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扉の奥の秘宝 (30) ボンシックの語り
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昨日に続き、再びボンシックのオフィス。
「いや、これで全てが終った。理想的な結末と言っていい。本当にご苦労だったな。報酬は、お前の所属ギルド宛てに小切手で送っておくよ。何せ大金だ。そのほうが安心だろう」
ソファーにデンと構えたボンシックが、満足そうに笑います。
「あぁ、そのほうが助かる。旅は身軽な方がいい」
差し向かいで腰を下ろしていたフューイが、いつも通りの不愛想な口調で答えました。十年は楽をして暮らせるだけの大金が手に入ったのですから、もう少し喜んでも良さそうな所ですけどね。それにフューイは、大満足という顔をしているわけではありません。
「ふっ、その顔は、是が非でも聞きたい事があるという顔だな。お前には、本当に感謝している。話せる範囲の事なら惜しみなく答えるよ。なんでも聞いてくれ」
ボンシックが、少し長くなるかも知れない会話の前に、目の前の紅茶をすすりました。
「そうだな。じゃぁ、遠慮なくそうさせてもらおう」
フューイも、紅茶をすすります。
「まず、ゾルウッド、いやモゼントが捕まった後、すぐに仲間の盗賊たちを捕縛したのは手際が良すぎないか? まるで、ある程度の予測があったみたいだ」
若き細工師が、最初の疑問を呈します。
「さすが、良く気がついたな。そうとも、私たちは”ある程度”予測をしていたんだ」
ボンシックの口から、意外な事実が飛び出しました。
「ここは知っての通り、多くの宝物が眠っている要塞だ。万全の警備をしなくてはならない。だがな、色々と不審な出来事や噂が、私の耳に入って来る事が多くなったんだ。余り具体的な話では、なかったんだがね」
「それは、レネフィルの事を言っているのか?」
フューイが、口をはさみます。
「いや、彼女がスパイとは気づかなかった。ただ、盗賊、もしくは良からぬたくらみを企てている連中が、何かをしでかす”きらい”はあった。
それでこちらも、そういったものをあぶりだす計画を立てたんだよ」
ボンシックが、得意げに話しました。
「……おい、まさか今回の鍵開け勝負自体が、連中をおびき寄せる計画だったんじゃないだろうな。つまり、秘宝の納められている宝物庫の鍵を紛失したなんてのは、真っ赤なウソか?」
フューイが、少し気色ばみました。
「それは少し違う。鍵を失くしたのは事実だよ。だから、優秀な鍵師や細工師に来てもらいたかったのは本当だ。まぁ、平たく言えば、一石二鳥を狙ったというわけだ。
宝物要塞の中にスパイがいる可能性もあったから、民間人をここへ入れるとなると、何か動きがあるかと思ってね。ゆさぶりというか、誘いをかけてみたんだよ」
「なるほど……。そうだ、それに関してわからない事がある。そういう計画があるにしても、なぜ王宮付きの細工師や鍵師を使わないんだ。それとも使ったけれど、鍵が開かなかったという事なのか?」
フューイが、ずっと気になっていた質問を口にします。この疑問は何百年もあとに、ニールのパパも不思議に思っていた事柄ですよね。
「いや、王宮の者には試させていない。理由があるんだよ……。それはいったん、置いておこう。
ところでお前はそれ以外にも、大きな、とても大きな疑問を持っているんじゃないのかい?」
ボンシックは、鋭い目でフューイを見ました。
「それは”秘宝”についての事か?」
フューイが、ボンシックの目を見つめ返します。
「ふっ~。お前さんは、イチイチ私を驚かせるね。
そうとも、秘宝についての事だ。で、何を感じ取った?」
ボンシックが、逆に質問を投げかけました。
「いや、これで全てが終った。理想的な結末と言っていい。本当にご苦労だったな。報酬は、お前の所属ギルド宛てに小切手で送っておくよ。何せ大金だ。そのほうが安心だろう」
ソファーにデンと構えたボンシックが、満足そうに笑います。
「あぁ、そのほうが助かる。旅は身軽な方がいい」
差し向かいで腰を下ろしていたフューイが、いつも通りの不愛想な口調で答えました。十年は楽をして暮らせるだけの大金が手に入ったのですから、もう少し喜んでも良さそうな所ですけどね。それにフューイは、大満足という顔をしているわけではありません。
「ふっ、その顔は、是が非でも聞きたい事があるという顔だな。お前には、本当に感謝している。話せる範囲の事なら惜しみなく答えるよ。なんでも聞いてくれ」
ボンシックが、少し長くなるかも知れない会話の前に、目の前の紅茶をすすりました。
「そうだな。じゃぁ、遠慮なくそうさせてもらおう」
フューイも、紅茶をすすります。
「まず、ゾルウッド、いやモゼントが捕まった後、すぐに仲間の盗賊たちを捕縛したのは手際が良すぎないか? まるで、ある程度の予測があったみたいだ」
若き細工師が、最初の疑問を呈します。
「さすが、良く気がついたな。そうとも、私たちは”ある程度”予測をしていたんだ」
ボンシックの口から、意外な事実が飛び出しました。
「ここは知っての通り、多くの宝物が眠っている要塞だ。万全の警備をしなくてはならない。だがな、色々と不審な出来事や噂が、私の耳に入って来る事が多くなったんだ。余り具体的な話では、なかったんだがね」
「それは、レネフィルの事を言っているのか?」
フューイが、口をはさみます。
「いや、彼女がスパイとは気づかなかった。ただ、盗賊、もしくは良からぬたくらみを企てている連中が、何かをしでかす”きらい”はあった。
それでこちらも、そういったものをあぶりだす計画を立てたんだよ」
ボンシックが、得意げに話しました。
「……おい、まさか今回の鍵開け勝負自体が、連中をおびき寄せる計画だったんじゃないだろうな。つまり、秘宝の納められている宝物庫の鍵を紛失したなんてのは、真っ赤なウソか?」
フューイが、少し気色ばみました。
「それは少し違う。鍵を失くしたのは事実だよ。だから、優秀な鍵師や細工師に来てもらいたかったのは本当だ。まぁ、平たく言えば、一石二鳥を狙ったというわけだ。
宝物要塞の中にスパイがいる可能性もあったから、民間人をここへ入れるとなると、何か動きがあるかと思ってね。ゆさぶりというか、誘いをかけてみたんだよ」
「なるほど……。そうだ、それに関してわからない事がある。そういう計画があるにしても、なぜ王宮付きの細工師や鍵師を使わないんだ。それとも使ったけれど、鍵が開かなかったという事なのか?」
フューイが、ずっと気になっていた質問を口にします。この疑問は何百年もあとに、ニールのパパも不思議に思っていた事柄ですよね。
「いや、王宮の者には試させていない。理由があるんだよ……。それはいったん、置いておこう。
ところでお前はそれ以外にも、大きな、とても大きな疑問を持っているんじゃないのかい?」
ボンシックは、鋭い目でフューイを見ました。
「それは”秘宝”についての事か?」
フューイが、ボンシックの目を見つめ返します。
「ふっ~。お前さんは、イチイチ私を驚かせるね。
そうとも、秘宝についての事だ。で、何を感じ取った?」
ボンシックが、逆に質問を投げかけました。
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