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扉の奥の秘宝 (31) 秘宝の正体
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「あの部屋の中を見たモゼントたちや、一部の兵士の反応だ。俺には、今一つわからない。
連中は、あたかも”部屋の中に黄金財宝が唸っている”ような言動を発したり、態度を見せていたぞ。
だがな、あの部屋に、そんなものは微塵もなかった」
フューイが、衝撃的な発言をします。秘宝が収まっている部屋に、そんなものは、何もなかったですって?
「ほぉ、では、お前には何が見えた」
ボンシックの口調が、いつになく真剣になりました。
「何がと言われても、薄汚い空の宝箱が数点と、あとは奥の方に、これまた貧相な台があって、その上には、そうだな、十センチくらいの不思議な形の人形が置いてあった。ただそれだけだ。
モゼントたちが騒ぐような宝の山なんて、一つもなかった」
フューイは、見たままを正直に答えます。
「そうか、そうか。それはいい、それはいいぞ」
ボンシックの表情が、一気に緩みます。何か、とても安心したような顔つきです。
「おい、わかるように話せ。それじゃぁ、何の事だかまるでわからない」
フューイが、少し険しい顔になりました。
「いやぁ、すまん、すまん。お前が余りにも期待通りの男なんでな。私は神様を信じないタチなんだが、ひょっとして運命の神が存在するかも知れないと思ったよ」
上機嫌のボンシックが、話を続けます。
「そう。あの部屋には、金銀財宝なんて存在しない。お前の見たものがあるだけだ。
じゃぁ、モゼントたちはどうして、喜び勇んだのか? 彼らには実際に見えたんだよ。山と積まれたお宝がね」
ボンシックの言葉を聞いて、フューイの頭に一つの考えが浮かびました。
「……あの人形か? あの部屋で唯一まともに見えるのは、あれだけだ。もしかして、あの人形には幻を見せる力があったのか。
いや……、それはおかしい。オレは幻を見なかったし、兵士の多くも多分同じだろう」
フューイは自分の考えを、すぐさま否定しました。
「それが、あの人形の”秘宝”たる由縁なんだよ。あれに近づいた者は、その心によって見えるものが違ってくる。弱い心、悪しき心の持ち主には、あの部屋の中は宝の山に見える。そうでない者には、本当に其処にある物しか見えない」
ボンシックは、フューイの疑問に丁寧に答えます。
「……そういう魔法が掛かったアイテムだという事か。しかし、何でそれが秘宝なんだ」
フューイは、当然の疑問を口にします。
「人の多くは、金銀財宝に目がくらむだろ? それは王族や貴族、はたまた騎士だって同じ事だ。だが、そういう奴らは信用出来ない。どれだけ忠臣ヅラをしていたって、国を亡ぼす元となる。
つまりあの秘宝は、誰が信じられる人間かを教えてくれる、最高の宝なんだよ。
しかし兵士の一部に、宝が見えたらしいというのは問題だ。早速、兵士の入れ替えを検討しなければいけないな。この宝物要塞には、いらない人材だ」
「なるほど。だが王宮の鍵師を使わなかった理由と、それが何か関係するのか」
フューイは、核心に迫ります。
「お前を信用して言うんだがな。実は近く、王の一人娘である王女の花婿候補が何人か城へとやって来る。王はその中から、この国の後継者を選ぶおつもりだ。
その為に、あの秘宝が役に立つのさ。私欲のない者を選ぶためにな。だから是が非でも、宝物庫の鍵を開けなくてはならなかったのだ。
今、この要塞に、兵士が半分しかいないのもそういう事だ。あっちの警備に人がいるんでね」
ボンシックは、フューイを余程気に入ったのでしょう。国の秘密をペラペラと喋ります。
「だが、もし王宮の細工師や鍵師の中に、心やましき者がいたらどうする? 連中は、常に王宮に出入りをしている。万が一、秘宝のカラクリに気がついて、だがそれに気がつかないふりをして、花婿候補に秘密を教えたらどうなる?
