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扉の奥の秘宝 (28) ボンシックへの報告
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……と思いきや、彼は悠然と身をかわし、レネフィルの腕をねじり上げます。そして彼女の懐に入り込み、アゴへのアッパーを一撃。その時点で勝負はついていましたが、更に腹へと蹴りを入れて、暗殺者を部屋の奥近くまで吹っ飛ばします。
女性相手に、酷いんじゃないかですって? 皆さんは、彼女が優秀な暗殺者である事を忘れてはいませんか。念には念をというわけですね。
一方、モゼントは慌てます。こと暗殺にかけては絶対的な信頼をおく部下が、こうもあっさりとやられてしまったのです。その戸惑いが、彼の敗北をより確実にしました。
フューイは体を一回転させ、愚鈍な盗賊に回し蹴りをお見舞いします。これにはボッテリとした重量感のあるモゼントも、たまらず部下のレネフィルと同じところまで勢いよく転がっていきました。
「ほぉ……」
だらしなく横たわっている二人の盗賊、特に暗殺者の方を見て、フューイが呟きます。
それも、そのはず。彼女の顔は既にレネフィルのものですらなく、なんとキツネの顔をしていたのです。そうなんです。彼女はキツネの動物ビトで、使える魔法が”化ける”だったのですね。
「う、うっ……」
さすがというべきか、腐っても鯛というべきか。モゼントが、フューイの一撃から目を覚ましました。
「じゃあな。あんたらは捕まれば、間違いなく命はないだろう。やはり、そちらにとっての冥土の土産話となったようだ」
フューイはそう言うと、悠然と出口の方へと歩いて行きました。
「て、てめぇ……。ま、待ちやがれ……」
果敢にも盗賊の首領は、未だに反抗を試みようとします。
「あぁ、言い忘れてたけどな、この錠前は、扉を閉めると自動的にまた鍵が掛かる仕組みのようなんだ。もちろん、内側からは開きはしない。
それじゃぁ、地獄の悪魔によろしくな」
フューイが、いつになく饒舌になっています。錠前を開け、一連の謎を解決した高揚感からでしょうか。
ギィィィ……。
扉が、動き始めます。
「ま、まて……」
モゼントは、よろめきながらも扉の方へと向かいました。しかし盗賊たちにとって、生への望みである唯一の脱出口は、絶望の音とともに静かに閉ざされました。
宝物棟から屋外に出たフューイは、大きく深呼吸をします。緊張に満ちたここ数日間の中で、これほどおいしい空気を吸ったのは初めてでした。
「やぁ、最後の挑戦はどうだった? ん、 ところでもう一人は?」
傍らにいる門番が尋ねます。
「まぁ、色々とあったってところだ。これから、ボンシックの所へ報告に行く。心配なら一緒に来るかい?」
何の事やら呆気に取られている兵士を尻目に、フューイは足取りも軽く宿舎の方へと歩いて行きました。
さて、ここはボンシックのオフィス。
全てを報告したフューイでしたが、それを聞いた小役人は、意外にも戸惑いを見せませんでした。
「驚いた様子がないな」
フューイは、疑問を正直に口にします。
「甘く見てもらっては困る。これでも私は、宝物要塞の責任者だぞ」
しかし、そう答えるボンシックの言葉には険がなく、むしろ満足げな様子さえありました。
「まぁ、お前も疲れているだろう。奴らを捕まえるために、もう一度、扉を開けてもらわねばならないが、急ぐ必要はない。全ては明日だ。それまでは、ゆっくりと休んでくれ。
ご苦労だった」
ボンシックは、おだやかにそう言うと、机に置いてあるベルを鳴らして部下の兵士を呼びました。
女性相手に、酷いんじゃないかですって? 皆さんは、彼女が優秀な暗殺者である事を忘れてはいませんか。念には念をというわけですね。
一方、モゼントは慌てます。こと暗殺にかけては絶対的な信頼をおく部下が、こうもあっさりとやられてしまったのです。その戸惑いが、彼の敗北をより確実にしました。
フューイは体を一回転させ、愚鈍な盗賊に回し蹴りをお見舞いします。これにはボッテリとした重量感のあるモゼントも、たまらず部下のレネフィルと同じところまで勢いよく転がっていきました。
「ほぉ……」
だらしなく横たわっている二人の盗賊、特に暗殺者の方を見て、フューイが呟きます。
それも、そのはず。彼女の顔は既にレネフィルのものですらなく、なんとキツネの顔をしていたのです。そうなんです。彼女はキツネの動物ビトで、使える魔法が”化ける”だったのですね。
「う、うっ……」
さすがというべきか、腐っても鯛というべきか。モゼントが、フューイの一撃から目を覚ましました。
「じゃあな。あんたらは捕まれば、間違いなく命はないだろう。やはり、そちらにとっての冥土の土産話となったようだ」
フューイはそう言うと、悠然と出口の方へと歩いて行きました。
「て、てめぇ……。ま、待ちやがれ……」
果敢にも盗賊の首領は、未だに反抗を試みようとします。
「あぁ、言い忘れてたけどな、この錠前は、扉を閉めると自動的にまた鍵が掛かる仕組みのようなんだ。もちろん、内側からは開きはしない。
それじゃぁ、地獄の悪魔によろしくな」
フューイが、いつになく饒舌になっています。錠前を開け、一連の謎を解決した高揚感からでしょうか。
ギィィィ……。
扉が、動き始めます。
「ま、まて……」
モゼントは、よろめきながらも扉の方へと向かいました。しかし盗賊たちにとって、生への望みである唯一の脱出口は、絶望の音とともに静かに閉ざされました。
宝物棟から屋外に出たフューイは、大きく深呼吸をします。緊張に満ちたここ数日間の中で、これほどおいしい空気を吸ったのは初めてでした。
「やぁ、最後の挑戦はどうだった? ん、 ところでもう一人は?」
傍らにいる門番が尋ねます。
「まぁ、色々とあったってところだ。これから、ボンシックの所へ報告に行く。心配なら一緒に来るかい?」
何の事やら呆気に取られている兵士を尻目に、フューイは足取りも軽く宿舎の方へと歩いて行きました。
さて、ここはボンシックのオフィス。
全てを報告したフューイでしたが、それを聞いた小役人は、意外にも戸惑いを見せませんでした。
「驚いた様子がないな」
フューイは、疑問を正直に口にします。
「甘く見てもらっては困る。これでも私は、宝物要塞の責任者だぞ」
しかし、そう答えるボンシックの言葉には険がなく、むしろ満足げな様子さえありました。
「まぁ、お前も疲れているだろう。奴らを捕まえるために、もう一度、扉を開けてもらわねばならないが、急ぐ必要はない。全ては明日だ。それまでは、ゆっくりと休んでくれ。
ご苦労だった」
ボンシックは、おだやかにそう言うと、机に置いてあるベルを鳴らして部下の兵士を呼びました。
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