねます。

「よろしい。これまでの立派な口上に応える意味で、教えてやろう。そしてこれが本当の意味で、冥土の土産話となるだろうよ」

モゼントが、再び、傍の宝箱に腰を下ろしました。

「まずは、お前を殺す。そして、ここの鍵を再び閉める。今、鍵は開いてる状態だ。俺様もいっぱしの鍵師なんでな。開いてる状態の錠前を調べれば、再び開けるやり方くらいは分かるってもんだ。

で、俺様は明日の挑戦で鍵を開ける。がっぽりと報奨金がいただけるわけだ。その後、何週間かして、今度は本当に盗賊として忍び込んむんだよ、そして今ここにある宝物を、ごっそり頂いていく。出入りの為のルートは、ここ数日で調べ上げているし準備は万端だ」

なるほど。ゾルウッドのフリをしたモゼントが、宝物要塞の敷地をウロウロしていたのは、それを調べていたんですね。もちろん、レネフィルからの事前情報があったのは言うまでもないでしょう。

「いや、まてまて。それじゃぁ疑問だらけで、冥土の土産話にはならないぞ。

オレを殺してここに閉じ込めたら、出て行く時に宝物棟の門番に怪しまれるだろう。今まで、ずっと二人で出て行ったんだからな。

それにオレの姿が数時間見えなければ、お前は盗賊の仲間として捕らえられる契約だ。とても、明日まではもたないぞ」

若い細工師が、疑問を投げかけます。
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