この国は、間違った指導者を得る事になってしまうだろう。しかし民間人ならば、花婿候補と繋がりはないだろうから安心だ。
まぁ、念には念を入れろって事なんだよ」
話し終わったボンシックは、紅茶を一気に飲み干しました。
連中は、あたかも”部屋の中に黄金財宝が唸っている”ような言動を発したり、態度を見せていたぞ。
だがな、あの部屋に、そんなものは微塵もなかった」
フューイが、衝撃的な発言をします。秘宝が収まっている部屋に、そんなものは、何もなかったですって?
「ほぉ、では、お前には何が見えた」
ボンシックの口調が、いつになく真剣になりました。
「何がと言われても、薄汚い空の宝箱が数点と、あとは奥の方に、これまた貧相な台があって、その上には、そうだな、十センチくらいの不思議な形の人形が置いてあった。ただそれだけだ。
モゼントたちが騒ぐような宝の山なんて、一つもなかった」
フューイは、見たままを正直に答えます。
「そうか、そうか。それはいい、それはいいぞ」
ボンシックの表情が、一気に緩みます。何か、とても安心したような顔つきです。
「おい、わかるように話せ。それじゃぁ、何の事だかまるでわからない」
フューイが、少し険しい顔になりました。
「いやぁ、すまん、すまん。お前が余りにも期待通りの男なんでな。私は神様を信じないタチなんだが、ひょっとして運命の神が存在するかも知れないと思ったよ」
上機嫌のボンシックが、話を続けます。
「そう。あの部屋には、金銀財宝なんて存在しない。お前の見たものがあるだけだ。
じゃぁ、モゼントたちはどうして、喜び勇んだのか? 彼らには実際に見えたんだよ。山と積まれたお宝がね」
ボンシックの言葉を聞いて、フューイの頭に一つの考えが浮かびました。
「……あの人形か? あの部屋で唯一まともに見えるのは、あれだけだ。もしかして、あの人形には幻を見せる力があったのか。
いや……、それはおかしい。オレは幻を見なかったし、兵士の多くも多分同じだろう」
フューイは自分の考えを、すぐさま否定しました。
「それが、あの人形の”秘宝”たる由縁なんだよ。あれに近づいた者は、その心によって見えるものが違ってくる。弱い心、悪しき心の持ち主には、あの部屋の中は宝の山に見える。そうでない者には、本当に其処にある物しか見えない」
ボンシックは、フューイの疑問に丁寧に答えます。
「……そういう魔法が掛かったアイテムだという事か。しかし、何でそれが秘宝なんだ」
フューイは、当然の疑問を口にします。
「人の多くは、金銀財宝に目がくらむだろ? それは王族や貴族、はたまた騎士だって同じ事だ。だが、そういう奴らは信用出来ない。どれだけ忠臣ヅラをしていたって、国を亡ぼす元となる。
つまりあの秘宝は、誰が信じられる人間かを教えてくれる、最高の宝なんだよ。
しかし兵士の一部に、宝が見えたらしいというのは問題だ。早速、兵士の入れ替えを検討しなければいけないな。この宝物要塞には、いらない人材だ」
「なるほど。だが王宮の鍵師を使わなかった理由と、それが何か関係するのか」
フューイは、核心に迫ります。
「お前を信用して言うんだがな。実は近く、王の一人娘である王女の花婿候補が何人か城へとやって来る。王はその中から、この国の後継者を選ぶおつもりだ。
その為に、あの秘宝が役に立つのさ。私欲のない者を選ぶためにな。だから是が非でも、宝物庫の鍵を開けなくてはならなかったのだ。
今、この要塞に、兵士が半分しかいないのもそういう事だ。あっちの警備に人がいるんでね」
ボンシックは、フューイを余程気に入ったのでしょう。国の秘密をペラペラと喋ります。
「だが、もし王宮の細工師や鍵師の中に、心やましき者がいたらどうする? 連中は、常に王宮に出入りをしている。万が一、秘宝のカラクリに気がついて、だがそれに気がつかないふりをして、花婿候補に秘密を教えたらどうなる?
この国は、間違った指導者を得る事になってしまうだろう。しかし民間人ならば、花婿候補と繋がりはないだろうから安心だ。
まぁ、念には念を入れろって事なんだよ」
話し終わったボンシックは、紅茶を一気に飲み干しました。
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