ヴォルノースの森の なんてことない毎日

藻ノかたり

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お髭(ひげ)のニール (22) 待っていた人

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「なるほどね。それじゃぁ、もう少しここで待ってみましょうか」

マリアが、提案をします。

「待ってたら、何かあるのかよ、マリア」

相変わらず察しの悪いドッジが、口をはさみました。

「ボクも、もう少しここで待った方がいいと思う。っていうのはさ、飼い主の子供は、もちろん自分の犬が川に流された事を知っているだろう。そうしたら、どうすると思う?」

「どうするって……、まぁ普通は追いかけるよなぁ」

ドッジが、気のない返事をします。

「途中まではね。だけど、すぐに追うのをやめると思うわ」

「何で?」

マリアの言葉に、ドッジが聞き返しました。

「だって、私たちでも子犬を助けるのに、あれだけ苦労したのよ。私たちより小さい子供に、何が出来るもんですか」

マリアが、自分たちの偉業を自画自賛します。

「そうなるとさ、多分、親とか大人に助けを求めると思うんだ。その分、時間はかかるけど、川に流されたんだから、川を下っていけば、必ず見つかると考えるだろ? 

だからこうして待っていれば、飼い主の子供が大人を連れて現れるんじゃないかな」

ニールとマリア、気の合った連携回答です。

「なるほど。じゃぁ、もう少し待ってみるか」

うるさい二人の子分たちが消え去った事もあり、ドッジは晴れやかな気持で深呼吸をしました。

さて、それから十数分が過ぎた頃でしょうか、ニールとマリアの予測は的中し、川上から大人と子供の二人連れが、川面の方へ顔をむけながら小走りにやって来ました。

二人は三人の子供たちを見つけ、駆け寄ります。

「君たち、この辺で子犬を見かけなかったかい?」

三十代半ばの少しポッチャリとした男性が、ニールたちに尋ねました。

男性と一緒にいる少年が、さっき橋の上で会った子犬の飼い主だと確認したニールは、

「もしかして、この子の事ですか?」

と、マリアが抱いている子犬を指さします。

「あ、ラッティー!」

今度は、連れの男の子が歓喜の声を上げました。

「君たちが、助けてくれたのかい?」

子供の父親とおぼしき男性が、驚いて尋ねます。だって、子犬が自力で岸に上がるなんて到底無理な話です。かといって、こんな幅の広い、しかも水かさが増えている川から、子供達だけで子犬を救出したなんて、とてもじゃないけど信じられるわけがありません。

「そうなんだ、おじさん。俺たちが、この犬を助けたんだぜ」

ドッジが、胸をポンと叩きます。

「そうかい、そうかい。それは本当にありがとう。実は、これだけ早い川の流れだろ? もうダメなんじゃないかと、半ばあきらめていたんだよ」

信じられはしませんでしたが、現実に子犬は子供たちの手の中にあります。男性は子供達にお礼を言いました。

「そうだ、これから街に出て、お礼に何かご馳走させてもらえないかい?」

本来なら有り難い申し出ですが、三人の顔が曇ります。

「どうしたの?」

男性は、予想と違う子供たちの反応に戸惑いました。

「あのね、おじさん……」

頭の回転の速いマリアが、事の成り行きを簡便に説明します。

「えぇ、髭? それは髭なのかい?」

話を聞いた男性の驚きようったら、ありません。まぁ、子供がこれほど長い髭を生やしているなんて、前代未聞ですからね。彼はずっと、子供がロープが何かで遊んでいるのかと思っていたのです。

「うーん、じゃぁ、まずその髭をなんとかしなくちゃな」

男性が、ニールの顔をじっと見つめます。その時、男性はある事に気がつきました。そしてニールの方も、同じ事に気がつきました。

「き、君はもしかして、ニールかい?」

「えっ、おじさん、何でニールの名前を知っているの?」

男性の思わぬ一言に、マリアとドッジは驚きます。

「あぁ、おじさんは、もしかしてパパの友だちの……」

ニールが、代わりに答えました。

何という偶然でしょう。この男性、ニールのパパの骨董仲間で、名前をマルロンと言います(ニールのパパは、怪しげな骨董品を集めるのが趣味なんです)。

数週間前、ニール一家がリサイクルショップへ出かけた時、パパが一人でその地下にある骨董屋に行った事がありました。その時、一瞬だけニールとマルロンは顔を合わせていたのです。

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※ 「扉の奥の秘宝 (33) 扉の奥の秘宝」参照
https://ncode.syosetu.com/n0236iv/112
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