100 / 218
お髭(ひげ)のニール (8) 作戦成功
しおりを挟む
第一投、これは外れました。力の加減が分からずに、窓まで届かなかったのです。芯が筒になっているおかげで、一階の屋根に引っ掛る事なく、コロコロと落ちてきます。ニールは左で髭を押さえつつ、トイレットペーパーの芯を拾い上げます。
第二投、これも外れます。窓のついている壁に当たってしまいました。なかなか上手く行きません。
そして満を持した三投目、神様に願いが通じたのか、今度は見事に窓へと命中しました。しかも強すぎず弱すぎず、絶妙な振動が窓ガラスに伝わります。
マリア、気づいて!
良く考えてみれば、マリアが二階にいる保証なんて何にもありません。ただ、この時のニールには、そんな事に気づく余裕すらなかったのです。
でも神様は、ニールの味方をなされました。彼が三度落ちてきたトイレットペーパーの芯を拾い上げる頃、二階の窓が開いたのです。そこから、両方の肩に三つ編みの髪をぶら下げた女の子が顔を出しました。
彼女が窓の下を見ると、紙袋をスッポリかぶった異様な子供が立っていて、何やら一生懸命に手を振っています。驚いたマリアは、慌てて窓を閉めてしまいました。
それはそうでしょう。彼女からすれば、突然に窓に何かが当たったと思って外を見ると、得体の知れない存在がこちらに向かって、必死に手をバタバタさせているのですからね。
ニール、大ピンチ。
普通の子供なら、ここでお家の人に急を知らせに行くところです。でもマリアは、ちょっと変わっていました。物凄く好奇心旺盛で、知識の泉に、いつも浸っていたいと思うような女の子だったんです。そこでマリアは勇気を振り絞って、再び窓を開けました。
その時の、ニールの喜びようったらありませんでした。マリアが窓をピシャリと閉めた時には、この世の中が終ってしまったかのような気分になっていたのですからね。
さっきは嬉しさのあまり、ただブンブンと手を振っていただけでしたが、よく考えてみれば、それで彼女がニールだって事に気づくはずもありません。彼は素早くそれを悟って、今度は彼の方も勇気を振り絞り、紙の袋を頭から外しました。
「ニール! どうしたの? その恰好は何?」
驚きと好奇心に満ちた声で、マリアが二階から尋ねます。
「マリア、お願い。降りて来てくれない?」
ニールはマリアのお家の人に気づかれないよう、出来るだけ静かに、でも力強く言いました。
その時マリアは、とても変な事に気がつきます。ニールが左手で何か黒い塊を握っていて、それをアゴから離そうとはしないのです。マリアは、頭のいい子です。一瞬で、異常な事態が起こっているのだと理解をしました。もっともそれを後押ししたのは、人並み外れた好奇心だったんですけどね。
マリアは、すぐに階段を下りて、ニールの元へと向かいます。幸運にも、お家にいた彼女の母親は裏のお庭で洗濯をしていて、娘が急いで表へ出ていったのに気づきませんでした。
「ニール?」
玄関ドアを開け放ったマリアは、キョトンとします。ニールの姿が、どこにも見えないのです。
「ニール、どこ?」
もう一度、彼女が声をかけると、お家から少し離れた茂みがガサっと音を立て、そこから小さな腕がニヨッキリと飛び出しました。そしてこっちへ来てとばかりに、おいでおいでをしています。マリアは急いで、そちらの方へと向かいました。
第二投、これも外れます。窓のついている壁に当たってしまいました。なかなか上手く行きません。
そして満を持した三投目、神様に願いが通じたのか、今度は見事に窓へと命中しました。しかも強すぎず弱すぎず、絶妙な振動が窓ガラスに伝わります。
マリア、気づいて!
良く考えてみれば、マリアが二階にいる保証なんて何にもありません。ただ、この時のニールには、そんな事に気づく余裕すらなかったのです。
でも神様は、ニールの味方をなされました。彼が三度落ちてきたトイレットペーパーの芯を拾い上げる頃、二階の窓が開いたのです。そこから、両方の肩に三つ編みの髪をぶら下げた女の子が顔を出しました。
彼女が窓の下を見ると、紙袋をスッポリかぶった異様な子供が立っていて、何やら一生懸命に手を振っています。驚いたマリアは、慌てて窓を閉めてしまいました。
それはそうでしょう。彼女からすれば、突然に窓に何かが当たったと思って外を見ると、得体の知れない存在がこちらに向かって、必死に手をバタバタさせているのですからね。
ニール、大ピンチ。
普通の子供なら、ここでお家の人に急を知らせに行くところです。でもマリアは、ちょっと変わっていました。物凄く好奇心旺盛で、知識の泉に、いつも浸っていたいと思うような女の子だったんです。そこでマリアは勇気を振り絞って、再び窓を開けました。
その時の、ニールの喜びようったらありませんでした。マリアが窓をピシャリと閉めた時には、この世の中が終ってしまったかのような気分になっていたのですからね。
さっきは嬉しさのあまり、ただブンブンと手を振っていただけでしたが、よく考えてみれば、それで彼女がニールだって事に気づくはずもありません。彼は素早くそれを悟って、今度は彼の方も勇気を振り絞り、紙の袋を頭から外しました。
「ニール! どうしたの? その恰好は何?」
驚きと好奇心に満ちた声で、マリアが二階から尋ねます。
「マリア、お願い。降りて来てくれない?」
ニールはマリアのお家の人に気づかれないよう、出来るだけ静かに、でも力強く言いました。
その時マリアは、とても変な事に気がつきます。ニールが左手で何か黒い塊を握っていて、それをアゴから離そうとはしないのです。マリアは、頭のいい子です。一瞬で、異常な事態が起こっているのだと理解をしました。もっともそれを後押ししたのは、人並み外れた好奇心だったんですけどね。
マリアは、すぐに階段を下りて、ニールの元へと向かいます。幸運にも、お家にいた彼女の母親は裏のお庭で洗濯をしていて、娘が急いで表へ出ていったのに気づきませんでした。
「ニール?」
玄関ドアを開け放ったマリアは、キョトンとします。ニールの姿が、どこにも見えないのです。
「ニール、どこ?」
もう一度、彼女が声をかけると、お家から少し離れた茂みがガサっと音を立て、そこから小さな腕がニヨッキリと飛び出しました。そしてこっちへ来てとばかりに、おいでおいでをしています。マリアは急いで、そちらの方へと向かいました。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる