ヴォルノースの森の なんてことない毎日

藻ノかたり

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魔女と奇妙な男 (34) 強盗団

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「それはお前が、最高位魔女の一人、コリスのお気に入りだからさ」

メサイトはまるで、謎解きをする探偵のように指を立ててニヤリと答えました。

「コ、コリス師匠の?」

意外な答えに、ネリスは当惑します。

「い、いや、私は師匠のお気に入りなんかじゃないわ……。むしろ、いつも迷惑をかけているし……」

ネリスが、自信なさげに言いました。

「ふん、嘘をついてたってダメだ。もう、とうに調べはついているんだぜ。もっとも、オレが調べわけじゃないけどな」

怪物が、異様な臭いの息を吐き出しながら応じます。

「本来なら魔女をクビになっても仕方がないヘマをしても、そうして続けていられるのは何故だ? 奴が自分の地位をかけてまで、お前をかばったからだ。それだけじゃない。現に今だって、自分の屋敷に住まわせているじゃないか。

これがお気に入りでなくて、何だって言うんだ!」

自分の説明を否定されたメサイトが、不機嫌そうにまくし立てました。

「そ、そんな事……」

怪物の話を容易に信じるネリスではありませんでしたが、もし事実なら、コリスが地位をかけてまでネリスを守ったなんて話は初耳です。彼女の頭は、更に混乱しました。

「で、でも、私が師匠のお気に入りだったら何だっていうのよ」

ネリスが、精一杯の抵抗を試みます。

「お前、相当のバカみたいだな。わからねぇか。お前はコリスに言う事を聞かせるための、切り札なんだよ」

メサイトがネリスへの、冥土の土産話をし始めます。



ネリスが恐怖と絶望の淵をさまよっている頃、コリスの屋敷へと続く森の道脇に潜む一団がありました。皆、屈強で、顔つきもかなり悪い数人の男たちです。

「おい、そろそろ、いいんじゃねぇのか?」

背の高いスキンヘッドの男が、小声で言いました。

「いや、まだだ。あのメサイトって若造を待ってからというのが、上からの指示だっただろう。

待ち合わせの時間は、まだけっこう先だ」

リーダー格の髭づらの男が、はやる仲間を諫めます。

「いいじゃないですか。もう、行っちまいましょうよ。

確か指示っていうのは、メサイトが連れて来る小娘を人質にして、コリスって魔女に珍しい薬草を植えた花壇や、秘薬の調合法を書いた本のありかを白状させるってやつでしょう?」

鋭い目つきの、太った男が意見しました。

「そうだぜ。情報によれば、あの屋敷に居るのは中年の女主人と、やせっぽちのガキみたいな執事、それに雑用係のジジィとババァだけって話だろ? 何もわざわざ人質なんて取らなくても、俺たちが締め上げれば、すぐに目的は果たせるんじゃねぇのかよ?」

再びスキンヘッドの男。

それを聞く髭づらの男は悩みます。

「う~ん。確かにメサイトが来る前に、事を済ませちまえば、上の覚えも目出度くなるかも知れないな。それにあの若造、一度しか会ってねぇが、態度がデカくて気に食わねぇ。

奴抜きで事が成就すれば、あいつの面目丸つぶれは間違いなしだ」

リーダーは、皆に目配せをしました。各々がうなづき、彼の案に賛成だと意思表示をします。

「よし! 行くぞ」

髭づらが合図をし、皆が殺気立った目をしてコリスの屋敷へと向かいます。急ぎ足ながら、気づかれぬよう足音は最小限に抑えます。どうやら彼ら、その手のプロ集団のようですね。

数分後、コリス邸の明かりが木々の隙間から見えた頃、男たちは突然の事態に立ち止まりました。

「何だ?」

強盗の一団が、そう思ったのも無理はありません。煌々と光を放つ月が一瞬消えたかのように辺りが真っ暗になったのです。雲一つない、満月の晩なのに。
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