ヴォルノースの森の なんてことない毎日

藻ノかたり

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お髭(ひげ)のニール (23) いざ街へ

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事情を理解したマルロンは、

「う~ん、そうだなぁ。確かにばれたら、こっぴどく叱られそうだよね。君のママ、かなり怖そうだし……」

と言いました。

子供の前でも、素直で遠慮のないマルロンです。

「じゃぁ、こうしよう。まずは、その髭を出来るだけ切ってしまおう」

マルロンが、提案します。

「だけど、ハサミでも全然切れないの」

マリアが、心配そうに言いました。

「まぁ、大人を信用しなさい」

そう言うと、マルロンはニールを河原に横たわらせ、三つ編みにされた髭を根元から一メートルくらい真っすぐに伸ばしました。そして五十センチほどの所を片膝で強く押さえつけます。これだけアゴから離れていれば、ニールが痛がる心配はありません。

次にマルロンは肩にかけていたバッグから、大きなナイフを出しました。息子に子犬の危機を知らされたマルロンは、何がどうなるかわからなかったので、思いつく限りの道具をバッグに詰め込んで持って来ていたのです。

そして、膝の先に延びている髭をしっかりと左手でにぎり、右手に持ったナイフでゴリゴリと髭を切り始めました。

「どうだい? 痛くはないかい?」

マルロンの問いかけに、ニールが大丈夫だと答えます。

さすがに大人の力。あれだけ苦労したお髭ですが、だいたいアゴから六十センチくらいの所でバッサリと切り離されました。子供たちは大喜びです。

「じゃぁ、これからの事だがね」

マルロンが、子供達を見回します。

まず彼はバッグの中から丈夫なひもを取り出して、ニールの余ったお髭をまとめます。トイレットペーパーの芯に巻きつけるよりも、ずっとコンパクトで安定していました。

そして自分の息子に向かって、子犬を家へ連れ返り、十分休ませるように命じます。飼い主の子供は、ニールたちに半べそをかきながら何回もお礼を言って立ち去りました。可愛いがっていた子犬が助かって、よほど嬉しかったのでしょうね。

次にマルロンは、ニールから薬のビンを受け取り、ラベルをじっくりと見て、

「じゃぁ、おじさんと一緒に、このラベルに書いてある”問い合わせ”の場所に行こう」

と言いました。実はマルロン、魔女が経営する薬屋の相談所には、何度も言った事があるのです。何故かって? それはニールのパパの骨董仲間だけあって、珍しいものには目がない性分だからです。目に留まったちょっと変わった薬を手に入れては、よく使い方を相談しに行ってたんですね。

マルロンは、隠れ家にあったコンテルランの仮面を真似た紙袋を取って来させ、それを再びニールにかぶせました。

「それじゃぁ、相談所へ出発だ。君たちも一緒に来てくれよ。さっきも言ったように、ニールの髭を何とかした後、お礼に何かご馳走させてくれ」

マルロンの言葉に、ドッジの心は高鳴ります。もちろん、お礼目当てで助けたわけではありませんが、ご馳走と言う言葉を聞いては、食いしん坊の血が黙ってはおりません。

マリアはちょっと迷いました。普段から、知らない大人について行ってはいけないと、言われていたからです。でも、ニールのパパの友達なら「知らない大人」とは言えないと考えて、彼女もマルロンの申し出を受け入れます。

魔女薬の相談所までの道のりは、少し変わった行列になりました。大人が三人の子供を引き連れて、しかも一人は紙袋をかぶっているのですからね。

その後、魔女薬の相談所についた一行は、早速、相談員に話をしました。

「このイタズラっ子め」

担当者の年若い魔女は、ニールのおでこを人差し指で何回かツンツンとしながら笑って言いました。彼女はいつぞや、街中を騒がすトラブルを引き起こした、新米魔女のネリスです。ニールにお説教が出来る立場ではないんですけどね。
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 魔女の薬 (1) 新米魔女・ネリス
https://ncode.syosetu.com/n0236iv/61
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